目次
1. はじめに:地中埋設物は比較的多い相談
「建物を建築する目的で土地を購入したところ、のちの調査でガレキなどの地中埋設物が見つかり困っている」というご相談をよくいただきます。
このようなトラブルでは、高額な調査費用や除去費用、特別の工法のための費用増加などの損害が買主に発生してしまいます。
本記事では、地中埋設物のトラブルが発生した場合の売主に生じうる法的責任について解説します。
2. 買主が請求できる法的構成
買主が売主に対して取りうる代表的な手段は、以下の通りです。
- 契約不適合責任に基づく追完請求(地中埋設物の除去など)
- 契約不適合責任に基づく代金減額請求
- 債務不履行に基づく損害賠償請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
- 債務不履行に基づく売買契約の解除
3. 契約不適合とは?
契約不適合とは、契約の目的物が種類、品質または数量に関して、契約の目的に合わないことをいいます。
土地に地中埋設物が存在することは、「品質」に関して契約の目的に合わない場合に当たる可能性があります。
また、地中埋設物の存在が契約不適合に当たるかについては、その埋設物の大きさや数量が影響します。
簡単に撤去できる程度のものであれば、契約不適合には該当しません。
さらに、契約不適合の判断には、契約の目的が何であるかが重要です。
たとえば、土地の売買契約の目的が「自宅(戸建て)を建築すること」であれば、その建築に支障がある程度の埋設物でなければ、契約不適合には該当しません。
契約の目的の特定のためには、売買契約書や重要事項説明書の記載が重要です。
4. 説明義務とは?
土地の売買契約に関しては、売主は買主に対して、「契約締結の可否に影響を及ぼすことが予想される事項」について説明する義務を負っています。
売主が地中埋設物の存在を知っていたにもかかわらず、あえて買主に告知しなかった場合、説明義務違反となります。
また、地中埋設物の存在を確定的に認識していなかったとしても、「地中埋設物が存在するかもしれない」ということを認識していた場合には、売主の説明義務違反となる可能性があります。
5. 免責特約があっても説明義務違反になった事例
売買契約の中に、「地中埋設物が存在することが判明した場合には、除去費用は買主が負担する」というような免責特約が定められている場合があります。
このような免責特約がある場合について、東京地方裁判所平成15年5月16日判決では、以下の通り判断しています。
この裁判例は、「売買契約に地中埋設物に関する売主の免責特約を設けるのであれば、買主から地中埋設物に関して問いかけがあった場合には、売主は適切に情報を提供する義務がある」と判断しました。
このように、売主の免責特約がある場合でも、説明義務違反を追及できる可能性があります。
6. まとめ:地中埋設物のトラブルの相談は弁護士へ
本記事では、購入した土地から地中埋設物が発見された場合の売主の責任について解説しました。
土地売買は金額の大きさゆえに、トラブルが深刻化するケースが多いです。
お困りの際には、弁護士へのご相談をお勧めいたします。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。