創業する際に法務の観点から注意すべきことは何ですか?

Q. 創業する際に法務の観点から注意すべきことは何ですか。

A. 持株比率の問題、社員・役員の問題、許認可の問題、法律上の規制の問題、知的財産の問題、顧客の引き抜き等の問題、契約書の問題があります。

会社を創業する際に法律的な観点は軽視されがちです。資金の点やビジネスモデルの点が重要なのは言うまでもありません。もっとも、最低限押さえておくべき事項も法律上存在します。

持株比率の問題

会社経営は最終的には株の比率の多数決で原則として決まります。つまり、50%超の権利を有していないと会社経営を円滑に進めることができなくなる可能性があります。可能であれば、会社の重要な事項を決する株主総会の特別決議が可能な3分の2以上の権利をもっておくことが望ましいでしょう。(なお、50%ちょうどでは決議が賛成多数になりませんので、50%を超える権利を有していることが重要です。)

従業員・役員の問題

社員は一度正社員として雇用すると辞めてもらうハードルが非常に高くなります。また、役員(取締役等)についても会社側から一方的に解任すると多額の損害賠償請求が認められてしまう可能性があります。内部の人の問題は深刻な問題になることが経験上も多いので、創業当初は本当に信頼できる人と一緒に事業を開始することが望ましいでしょう。法律的には、短期間で期限を決めた契約を締結するなどの方法であれば期限経過により社員の退社、役員の退任という扱いにしやすくなります。

許認可の問題

事業内容によっては許認可が必要となることがあります。また、事業ごとに法律上の規制がある場合がありますので注意が必要です。役所のWEBサイトを確認したり、許認可に詳しい専門家(弁護士・行政書士等)に相談するのがよいでしょう。

知的財産の問題

商標、特許、著作権、意匠、実用新案などの知的財産権を侵害している場合、事業の閉鎖に追い込まれてしまう場合もありますので注意が必要です。弁護士や弁理士に相談するのがよいでしょう。

顧客の引き抜き等の問題

以前の職場で知り合った顧客を引き抜いた場合、不正競争防止法違反に基づく差し止め請求や損害賠償請求をされてしまうリスクがあります。また、顧客名簿・営業秘密の扱いなどについても慎重な配慮が必要です。トラブルになってからでは遅いので早めの弁護士への相談をお勧めします。

契約書の問題

契約書は一度作成してしまえば原則として契約の内容通りの効果が発生します。損害賠償責任の負担、トラブルが起きた場合の責任の所在などについては特に契約書の条項を丁寧に見ておく必要があります。金額の大きい契約書や大口の取引先との契約書の場合には契約締結前の弁護士への相談をお勧めします。

まとめ

会社を創業する際にも法的な問題点は多数存在します。法務の観点から注意すべきことに留意しつつ事業を成功させましょう。

文責:弁護士 大澤一郎

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。