相続争いを避けるために遺言書を作成しましょう!

被相続人(お亡くなりになった方)の遺産分割において、親族間でトラブルになり「争族」となってしまい、兄弟姉妹が相続によって絶縁状態になってしまうことがあります。

本日は、そのような「争族」トラブルを避けるための遺言書作成についてご説明させていただきます。

1. 遺言書がないと「争族」に?

相続は、通常は人の死亡によって開始します(民法882条)。そして、遺言書がある場合は、原則は遺言書通りの内容で相続することとなります。

民法では、各相続人の取り分として定められた割合(民法900条 法定相続分)が定められていますが、遺言書がある場合は、この法定相続分に縛られることなく遺産を分けることが出来るのです。

では遺言書がない場合はどうなるのでしょうか。

この場合、通常は相続人が遺産分割協議を行い、相続人全員の合意の上で、遺産分割協議書を作成し、遺産が分割されることとなります。

ところが、相続人には生前故人の面倒をほとんど見ていた、生前故人から多額の援助をもらっていた人がいた等の様々な事情があることが多いため、話し合いがなかなかまとまらず、最終的には大きなトラブルに発展してしまい、兄弟姉妹が相続によって絶縁状態になってしまうことがあります。

2. トラブルを避けるために、遺言書を作成しましょう

遺言書は、自身の有する財産を、誰に対してどのくらい譲り渡すかを自由に決めることが出来ます。

遺言書は被相続人の意思そのものであるため、遺言書がない場合とは異なり、遺産を分割するのに相続人全員の合意は不要です。

そのため、有効な遺言書を作成していれば、後に遺産をめぐるトラブルに発展する可能性を低くすることが可能です。

もっとも、遺言書の作成に当たっては注意すべき点が多数あります。

(1) 形式面でのミスに気をつける

遺言書作成の際には、手書きで作成する自筆証書遺言と、公証役場で公証人が作成する公正証書遺言のどちらかが利用されることが多いです。

自筆証書遺言は、その全文、日付、名前を含めて手書きで作成することが必要です(民法第968条1項)。

手書きで作成しなかった場合、その遺言は無効となってしまうので注意が必要です。尚、遺言書につける財産目録について自書することまでは求められておりません(民法第968条2項)ので、この部分はパソコンで作成しても大丈夫です。

また遺言の内容も、誰に、どの財産を、どれぐらいあげるかが第三者から見ても内容が理解できるように明確に記載する必要があります。

(2) 公正証書遺言での作成を検討する

自筆証書遺言を作成した場合に、その有効性をめぐって遺言無効確認訴訟という裁判になることがあります。

公正証書遺言は、遺言者が公証人へ口頭で遺言の内容を伝え、公証人が遺言書を作成します。そのため、遺言の形式面でのミスや、偽造されたものであるとして後に争われる可能性を低くすることが出来ます。

遺言書の作成費用は掛かってしまいますが、遺言書を作成する際には、公正証書遺言で作成することをお勧めします。

(3) 遺留分に配慮した内容にする

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に与えられており、相続財産の一定割合を本来の相続人に確保する制度です。

遺留分の権利を持つのは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)、すなわち、配偶者と子供、あるいは父母(直系尊属)といった相続人ということになります。

そのため、仮に「すべての財産を長男に遺贈する」というような遺言書があった場合であっても、遺留分の権利を持つ者は、その侵害された遺留分を主張することが出来ます。

遺言書を作成するときに遺留分について配慮しておかないと、相続による親族間の争いを無くすという遺言作成の目的が果たせなくなってしまいますので、注意が必要です。

(4) 株式がある場合は、特有の問題点に注意する

株式の相続がある場合はどのようになるのか、下記の事例を用いてご説明します。

  • A (社長:自社株式90%保有)
  • B (Aの妻:自社株式5%保有)
  • C (長男:会社の後継者 自社株式5%保有)
  • D (次男:会社の経営には関与していない)

※自社株式6,000株

ア. 遺言書がない状態でAが死亡した場合

この場合、遺産分割がなされるまでは、共同相続人であるB、C、Dが6,000株の株式を準共有する状態になります。

ここでいう準共有とは、一人が相続分に応じて株式を承継する(例えば、妻であるBが法定相続分の2分の1である3,000株を相続する)のではなく、一人が1株について相続分に従って6,000個承継することとなります。

本件の場合は、一株についてBが2分の1、CとDが4分の1ずつの持ち分で6,000株全部について3人で共有するという形になります。

議決権を行使する人は、共有持ち分の過半数で定めるとされているため、もし、BとDが結託すると、その有する議決権が2分の1+4分の1で過半数以上に達し、自社株式6,000株について自由に議決権を行使することができるため、後継者であるCではなく、BとDが会社運営を行うことが出来るようになってしまいます。

そのため、Aが仮に後継者をCと指名していたのであれば、遺言書を作成して、Cに株式を遺贈すべきであったと言えます。

イ. Cに6,000株を遺贈する旨の遺言書を残していた場合

この場合、株式はCが相続することとなるため、株式の相続をめぐって、争いになる可能性は低いです。

もっとも前記(3)の通り、その内容は遺留分に配慮しなければなりませんので、注意が必要です。

3. まとめ

以上のように、被相続人の遺産をめぐって争いが生じないようにするためには、遺言書の作成が有効です。

もっとも、その遺言書の作成に際しては、注意すべきポイントがたくさんあります。

特に株式が絡むような場合は、より注意が必要です。遺言書の作成を考えている方、身内の方が作成を考えている方、会社を後継者に譲り渡したいと考えている方は、出来るだけ早いタイミングで一度当事務所までご相談ください。

お問い合わせはこちら

文責:弁護士 松本達也

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。