近時のセクハラトラブル傾向と対策

スポーツ業界、官公庁、部活、自衛隊、芸能事務所など、セクハラやパワハラの問題はいつも世間を騒がせており、なくなることはありません。

今回は、セクハラをしてしまう人の気持ちと会社の対策について、弁護士業務をする中で感じたことを解説します。

セクハラの傾向~「認識のずれ」が原因?~

ハラスメントの代表例はパワハラとセクハラです。パワハラは仕事での指導との線引きが難しいといわれています。

ではセクハラはどうでしょう?

正直なところ「セクハラかどうかの判断が難しい」事案は少ない印象です。確信的に「セクハラである」とまでは判断がつかないかもしれません。

しかし「セクハラかもしれない」というレベルなら、自分で簡単に判断できることが多いでしょう。

にもかかわらず、いまだにセクハラトラブルが起きています。それはなぜでしょうか?

弁護士としての経験では「認識のずれ」が原因と感じます。具体的には主に以下の2パターンです。

  1. 自分の言動が相手に許されているという認識のずれ
  2. 相手が自分に好意をもっているという認識のずれ

「認識のずれ」の具体的な内容とは?

自分の言動が許されていると認識しているパターン

行為者が「自分の言動はセクハラかもしれない」「人によっては不快に感じるかもしれない」とある程度わかっていると思われるパターンです。

にもかかわらず「自分なら許されるのではないか」「この人なら許してくれるのではないか」と思い行動してしまうパターンです。

行為者自身は許されていると思っているかもしれません。しかし相手がその場の空気を悪くしないよう気を遣ってくれているだけです。実際には相手はとても不快に感じていることは珍しくありません。

このようなセクハラは、行為者本人が思っている以上に周りを不快にさせます。

繰り返されると、行為者はあまり悪気がないとしても、知らない間に相手を精神的に追い込むこともありますので要注意です。

たとえば、大阪の水族館で起きたセクハラ事件があります。

この事件は、管理職が派遣社員等に日常的に自己の性生活などの不適切な発言をしていたものです。

行為者もハラスメント研修は受講していました。行為者は自分の行為がセクハラに該当することを認識していた可能性は高いです。しかしセクハラ発言を継続していました。

自分の言動が相手に許されていると認識しているパターンです。

相手が自分に好意を持っていると認識しているパターン

次は相手が自分に好意を持っていると認識しているパターンです。似たパターンには、相手が自分を少なくとも嫌がっていないと認識しているパターンもあります。

このパターンは恋愛感情や、恋愛が思うようにいかないことへの激しい感情を伴うことがあります。エスカレートすると、つきまといや身体接触、ひどい場合には犯罪行為になることもあります。

私生活上の行為は会社として指摘しにくいかもしれません。人間だれしも誤解することはあります。実際に従業員間の交際関係があることもあります。

しかし、会社としては危険な兆候をまずつかむことが肝心です。兆候をつかんだ後は絶対に放置せず、注意指導や被害者への業務上の配慮など、ケースに応じた適切な対応を取りましょう。

危険な兆候がある場合には、本人や同僚からの申告があったり、社内にいつもとは違う雰囲気が出てきたりするはずです。本人や同僚からの正式な申告がなくても、従業員から心配の声が上がることも珍しくないです。

被害を生まないために会社ができること ~対策~

では被害を生まないために会社ができることには何があるでしょうか?

会社はセクハラの兆候をつかむ仕組みを構築しましょう。

厚労省はセクハラに関する相談窓口の設置を求めています。2022年6月の公益通報者保護法の改正により、300名を超える従業員がいる会社は公益通報窓口の設置義務もあります。

注:あらゆるハラスメントが公益通報に該当するわけではありません。しかし犯罪に該当するような場合などは公益通報に該当します。

セクハラの兆候をつかんだら次は調査や是正のアクションを進めていきましょう。

まとめ:セクハラの認識のずれと対策

セクハラをしてしまう人には認識のずれがあります。たとえば「自分の言動が相手に許されているという認識のずれ」や「相手が自分に好意をもっているという認識のずれ」です。

会社はセクハラの兆候をつかむことを重視し、セクハラの兆候をつかんだら調査や是正を進めましょう。

ハラスメントは様々な利害関係者がいるため会社が対応に悩むことが多いです。お悩みの企業様は弁護士に相談してみましょう。

お問い合わせはこちら

文責:弁護士 三井伸容

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。