業種
お困りの問題
担当弁護士

相談前

A様は父が創業した製造業の会社を継いで、20年以上も代表取締役社長をしておりました。父は、会社の経営にはタッチしていませんでしたが、会社の株式の大半を保有している状態になっていました。父が突然死亡し、相続が発生しました。その後、公正証書遺言が残されていることが分かり、その内容は、不動産や預金を含むほとんどの財産をA様以外の他の相続人に相続させるというものでした。遺産である不動産や預金に比べると、会社の株式の価値はかなり低いものでしたが、A様は、株式が他人の手に渡って会社が混乱するのを回避することを最優先に考え、株式の取得を希望しました。

相談後

A様は遺留分減殺請求を行い、弁護士が相手方と交渉を続け、結論として、A様は、父が保有していた会社の株式をすべて取得し、その他の遺産については何ら取得しないという内容で、合意しました。金銭的な価格でみると、A様の取得した財産はかなり少ないものでしたが、A様は会社の株式をすべて取得できたことで、その後も、安定して会社の経営を続けることができました。

担当弁護士からのコメント

被相続人が株式を保有していた場合、相続の発生により、株式は遺産分割がなされるまでは共同相続人による準共有の状態となります。そして、会社法106条は「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式について権利行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名または名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。」と定めています。つまり、相続発生後、権利行使人を決めないと、誰も権利を行使できず、会社が機能しなくなるおそれがあります。

このような事態を避けるためには、被相続人がお亡くなりになる前に、株式の保有者がお亡くなりになっても会社が円滑に運営されるように遺言を作成するなど、生前の対策を取っておくことが極めて重要です。万が一、このような対策がないまま相続が発生してしまった場合には、会社の機能がストップしてしまわないよう、早急に問題の解決にあたる必要があります。

事業承継は、税金の問題も絡んで、非常に難しい問題です。事業承継のご相談は、相続問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。