1.企業の人材難、採用難に付け込んだトラブルが増えています
厚生労働省の報道発表資料によれば、平成31年1月の有効求人倍率は1.63倍(10人の求人募集に対して応募が6人程度という水準です)で、ここ数年高水準で推移しているそうです。
こうなってくると、会社にとっては人材確保が重要なテーマ、ないがしろにはできない課題となってきますが(弁護士業界でも人材難・採用難だと言われております。)、昨年末からこのような事態に付け込んだトラブルについてご相談を受ける機会が増えております。
2.実際のトラブル例
ご相談の概要で共通する内容は以下の点です。
- ある日突然「無料」を謳って求人広告サイトと評する求人広告への掲載を勧誘される。
- 勧誘は対面ではなく電話かFAX、ダイレクトメールであることが多い。
- 申し込みを行っても特に応募や成果はない。
- 一定期間経過後、数万円から数十万円の掲載料を請求される。
- 問い合わせると、無料掲載期間が経過して、契約は自動更新された、今後は有料で求人広告を出すことになるので、費用が発生すると説明される。
概ねこのような内容であるようです。
当然申し込んだ会社側としては、無料掲載期間や期間経過後に有料の契約に自動更新されるとの認識はないのですが(有料であると知っていれば申し込むはずがない!明らかに費用対効果が悪い!という御認識であることが多いです。)、例えば申込時の用紙の片隅に有料契約に自動更新する旨の規定が極めて判別しにくい小さな字で記載するなどの細工がされており、自動更新に同意していたなどと主張されることが通常の手口です。
3.法的な問題
法的な問題としては、法人間の契約の場合消費者契約法の適用がなく当事者間の契約・合意の有無が問題になります。
上記のような申込用紙の片隅に判別しにくい文字で自動更新規定があるからと言って当該内容に会社が同意していたとは考えがたいですし(契約の不成立)、掲載は無償であると信じていたことについて錯誤があるとも考えられます。
また、自動更新規定の説明について正しい説明をしていなければ詐欺により契約を取り消すことも考えられます。
4.おわりに
冒頭で述べたとおり、近年人材不足である旨の経営上ご相談も耳にするところではありますが、このような窮状につけこんだこの問題は、非常に悪質であると言っていいと思います。
千葉県を含め全国で中小企業を中心に頻発しているようですので、くれぐれもお気を付けください。そして、会社として契約(契約の申込みも含みます)をする際には、その内容について十分にご検討いただき、少しでも疑問な点があれば弁護士にご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。