インターネットにおける権利侵害の対応③

第3回では、プロバイダ責任制限法に規定がある発信者情報開示請求について説明をしたいと思います。

1.プロバイダの責任

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、省略して「プロバイダ責任制限法」といいます)では、プロバイダの責任について定めています。

ここでいうプロバイダの意味について説明します。まず、プロバイダとは、直訳すると、供給者という意味になります。では、供給者とは、どの範囲までを含むのでしょうか。

一般的には、KDDIやNTTドコモのように、インターネットサービスの提供事業者というイメージが強いかもしれません。しかし、プロバイダ責任制限法の対象は、これらのインターネットサービスの提供事業者はもちろん、掲示板の管理者やブログサービスの運営者などインターネットで閲覧できるウェブサイトの提供に関わっている者もプロバイダに含まれます。

2.発信者情報開示請求の要件

情報開示請求の条文については、プロバイダ責任制限法の4条1項に規定があります。

プロバイダ責任制限法4条1項

特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。

一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

要件を整理すると、以下のようになります。

  1. 特定電気通信による情報の流通によって
    特定の電気通信とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(2条1項)のことをいいます。要は、インターネット上のウェブサイトで行う情報発信のことです。掲示板に投稿したり、ブログ記事をネットにアップしたりすることもこれにあたります。
  2. 開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らか
    ここでいう「明らか」とは、権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨で、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味します。
  3. 開示を受けるべき正当な理由がある
    開示請求者が発信情報を取得することの合理的な必要性を有していることを意味します。具体的には、情報を開示することの利益や情報を開示される発信者側の不利益も考慮したうえで情報開示を行うことが相当であるという意味も含みます。発信者に対して削除請求を行う、民事上の損害賠償請求を行うなどの目的であれば正当な理由は認められやすいです。
  4. 相手方が開示関係役務提供者であること
    具体的には、サーバー提供者、掲示板の管理者、インターネットの接続サービスを行っているだけのプロバイダ(NTTドコモ、OCNなど)も含まれます。
  5. 開示を求める対象が、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報)であること
    クレジットカードの情報等関係のない情報まで開示してしまうと、発信者とのプライバシーとの関係で権利侵害の程度が大きくなりすぎます。そこで、総務省令では、発信者情報を下記の通り定めて限定しています。要は、情報開示の対象を発信者特定のために必要最小限度の範囲に限定しています。

    平成十四年総務省令第五十七号
    特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令

    一 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
    二 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
    三 発信者の電子メールアドレス(・・・)
    四 侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス(・・・)
    五 侵害情報に係る携帯電話端末又はPHS端末・・・からのインターネット接続サービス利用者識別符号・・・
    六 侵害情報に係るSIMカード識別番号・・・
    七 第四号のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた電気通信設備、第五号の携帯電話端末等からのインターネット接続サービス利用者識別符号に係る携帯電話端末等又は前号のSIMカード識別番号・・・に係る携帯電話端末等から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻

以上

文責:弁護士 辻悠祐