食品衛生法が改正されました

第1 はじめに

飲食店が提供する商品は安全であることが求められています。食品の安全を定める法律と言えば食品衛生法ですが、その食品衛生法が改正されました。

新型コロナウイルスの影響で通常の営業形態からお持ち帰りの営業に変更を余儀なくされている事業者様も多いですが、これからの季節は細菌性の食中毒も増えていきますし、食品の安全性は時間の経過とともに低下していくことが多いため、特に注意が必要です。

本日は、改正された食品衛生法の概要(特に巷でよく聞くHACCPとは何か)について記載したいと思います。

第2 改正食品衛生法について

食品衛生法は、飲食によって生ずる危害の発生を防止するために制定された法律です。今回の改正は、「食に対する安全を国際水準まで高める」という目的があり、東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据えたものでした。

主な改正点としては、次の7項目があります。(厚生労働省HPより)

  1. 広域的な食中毒事案への対策強化 (平成31年4月1日施行)
  2. HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化(令和2年6月施行)
  3. 特別の注意を必要とする成分等を含む健康被害情報の収集(令和2年6月施行)
  4. 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備(令和2年6月施行)
  5. 営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設(令和3年6月施行)
  6. 食品リコール情報の報告制度の創設(令和3年6月施行)
  7. その他(輸入・輸出関係)(令和2年6月施行)

以下、この7項目について簡単に解説していきたいと思います。

1.広域的な食中毒事案への対策強化について

従来の運用では、広域発生の食中毒事案においては事案の早期探知が遅れ、共通の汚染源の調査や特定が効果的に進まずに、対応に遅れが生じていました。

そこで、広域的な食中毒事案への対策強化として、国や都道府県等が、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止等のため、相互に連携や協力を行うとともに、厚生労働大臣が、関係者で構成する広域連携協議会を設置し、緊急を要する場合には、当該協議会を活用し、対応に努めることとなりました。

2.HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が求められることとなりました。(但し、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とするとされており、小規模事業者については、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められます)

(1)そもそもHACCP(ハサップ)とは何か

HACCPとはHazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)の略語で、食品を製造する際に安全を確保するための管理手法のことを言います。

簡単に言うと、食品の製造や出荷の工程で、どの段階で異物や細菌の混入が起きやすいかというHazard(危害)を、あらかじめ、Analysis(分析)して、被害を未然に防ぐこと言います。

(2)HACCP(ハサップ)とは具体的何をしなければいけないのか

食品を取り扱う会社がHACCPを導入する際には、12の手順を踏まなければならないと決まっています。手順6から手順12までは、「HACCPの7原則」と呼ばれています。

  • 手順1:HACCPのチームを編成する
  • 手順2:製品の名称や種類、原材料、添加物などを記述する
  • 手順3:製品を加熱して食べるのか、そのまま食べるのかといった用途や、主に誰が食べるのかという消費者を確認する
  • 手順4:原材料の仕入れから最終製品の出荷まで製造工程の一覧図を作成する
  • 手順5:製造工程一覧図が現場の認識とズレがないか確認する
  • 手順6(原則1):各工程で危害要因になりそうなものを洗い出して分析し、対処方法を検討する
  • 手順7(原則2):加熱殺菌や金属探知など危害要因を取り除くための重要管理点(CCP)を決定する
  • 手順8(原則3):CCPが適切に制御されているかどうかを判定するための管理基準(CL)を設定する
  • 手順9(原則4):CCPが適切に管理されているかどうかを確認するためのモニタリング方法を設定する
  • 手順10(原則5):モニタリングした結果、CLから外れているときに行う改善措置を設定する
  • 手順11(原則6):HACCPが適切に機能しているかを確認するための検証方法を設定する
  • 手順12(原則7):HACCPを実施したことを記録に残し、保存するための方法を設定する。そのことでどの工程で問題が生じたのか、ひと目でわかるようにする。
(3)法改正によってどうなるのか。

法改正によって、原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が求められます。

内容としては、これまでに行ってきた衛生管理を、工程ごとに洗い出して「見える化」することです。業種ごとの手引書が厚生労働省のHPにアップされており、入門者でも導入が容易となっています。

厚生労働省のHP HACCP導入のための参考情報 →

HACCPに沿った衛生管理の実施によって食中毒発生及び拡大防止が可能となると言われています。また衛生管理を「見える化」することは、紛争になった場合に会社を守る証拠ともなります。

3.特別の注意を必要とする成分等を含む健康被害情報の収集

厚生労働大臣が定める特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害が発生した場合、事業者から行政へ、その情報を届け出ることが義務化されます。

これは、健康食品等による健康被害が増加していることを受けて新設されたものです。

4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備

食品用器具と包装容器について、安全性を評価して安全が担保された物質でなければ使用できない仕組みであるポジティブリスト制度が導入されます。

従来は禁止された物質でなければどんなものでも利用できる仕組みでしたが、改正によって安全性が担保された物質以外は使用できないこととなります。

5.営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設

食品を扱う事業に関し、事業者の届出制度を作り、併せて現在の営業許可の業種区分を実態に応じて見直すこととなります。

営業許可の対象業者以外の事業者の所在をHACCPの制度化に伴って把握するために、届出制度が創設されました。実態に応じた営業許可業種の見直しや、現行の食品衛生法施行令第35条で定められた34の営業許可業種以外の事業者の届出制が作成されます。

6.食品リコール情報の報告制度の創設

事業者が食品の自主回収(リコール)を行う場合に、自治体を通じて国へ報告する仕組みを作り、リコール情報の報告が義務化されます。また、このリコール情報を一覧化してHP等で発信されることとなります。

これまでは、情報の公開については、統一のルールは存在しませんでした。今後は、国が情報を管理し消費者に提供することで、健康被害の発生や拡大を防止することを目指しています。

7.その他(輸入・輸出関係)

輸入食品の案税制を確保するために、食肉等の食品のHACCPに基づく衛生管理や、乳製品・水産食品の衛生証明書の添付が輸入の要件となります。また、食品の輸出のための衛生証明書発行に関する事務を定めることとなります。

第3 終わりに

今回は食品衛生法の改正についてご紹介させていただきました。特に重要となるのは、やはりHACCPの義務化と考えられます。

仮に食中毒事案が発生してしまった場合、提供事業者様は、民法や製造物責任法(PL法)に基づいて損害賠償責任を負う可能性があります。また法令違反の程度が悪質であったり、生じた結果が重大であった場合には刑事上の責任を負う可能性もございます。

何より事業者様にとっては、食中毒が発生したこと自体で大きく企業価値を損なうことにもなりかねません。改正された食品衛生法に基づく衛生管理を徹底していただき、紛争発生を未然に防止するとともに、将来の紛争に備えることが極めて重要となります。

以上

文責:弁護士 松本達也