働き方の多様化が進む現代において、従業員のスキルアップや収入増加を目的として「副業・兼業」を認める企業が増えています。

しかし、企業が副業・兼業を認める際には、従業員の健康管理、情報漏洩、本業への支障といった様々なリスクが伴います。これらのリスクを適切に管理し、トラブルを未然に防ぐためには、法的なポイントを押さえた制度設計が求められます。

本記事では、企業が副業・兼業制度を導入・運用するにあたり、特に注意すべき4つのポイントを企業の法務・労務担当者向けにわかりやすく解説します。

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目次

1. 副業・兼業制度を導入する前に押さえるべき前提知識

制度設計を始める前に、まずは副業・兼業に関する基本的な考え方と、企業が取りうる選択肢を理解しておきましょう。

1.1 副業・兼業とは何か

副業・兼業とは、一般的に、従業員が勤務時間外に本業とは別の仕事に従事することを指します。

厚生労働省は「二つ以上の仕事を掛け持ちすること」、中小企業庁は「収入を得るために携わる本業以外の仕事」と説明していますが、労働法令などで明確に定義されているわけではありません。

「副業」と「兼業」は一般的に厳密な区別なく同じ意味で使われることが多いです。ただし、契約形態や仕事の比重によって次のように使い分けられることもあります。

契約形態による区別では、企業と雇用契約を結ぶ場合を「副業」、個人事業主として請負契約などを結ぶ場合を「兼業」とすることがあります。

また、仕事の比重による区別もあります。①明確な本業がありサブ的な位置づけの仕事を「副業」、②兼業農家のように事業性があり本業が必ずしも主とはいえない仕事を「兼業」と呼ぶケースです。

副業・兼業の形態は多岐にわたります。主な形態は次のとおりです。

  1. ① 他の会社に雇用されるケース
  2. ② 個人事業主として業務委託・請負・準委任契約などを結ぶケース
  3. ③ アパートやマンション経営による不動産所得
  4. ④ インターネットを介した個人間売買(ネットオークションなど)
  5. ⑤ 株式売買(デイトレードなど)

裁判例では、従業員が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には従業員の自由であるとされています。

そのため、企業が副業・兼業を全面的に禁止することは原則として困難です。制限できるのは、本業に支障をきたすなどの例外的な場合に限られます。

1.2 企業における許可制・届出制の選択肢

従業員の副業・兼業を管理する方法として、主に「許可制」と「届出制」の2つがあります。

許可制

従業員からの副業申請に対し、会社がその内容を審査し、認めるかどうかを判断する制度です。

許可制のメリットは、企業が副業・兼業によるリスクを事前に確認し管理できる点にあります。具体的には、次のような弊害の有無について、事前に会社が判断する機会を設けることができます。

  1. ① 労務提供上の支障

    従業員が十分な休息を取れず本業に集中できない、または健康上の問題が生じるリスク

  2. ② 企業秘密の漏洩

    副業先に自社の営業秘密や顧客情報が流出するリスク

  3. ③ 競業による利益侵害

    競合他社で働くことにより自社の利益が害されるリスク

  4. ④ 企業の名誉・信用の毀損

    会社の社会的評価を損なうような副業に従事するリスク

裁判例においても、労務提供上の支障や企業秩序への影響などを考慮したうえで会社の承諾を必要とする許可制の就業規則は、合理性を有するものと認められています。

ただし、許可制を採用した場合でも、企業が自由に副業・兼業を不許可にできるわけではありません。従業員から許可申請があった場合、企業は労務提供上の支障や企業秘密漏洩のリスクなどを慎重に検討する必要があります。

具体的な検討をせずに不許可としたり、必要以上に細かい許可基準を設けたりした場合、その判断が無効とされたり、不許可に従わなかった従業員への懲戒処分が無効と判断されたりするリスクがあるため注意しましょう。

届出制

届出制は、従業員が副業・兼業を行う旨を会社に届け出る制度です。

厚生労働省が公表している「モデル就業規則」では届出制が例示されており、これは勤務時間外の私的な時間の過ごし方が原則として従業員の自由であることに配慮したものです。

ただし、届出制を採用する場合でも、無制約に副業・兼業を認めることにはリスクが伴います。

届出制の場合、原則として個別の許可は不要ですが、届出内容を確認し、企業の正当な利益を害する恐れがある場合には、副業の禁止や制限を命じることができます。企業秩序への悪影響を防ぐために、一定の場合には会社が副業・兼業を禁止または制限できる規定を設けておくことが望ましいでしょう。

いずれを選択するのが良いのか

企業秘密の漏洩や競業といったリスクを事前に審査し管理するという観点からは「許可制」が有力な選択肢となります。

一方で、厚生労働省が推奨する「届出制」を採用する場合でも、リスク管理のために禁止・制限条項を設けることが重要です。

どちらの制度を選択するにせよ、就業規則で手続きや判断基準を明確に定め、適切な運用を行いましょう。

2. 制度設計時に企業が押さえておくべきポイント

副業・兼業制度を円滑に運用するためには、具体的なルールを定め、リスクを管理する仕組みを構築する必要があります。

具体的には、次のような点がポイントです。

  1. 就業規則における副業ルールの明確化
  2. 情報管理・競業リスクを踏まえた許可基準
  3. 健康管理・労働時間管理の仕組み
  4. 労使コミュニケーション

ここからは、ポイントを順番に確認していきましょう。

3. 就業規則における副業ルールの明確化

まずは就業規則に副業・兼業に関するルールを明確に規定しましょう。

3.1 副業・兼業の許可・禁止の条件の明示

副業・兼業は法律上、原則として従業員の自由です。また、就業規則に副業に関する明確な規定がないと、従業員は自由に副業ができると判断し、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

就業規則には、「労働者は、会社の許可を得て、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」といった形で、副業・兼業が可能であることと、会社の許可が必要であることを明確に規定しましょう。

また、例外的に副業・兼業が禁止される条件も定めておきます。

副業・兼業は原則として自由ですが、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、競業による利益侵害、会社の名誉・信用の毀損など、会社の正当な利益を害する場合には、例外的に禁止・制限できる旨を規定すべきでしょう。

これらの条件を明確にすることで、従業員の多様なキャリア形成を促進しながら、企業のリスク管理も両立させることができます。

3.2 申請手続き(許可制・届出制)の規程化

従業員が副業・兼業を始める際の手続きを就業規則で具体的に定めます。

副業・兼業に伴う労務管理を適切に行い、企業秘密の漏洩や競業などのリスクを事前に確認するためには、申請・審査の仕組みを設けることが重要です。

たとえば、「副業・兼業を行おうとする従業員は、所定の申請書を会社へ提出し、会社の許可を得なければならない」といった規定を設けます。

これにより、会社は従業員の副業・兼業の有無や内容を事前に把握し、不許可事由に該当しないかを審査したうえで、適切な労務管理を行うことができます。

申請書には、副業先の企業名や業務内容、勤務日数・時間、契約形態、契約期間、報酬などの情報を記載させるのが一般的です。

3.3 不許可事由(競業、情報漏洩リスク、健康上の問題等)の定義

副業・兼業は原則自由ですが、会社の正当な利益を害する場合には、例外的に禁止・制限することが認められています。

その際には、就業規則に「どのような場合に副業を許可しないか」を具体的に定めておくことが必要です。

具体的には、次のような場合に副業・兼業を禁止または制限することができる旨を規定しましょう。

  1. ① 労務提供上の支障がある場合

    副業による疲労で本業に集中できない、遅刻が増えるなど、長時間労働により心身の健康に悪影響が生じるおそれがあるとき

  2. ② 企業秘密が漏洩する場合

    自社の技術情報や顧客データなどが副業先で漏れるおそれがあるとき

  3. ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

    会社の評判を落とすような副業など

  4. ④ 競業により、企業の利益を害する場合

    競合他社で働くことで、自社の利益が損なわれるおそれがあるとき

なお、企業が従業員に課す競業避止義務の基準等を策定する場合には、従業員の職種や地位等を勘案したものとすることが望ましいです。

3.4 懲戒事由・違反時の対応の明文化

就業規則のルールに違反した場合のペナルティについても明確にしておくことが必要です。

たとえば、会社の許可なく副業を行った場合や、申請内容と異なる業務に従事した場合などを懲戒処分の対象とすることを定めます。

また、一度副業を許可した後でも、競業や情報漏洩などの問題が発覚した場合には、許可を取り消したり、条件を変更したりできる旨を規定しておくことが、リスク管理上有効です。

4. 情報管理・競業リスクを踏まえた許可基準

企業が副業・兼業制度を設計する際には、情報管理や競業といったリスクを適切に管理するための許可基準を設けることも重要です。

ここでは、企業が定めた不許可事由を実際に運用する際の具体的な判断ポイントや注意点を解説します。

4.1 同業他社に関する競業避止義務の判断ポイント

労働者は、一般的に、在職中は使用者と競合する業務を行ってはなりません。これを「競業避止義務」といいます。

この義務を明確にするために、就業規則で「競業により企業の利益を害する場合には副業を禁止する」などと定めておくとよいでしょう。

ただし、実際の許可・不許可の判断においては、単に「同業他社だから」という理由だけで一律に副業を禁止することは、従業員の副業の自由を過度に制約している可能性が否定できません。

企業は、従業員の自社における業務の内容や副業・兼業の内容等に鑑み、その正当な利益が侵害されない場合には、同一の業種・職種であっても、副業・兼業を認めるべき場合も考えられます。

許可・不許可の判断にあたっては、次の点を実質的に検討することが重要です。

  1. ① 従業員の本業での立場や、会社の機密情報へのアクセス権限
  2. ② 副業の内容や副業先での立場

これらの情報を従業員から具体的に聴取した上で、リスクの有無を慎重に判断する必要があります。特に、転職や起業の準備として副業を始めるケースでは、情報漏洩のリスクが一層高まるため、より注意深い審査が求められます。また、実際上、他の従業員への影響も考慮せざるを得ません。

また、副業・兼業を行う従業員に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて、あらかじめ十分に注意喚起することも有効です。必要に応じて誓約書の締結も検討してください。

4.2 副業内容の情報管理リスク(機密情報・顧客情報)のチェック

労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務を負っています(秘密保持義務)。

就業規則において、副業・兼業によって企業秘密や機密情報の漏洩リスクが生じる場合を不許可とする旨を明示しておきましょう。

もっとも、規定を設けるだけでは不十分であり、実務においては、副業の内容や業務範囲を申請段階で具体的に確認し、情報漏洩のおそれがないかを個別に判断する運用が求められます。

副業の申請を受けた際には、どのような事業を行っている会社で、どのような業務を、どのような立場で行うのかなどを確認し、その結果、秘密保持に問題が生じると判断した場合には副業を禁止すべきです。

あわせて、副業・兼業を行う従業員に対して、業務上の秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩しないことについて、あらかじめ十分に注意喚起するとよいでしょう。必要に応じて誓約書の締結も検討してください。

4.3 公序良俗・企業信用を毀損する副業の禁止

従業員は、誠実義務に基づき、使用者の名誉・信用を毀損しないよう行動することが求められます。

就業規則において「会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合」を不許可事由として定めておきましょう。

そのうえで、副業の届出や申請があった際に、その内容が会社の名誉や信用を損なうおそれがないかを具体的に確認することが必要です。

副業の内容によっては、本業の会社の社会的信用やブランドイメージを傷つけるおそれがあります。そのため、申請内容を慎重に審査し、必要に応じて従業員と面談を行うなど、丁寧な対応を心がけましょう。

4.4 フリーランス・業務委託における注意ポイント

従業員が他の企業で雇用関係を結んで副業を行う場合、本業の会社と副業先の会社との間で労働時間を通算することとなり、法定労働時間を超えた場合には、割増賃金の問題に対応しなければなりません。

また、安全配慮義務との関係で、過重労働を防止する必要もあります。

しかし、従業員の副業が、他の会社に雇用される形態ではなく、フリーランス(個人事業主)として業務委託契約などを結んで行う場合には、その活動は労働基準法上の「労働者」としての活動ではないため、原則として本業の会社との労働(業務)時間を通算する必要はありません。

ただし、ここで注意すべきは「偽装フリーランス」の問題です。

契約の形式が「業務委託契約」や「請負契約」であっても、働き方の実態が発注元の企業の指揮命令下で労務を提供する「労働者」と変わらない場合、法的には労働契約と評価される可能性があります。

その場合、本業の会社と副業先の会社との間で労働時間を通算する必要が生じるため、注意が必要です。また、過重労働の観点でも注意が必要です。

なお、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、フリーランスのように労基法が適用されない場合や、管理監督者のように労基法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合であっても「これらの場合においても、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、その者からの申告等により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましい。」としています。

労働契約としての実態がないとしても、この点には注意が必要です。

5. 健康管理・労働時間管理の仕組み

従業員に副業・兼業を認める場合、過労とならないように、健康管理や労働時間の管理が必要です。

従業員の心身の健康の確保、ゆとりある生活の実現の観点から法定労働時間が定められている趣旨も踏まえ、長時間労働にならないよう適切な管理体制を整備しておきましょう。

5.1 労働時間通算の基本原則

労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。

また、通達では「事業場を異にする場合」とは、事業主を異にする場合をも含む(労働基準局長通達昭和23年5月14日付基発第769号)とされています。

つまり、本業と副業・兼業先での労働時間は合算して管理されるのです。

ただし、この通算ルールが適用されるのは、各事業場で「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に限られます。(労働者としての実態なく)フリーランスや個人事業主として働く場合、管理監督者、高度プロフェッショナル制度の対象者などは割増賃金算定のための労働時間は通算されません。

通算して計算されるのは、主に次の2つです。

  1. ① 法定労働時間(1日8時間、週40時間)
  2. ② 時間外労働の上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)

所定労働時間を通算する場合は、労働契約締結時期の順に通算します。その結果、法定労働時間を超えた場合、割増賃金の支払義務は原則として「後から労働契約を締結した使用者」が負います。

所定「外」労働時間については、既に通算された所定労働時間に加え、その所定「外」労働時間を実際に行われた順に通算します。

5.2 従業員からの労働時間報告の仕組み

副業・兼業を行う従業員を雇用する企業は、従業員からの申告などにより他社での労働時間を把握し、自社の労働時間と通算して管理しなければなりません。

そのため、就業規則に届出制を設けるなど、副業の有無や内容を確認できる体制を整えておくことが重要です。

具体的には、副業の申請時に副業先での勤務時間や勤務日数を報告させるとともに、定期的に実際の労働時間を報告させる仕組みが必要となります。

5.3 過重労働・過労リスクのモニタリング

事前の申請時だけではなく、従業員の健康状態を継続的にモニタリングすることも忘れずに行いましょう。

副業・兼業による過重労働は、従業員の心身の健康に悪影響を及ぼし、労務提供上の支障をきたすおそれがあります。

企業は、次のような方法で過重労働・過労リスクをモニタリングすべきです。

① 定期的な面談

副業を行っている従業員と定期的に面談を行い、健康状態や疲労度、本業への影響などを確認する。

② 労働時間の確認

本業と副業を合わせた総労働時間を定期的に確認し、長時間労働となっていないかをチェックする。

③ 勤怠管理

遅刻や欠勤の増加、業務パフォーマンスの低下など、副業による影響がないかを注意深く観察する。

④ 健康診断の活用

定期健康診断の結果を確認し、健康状態の変化に注意する。

特に、時間外労働と休日労働の合計が「単月100時間未満、複数月平均80時間以内」という上限を超えないよう、通算した労働時間を適切に管理することが必要です。

5.4 健康悪化時の副業制限・停止措置のルール化

従業員の健康状態が悪化した場合や、副業による過重労働が確認された場合には、副業を制限または停止させる措置を講じる必要があります。

就業規則には、このような措置を講じることができる旨を明確に規定しておくべきです。

具体的には、次のような場合に副業の制限・停止を検討します。

  1. ① 健康診断で異常所見が認められ、医師から就業制限の指導があった場合
  2. ② 本業での勤務態度や業務パフォーマンスが著しく低下した場合
  3. ③ 遅刻や欠勤が頻発し、労務提供上の支障が生じている場合
  4. ④ 通算した労働時間が上限規制を超えるおそれがある場合

副業の制限・停止措置を講じる際には、従業員と面談を行い、健康状態や労働状況を丁寧に確認したうえで、必要な措置を説明しましょう。

また、一度許可した副業を制限・停止する場合には、その理由や根拠を明確にし、従業員の理解を得ることが望ましいです。

6. 労使コミュニケーションの重要性

副業・兼業制度を円滑に導入し運営するためには、労使間のコミュニケーションが欠かせません。

制度の趣旨や内容を従業員に正しく理解してもらい、信頼関係を築きながら運用していくことが重要です。

6.1 制度導入時の説明会・周知の徹底

副業・兼業に関するルールを就業規則で定めたら、その内容を全従業員に周知します。

説明会や研修を開催し、次の点を丁寧に説明しましょう。

  1. ① なぜ副業・兼業のルールが必要なのか
  2. ② どのような手続きを踏むべきなのか
  3. ③ どのような場合に副業が認められ、どのような場合に制限されるのか
  4. ④ 労働時間の通算管理や健康管理の必要性

従業員の理解と協力を得ることで、制度が形骸化することなく、実効性のある運用が可能になります。

6.2 従業員との対話を通じた副業希望の把握

従業員から副業の申請があった際には、単に書類を受け取るだけでなく、対話を通じて丁寧にヒアリングを行いましょう。

ヒアリングの際には、次のような点を確認します。

  1. ① 副業を希望する理由や目的
  2. ② 具体的な業務内容や副業先の情報
  3. ③ 想定される労働時間や勤務日数
  4. ④ 本業への影響や健康管理についての認識

これにより、会社が懸念するリスク(競業、情報漏洩、過重労働など)を事前に把握し、適切な判断を行うことができます。

また、従業員も会社の考え方を理解し、安心して副業に取り組むことができます。対話を重視することは、会社と従業員の信頼関係を深める上でも役立ちます。

6.3 トラブル発生時の相談窓口の明確化

副業・兼業に関する疑問や悩み、トラブルが発生した際に、従業員が気軽に相談できる窓口を設けておくことが望ましいです。

人事部や労務担当者がその役割を担うのが一般的ですが、重要なのは、従業員が相談しやすい環境を整えることです。

従業員が「副業の相談をしたことで不利益な扱いを受けるのではないか」という不安を感じることがないよう、相談窓口の存在を周知し、相談したことによる不利益取扱いは行わないことを明確にしましょう。

相談窓口では、副業の許可申請に関する質問だけでなく、労働時間の管理方法、健康面での不安、副業先でのトラブルなど、幅広い相談に対応できる体制を整えることが理想的です。

6.4 制度の運用状況に応じた定期的な見直し

副業・兼業制度は、一度導入したら終わりではありません。実際に運用していく中で、予期せぬ問題が発生したり、社会情勢や法改正によって見直しが必要になったりすることがあります。

定期的に次のような点を評価し、必要に応じてルールを改定していく柔軟な姿勢が求められます。

  1. ① 副業申請の件数や許可・不許可の状況
  2. ② 副業による労務トラブルや健康問題の有無
  3. ③ 従業員からのフィードバックや要望
  4. ④ 法改正や裁判例の動向
  5. ⑤ 他社の動向や業界の標準的な対応

時代や環境の変化に応じて柔軟に制度を改善していくことで、従業員にとっても会社にとってもメリットのある副業・兼業制度を維持することができます。

7. まとめ:副業兼業の導入で悩んだら弁護士へ相談

副業・兼業の導入は、従業員のエンゲージメント向上やスキルアップ、優秀な人材の確保につながる可能性がある一方で、企業にとっては労務管理が複雑になり、法的なリスクも増大します。

特に、就業規則の改定、労働時間の通算管理、競業や情報漏洩のリスク評価、健康管理体制の構築など、専門的な知識が求められる場面が少なくありません。また、副業・兼業をめぐる法令や裁判例、行政の指針も変化していくため、最新の法的知識に基づいた対応が必要です。

制度設計や運用に際して少しでも不安や疑問があれば、企業法務や労務問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

専門家のアドバイスを受けることで、法的なリスクを最小限に抑え、自社の実情に合った、従業員と会社の双方にとってメリットのある副業・兼業制度を構築することができるでしょう。

監修者:弁護士 三井伸容

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