送迎用バスの置き去り防止対策などの義務化について

目次

  1. はじめに
  2. 改正の内容
  3. 義務①-送迎用バスの乗降車の際に点呼等の方法により園児等の所在を確認すること
  4. 義務②-送迎用バスに安全装置を設置し、当該装置を用いて、降車時の①の所在確認を行うこと
  5. 安全管理マニュアル(安全管理の徹底)
  6. さいごに

1. はじめに

よつば総合法律事務所の弁護士の堀内です。

昨今の送迎用バスへの園児置き去り死亡事件の発生を受け、2023年4月より、園児等の所在確認と送迎用バス等への安全装置の装備が義務づけられました。

この記事では、改正内容や企業・施設が対応しなければいけない内容などについて、説明していきます。

2. 改正の内容

(1) 義務の概要

 府省令等の改正により、義務付けられた内容は以下の2点です。

① 送迎用バスの乗降車の際に点呼等の方法により園児等の所在を確認すること

② 送迎用バスに安全装置を設置し、当該装置を用いて、降車時の①の所在確認を行うこと

(2) 義務付け対象の施設・事業

義務①と義務②で、対象施設・事業は異なります。

※以下のコンテンツは左右にスワイプしてご確認ください。

①②ともに義務付けられた施設・事業①のみ義務付けられた施設・事業
  • 認定こども園
    (幼保連携型、幼保連携型以外いずれも対象)
  • 幼稚園
  • 特別支援学校
  • 小学校以上の学校(特別支援学校を除く)
  • 専修学校
  • 保育所
  • 児童発達支援センター
  • 保育所以外の児童福祉施設
    (助産施設、児童遊園、児童家庭センターを除く)
  • 家庭的保育事業
  • 小規模保育事業
  • 事業所内保育事業
  • 居宅訪問型保育事業
  • 指定児童発達支援事業所
  • 放課後等デイサービス
  • 左記以外の指定障害児通所支援事業
  • 指定障害児入所施設
  • 放課後児童クラブ
    (放課後児童健全育成事業)
  • 認可外保育施設
    (ベビーシッターを除く)
  • 認可外保育施設
    (ベビーシッターに限る)
  • 広域的保育所等利用事業

このように、対象施設・事業の区分けが非常に細かいです。特に、小学校以上の学校も①が義務付けられていることに留意が必要です。

なお、ここでは詳しく説明はしませんが、対象施設・事業ごとに、根拠となる法令・基準が異なりますので、少し注意が必要です。

3. 義務①-送迎用バスの乗降車の際に点呼等の方法により園児等の所在を確認すること

(1) 「園児等」

この「園児等」には、「保育所・幼稚園・認定こども園等の幼児」のみならず、「小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校・専修学校の児童生徒・学生」が含まれます。

(2) 施行日

2023年4月1日から義務化されています。

義務①には、経過措置や猶予期間は設けられていないことに注意が必要です。

4. 義務②-送迎用バスに安全装置を設置し、当該装置を用いて、降車時の①の所在確認を行うこと

(1) 安全装置の仕様・設置等の要件

安全装置は国土交通省のガイドラインに適合しているものであることが必要です。

ガイドラインへの適合が確認された製品の具体的なリストも公表されています。

リストを見ると、様々な安全装置機器が記載されており、置き去りを検知するためのAIカメラのシステムなどもあります。

なお、この安全装置のガイドラインでは、設置場所に関し、園児等がいたずらできない位置に設置することなども求められています。

(2) 施行日・代替措置

こちらも2023年4月1日から義務化されています。

ただし、安全装置の装備が困難な場合は、2024年3月末日までは代替措置による所在確認でも可とされています。

実際、安全装置の製品が手に入らない、設置工事が間に合っていないといった状況も耳にしています。

しかし、1年間は単に安全装置の設置を間に合わせるための猶予期間ではありません。その間も代替措置を講じる必要があります。

なお、代替措置の例としては、園児等が降車した後に運転手等が車内の確認を怠ることがないよう、「運転席に確認を促すチェックシートを備え付けるとともに、車体後方に園児等の所在確認を行ったことを記録する書面を備える」ことなどが挙げられています。

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5. 安全管理マニュアル(安全管理の徹底)

単に安全装置を装備するだけにとどまらず、運用上も安全管理を徹底するため、安全管理マニュアルが策定されました。

見落としがないか確認するためのチェックシートや、安全管理体制や送迎業務モデル例のチェックリストなどが盛り込まれています。

安全管理マニュアルの活用は、代償措置に重なり合う側面がみられます。

また、送迎バスのラッピングやスモークガラスの使用に関する留意事項として、『外から車内の様子がほとんど見えないようなラッピングやスモークガラスにすると、車内のこどもの存在が気づかれず置き去りによる事故発生リスクが高まるため、避けるべき』との指摘もなされています。
 
一方で機械任せであってはならず、他方でヒューマンエラーは起こり得るものとして、安全装置の装備と安全管理マニュアルの活用は一体として実施することが念頭に置かれています。

この安全管理マニュアルに関する研修動画研修資料も作成されています。

6. さいごに

今回の改正は安全装置の設置に注目が集まっています。ガイドラインに適合した安全装置を設置することに加え、

  • 義務化の対象は就学前の児童や施設に限られないこと
  • 経過措置なく開始されている義務(義務①:乗降車時に点呼などで所在を確認)があること
  • 安全装置の設置が未了でも適切な代替措置を講じる必要があること

などに注意が必要です。

安全装置を設置するだけにとどまらない、「こどもの送迎用バスで置き去りを起こさないための徹底した枠組みと対応」が必須です。

今回の改正は、省庁横断的で所管省庁が多く、情報発信も多岐に亘っています。 こども家庭庁のウェブサイトが比較的わかりやすく、横断的にまとめられていますので、参考にしていただければと思います。

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文責:弁護士 堀内良

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。