電子署名の法的効果について

1. はじめに

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、テレワークを採用する企業が増えています。このような状況の中、「電子署名」が注目されています。

電子署名を利用することで、書類をプリントアウトし、当該書類に署名押印する必要がなくなり、テレワークがしやすくなるというメリットがあります。今回は、電子署名の法的な効果について、簡単に説明します。

2. 契約書における署名押印の法的効果

(1) 契約書に署名押印がなくても、契約自体は有効

契約は当事者の意思の合致により成立するものであり、書面の作成及びその書面への署名押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていません。

したがって、特段の定めがある場合を除き、契約にあたり、契約書の作成や署名押印をしなくても、契約の効力に影響はありません。

もっとも、契約の内容について意思の合致があったかどうか、後に紛争となる可能性がありますので、合意内容を契約書として作成しておくことはとても重要になります。

(2) 裁判で証拠になる文書

民事裁判において、私文書が作成者の認識等を示したものとして証拠になるためには、その文書の作成者とされている人が真実の作成者であると相手方が認めるか、そのことが立証されることが必要であり、これが認められる文書は、「真正に成立した」ものとして取り扱われます。

(3) 署名押印には、文書の成立の真正を推定する効果がある

契約書における署名押印が持つ意味は、「文書の成立の真正」、すなわち文書の作成名義人が本当にその文書を作成した者であること(本人性)が推定されることにあります。

推定の構成は次のようなもので、「二段の推定」と呼ばれています。

まず、私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によって顕出された印影であるときは、判例上、当該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと推定されます。

次に、民訴法第228条第4項には、「私文書は、本人・・・の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という規定があります。

この規定により、契約書等の私文書の中に、本人の意思に基づく署名又は押印があれば、その私文書は、本人が作成したものであることが推定されることになります。

このように、契約書に署名又は押印があることによって、契約書についての成立の真正(本人性)の推定を受けられることになります。

それでは、電子署名の場合には、文書の成立の真正を推定する効力が、法的に認められているのでしょうか。

3. 電子署名の法的効力について

(1) 電子署名法により文書の成立の真正を推定する効果が認められている

電子署名法第3条により、電子文書等は、本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定されるよう定められています。

したがって、要件にあてはまる電子署名がなされる場合には、紙媒体の書類にされる署名押印と同じような法的な効力が認められることになります。

電子署名法第3条

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

(2) 電子署名に推定効が認められる場合

電子署名法第3条では、次の要件を満たす電磁的記録には真正な成立が推定されると定められています。

  1. 本人による電子署名があること
  2. 電子署名が、これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものであること

電子文書であっても、上記要件を満たす電子署名があれば、署名押印のある契約書と同じように、文書の成立の真正を推定する法的効果が発生します。

4. 電子署名を使用する際の注意点

現在、多数の会社によって電子契約サービスが提供されています。どのような電子契約サービスであれば、電子署名法の「電子署名」に該当するか否かについて、法務省のHPで解釈が示されています。

電子署名法第2条関係Q&A(法務省)

電子署名法に関する直接的な裁判例はいまだ集積されていません。電子契約の導入を検討する際には、どの電子契約サービスを選ぶのか、電子契約サービスを導入するとしても、全ての契約を電子契約とするのか、それとも紙の契約書も残すのか等、適切なサービスを慎重に選択することが重要と考えられています。

5. 最後に

紛争の予防のためには、取引をする前に、しっかりと契約書の作成をしておくことが重要です。

契約書の作成、チェックが必要な場合には、一度当事務所までご相談いただければと思います。

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文責:弁護士 大友竜亮

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。