業種 | 建設業・建築関係 |
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お困りの問題 | 契約書 |
担当弁護士 | 加藤 貴紀 弁護士 |
相談前
ご相談者様の会社は内装業を業として行っており、現場の作業を行う際には個人事業主として稼働している職人に外注していました。外部の職人の中には何年もご相談者様の会社の受注した現場で働くなどいわゆる専属外注として仕事を行っている人がいました。
ご相談者様の会社が取り扱っている業務の性質的に、業務を外注する際に詳細な条項を記載した契約書を作成することがなかったのですが、ご相談者様が契約書作成の必要性を感じ、業務委託契約書の作成を当事務所にご相談にいらっしゃいました。
相談後
まず、業務委託契約書を作成する際に注意した点は、請負業者が注文者であるご相談者様の会社の普通の従業員とは異なること、すなわち労働者性が無いことを明確にする条項を規定するということでした。
一般的に、形式上は業務委託の形をとっていたとしても、その働き方や会社からの扱われ方によっては、会社の労働者として法律上扱われ、後になって通常の労働者と同じように残業代等の支払いをしなければならなくなる可能性があります。
そこで、今回は、①副業や兼業が自由であること、②会社からの業務の依頼を拒否できること、③業務のやり方について会社からの指示に従う必要がないこと、④時間的な拘束を受けないこと等を契約条項に盛り込みました。
そして、契約上規定しているだけで、会社の従業員と同じ扱いをしている場合には、結局労働者性が認められてしまう可能性がありますので、会社としてもその規定に従って外注先の業者を扱うようにアドバイスしました。
弁護士からのアドバイス
一時期、社会保険料の支払いから逃れるために、従業員を業務委託の形を取るということが多くの会社で行われたことが社会的に問題となりました。今回ご相談いただいた案件は、そもそもそのように積極的に社会保険料の支払いを潜脱することを想定していたわけではなかったのですが、外注業者の取り扱い方を伺ってみると、労働者性が認められる可能性が高いように思われました。
このように、専属的に業務を外注している場合(または社内で働いている人との契約を業務委託契約としている場合)に、会社で雇用する従業員と同じように扱っている場合、上述のとおり、外注先に労働者性が認められて残業代等の請求をされるリスクが生じてしまいます。
そして、ただ単に契約書で業務委託と謳っているだけでは労働者性が否定されるわけではありませんので、実際に会社が外注業者をどのように扱うかという点も重要になってきます。
労働者性の判断は、上述した①~④の規定以外にも、報酬の定め方や業務を行う際の器具の負担等すべての事情を総合考慮した上で判断されるものになります。
その判断を専門家抜きで行うことは簡単ではありませんので、契約書の内容や、会社がどのように外注業者を取り扱えば良いのか、ご不明な点がありましたら弁護士の方にご相談されることをおすすめいたします。