有利な和解をするために必要なこと

1. はじめに

債権回収や交通事故を原因とする損害賠償の支払い等、一定の紛争が発生したものの、話し合いで紛争を解決できるとなったときに、当事者間で確認書や示談書を締結することがあります(形式上債務承認弁済契約であったり、合意書という形をとることも多いです。)。

今回は、そのような紛争の終結場面において作成される書面の内容について色々とお話いたします。

2. 和解契約とは?

民法上の和解契約とは当事者が互いに譲歩して、争いを自治的にやめることを目的として結ぶ契約です。

交通事故によって発生した人的、物的損害に関する当事者間の示談が一般的によく用いられているものになります。

3. 書面作成時に気をつける点

①権利関係の確認

和解契約等において一番重要になってくるのが、権利関係です。

具体的には、支払いの請求を行っている事案であれば、誰が誰に対していくら支払うのかという点は明確に記載する必要があります。

その他にも、所有権や従業員としての地位があることなどの権利を確認することがあります。

これを定めておかないと、あとになって権利関係に関する争いが蒸し返されてしまう可能性もありますので最重要ポイントです。

②支払い方法の決定

和解契約書等においては、①の権利関係を定めた後、支払方法を決めることが多いです。

具体的には、一括の支払いとするのか、分割での支払いとするのかということを決めます。

支払い方法と一緒に決めることが多いのが、支払いを怠った場合の取り決めです。これを懈怠約款といいます。

「●回(あるいは●円)支払いを怠った場合には、分割の支払いとしたものを一括で支払う義務が発生する」という期限の利益喪失に関する規定を定めたり、「支払いが滞った場合には年●%の遅延損害金を支払う」といった内容を定めたりします。

分割での支払いを約束した場合、期限の利益を喪失するという約束をしておかないと、債務者が支払いを怠ったとしても、いつまでたっても全額を請求することができなくなってしまいます。

③清算条項

清算条項とは、当事者間で和解によって決定された請求権以外の一切の請求権が、お互いに生じないことを確認するものになります。

清算条項は、弁護士が紛争終了時に作成する書面のほぼ全てに規定するのではないかというくらい色々な書面に出てきます。

仮に清算条項を規定していないとすると、終わったと思った紛争について、「そういえばこれも損害として被ったから追加で支払ってくれ」というように紛争の蒸し返しのリスクが上がってしまいますので、ぜひ書面の最後に規定しておきたい条項になります。

また、清算条項においては、「本件に関し」という文言を入れるかどうかということが問題になることがあります。

これは、「本件に関し」という文言を入れなかった場合、当事者間におけるすべての債権債務関係が無くなってしまう可能性があります(例えば、継続的にいくつかの取引をしていた場合に、問題となっている取引以外についても支払い義務が無くなったりする可能性があります。)ので、規定する際には要検討です。

4. まとめ

紛争が発生した場合には、終結時に書面を作成することが多く、ご説明した規定を入れることが多いです。

但し、具体的な事案の特殊性に鑑みて、あえて清算条項を規定しない等の判断を行うこともありえますので、紛争を終局的に解決させる上では、個別の事案ごとに弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。

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文責:弁護士 加藤貴紀

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。