この企業法務ブログですが、実は、複数名の弁護士で毎週担当を決め、持ち回り制で作成しています。
ホットな企業法務トピックを毎週書くように工夫していたのですが、ふと、「労働法を各場面・段階ごとに解説したブログを書きたいな」と思うに至りました。そこで、村岡の担当回は、勝手に「労働法の基礎」というタイトルで連載をスタートしたいと思います!
初回の記事は、「労働法とは?」というテーマを設定しました。
1.労働法という法律は存在しない!
日本の法律において、「労働法」という名前の法律は存在しません。
ただし、「労働」とか「雇用」とか、そういった名前がつく法律は数多く存在します。労働基準法、労働契約法、労働組合法といったものが代表的なもので、この3つの法律は「基本三法」とか、「労働三法」などと呼ばれます。
非常にざっくりとした定義にはなりますが、「労働法」とは、労働者と会社との間の雇用関係を規律するルールの総称、ということになろうかと思います。
2.各法律の概要-労働基準法、労働契約法、労働組合法
(1)労働基準法について
労働基準法とは、会社が労働者を雇用するに際し、最低限の雇用条件の「基準」を、統一的なルールとして定めるものです。同法には、労働契約の基本原則(差別の禁止・強制労働の禁止・中間搾取の排除等)、労働条件の明示、解雇、賃金の支払い、労働時間・休暇といった点につき、(最低限の)ルールが定められています。
労働基準法は、第13条で、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と定めています。これは、「強行的効力」「直律的効力」と呼ばれるものです。この定めにより、労働基準法を下回る労働契約は、当該部分につき無効となります(強行的効力)し、無効となった部分は労働基準法が定める最低の基準により補充されることとなります(直律的効力)。
なお、「労基法違反で送検!」等というニュースがたまに流れますが、このように、労基法に違反した会社に対する罰則も定められています。
(2)労働契約法について
労働契約法とは、その名の通り、会社と労働者の「契約」の基本的なルールを定めるものです。同法には、就業規則の効力、出向、懲戒、解雇、雇止め等といった点につき、ルールが定められており、実務上、非常によく使われる法律です。
労働基準法とは異なり、罰則は定められていませんが、その規定の多くが強行法として位置付けられており、労働契約法に反する取り扱いは無効となります。
(3)労働組合法について
労働基準法・労働契約法は、会社-労働者という「個別的」な労使関係を規律する法律です。これに対し、労働組合法は、会社-労働組合(=労働者ら)という「集団的」な労使関係を規律する法律です。
一般的に、雇用する側である会社と、雇用される側の労働者とでは、その立場上、交渉力に大きな差があります。憲法28条において、労働者の団結権・団体交渉権・争議権が認められていますが、労働組合法は、労働者が対等な立場で交渉することができ、労働者の地位を向上させることを目的として、労働者のこれらの権利を具体的に保障しています。
例えば、正当な理由がないにも関わらず団体交渉を拒否したり、不誠実な交渉を行うことは、「不当労働行為」として禁止されています。
3.おわりに
今回は導入部分ということもあり、非常に抽象的な記事となってしまいましたが、次回以降は、具体的な事例を基に解説する形式を採りたいと思います。
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※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。