突然起こる労災事故、ここに注意!!

暑気払いや忘年会のシーズンになると、「職場の飲み会で飲みすぎた従業員が帰り道に転倒したら会社は責任を負うのか!?」なんて話題がよくでますよね(…でないですかね。)。

このようなケースではそもそも労働災害に該当するか(難しくいうと業務遂行性や業務起因性)が問題になるのですが、もし労災事故が起きてしまった場合に、会社がどんな責任を負うのか、会社側は何をすべきなのかという問題までご存知でしょうか。

建設現場で足場から転落、機械の操作ミスで受傷など、労災事故は突然起こるものです。もしもの時のために、企業が負う責任や労災事故の初動対応について、企業法務を扱う弁護士の視点で簡単にご説明します。

1 労災保険だけでは補償しきれません!

業務上あるいは通勤途中に負傷した場合、負傷者は労災保険給付を受けられることがあります。もっとも、労災保険による補償内容には慰謝料が含まれていないなど、負傷者の損害を全てカバーできるわけではありません。

そこで、労災事故が起きた場合、被災労働者は、労災保険の給付請求とは別に、労災保険給付額では足りない分について、使用者である会社に対して損害賠償請求することができます。

会社側の責任が認められた場合、被災労働者に対して、慰謝料や労災保険給付額を超える損害分の賠償責任を負い、怪我の内容によっては数千万円の損害賠償責任を負う可能性があります。中小企業であれば会社の存亡にかかわる賠償額にもなりかねません。

労働災害はいくら気を付けていてもどの会社にも起こり得る問題です。そのため、労災上乗せの賠償責任保険にご加入されることを強くお勧めします。

また、労災事故が起きた場合には、会社は、上記民事責任(損害賠償責任)の他にも、刑事責任、行政上の責任を負うリスクがあります。そのため、専門家にリスクの相談をしたうえ、日頃から労働者の生命身体の安全への配慮を徹底し、事故を未然に防ぐことが重要です。

2 下請事業者で発生した労災事故の責任を負うことも!?

とくに建設業や運送事業の企業様からのご相談は多くありますが、元請、下請、孫請と複数社が関わる工事現場で労災事故が起きた場合に、誰が責任を負うのかという問題が生じます。

元請事業者は、自社とは雇用関係がない下請事業者の従業員の労災事故についても、責任を負うことがあります。たとえば、元請事業者が、作業方法や作業工程について指示をしていて、下請事業者の従業員に対して事実上の指揮監督を行っている場合などに、元請事業者に安全配慮義務違反があるとして、損害賠償責任を負うことがあります。

労災事故に複数の企業が関わる場合には、被災労働者に対して各事業者のうち誰が責任を負うのかという問題と、責任を負う各事業者間の責任割合をどうするのかという問題が生じます。そのため、労災事故に複数事業者が関わる場合には、労災事故から早期に、各事業者がそれぞれ弁護士に相談して話し合いをするべきです。

3 労災事故の初動対応

労災事故が起きた場合に、まず優先してすべきは被災労働者の救助・治療だと思います。傷病の程度によっては速やかに救急車を手配する必要があります。

また、負傷者の治療と並行して、災害発生の事実関係を把握して記録化しておくことも重要です。重大事故の場合には、警察と労働基準監督署に連絡を入れたうえ、災害現場をそのまま保存しておくべきです。

その後、各種届出が必要になります。労災事故が起きた場合、事業主は、労災保険給付等の請求書で、①負傷又は発病の年月日、②災害の原因及び発生状況等の証明をする必要があります。

また、事業者(被災労働者の雇用主)は、労災事故で死傷者が出た場合には、労働者死傷病報告等を労働基準監督署長に提出することになります。なお、同報告の提出方法については、最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に相談することができます。

4 さいごに

労災事故が起きてしまいこれから請求を受けそう、労災上乗せ保険に詳しい保険の専門家を教えてほしい、自社で労災事故が起こる前に対策しておきたい、などなど、よつば総合法律事務所では、使用者側の労災事故対応に関するご相談をお受けしております。お気軽に初回無料相談をご利用ください。

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文責:弁護士 今村公治

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。