企業の災害対策

2019年3月11日で東日本大震災から8年が経過しました。8年経った現在も復興に向けた課題が山積みであると報道を通じて改めて実感しました。

本日は、地震と同じく日本において発生しやすい災害と言われる火災について、企業様が知っておくべき「失火責任法」のルールをご紹介します。

1.失火責任法って何?

火災について定めた重要な法律として失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)があります。

失火責任法は、明治32年に定められた法律で、「民法第七百九条 ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定されています。

そして、民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

簡単に言うと、失火責任法には、失火(過失から火事を起こした)の場合、失火者に重大な過失がなければ民法709条の適用はなく、失火者は責任を負わないことが明記されています。

2.火事によって被害を受けた場合

では隣のビルの会社が火事を起こして、それがこちらの会社に燃え移り、会社が全焼した場合、その損害賠償はどうなるのでしょうか。

この場合、失火責任法によると隣のビルの会社に重大な過失が認められなければ、隣の会社からは一切補償してもらえません。

ここで言う重過失とは、わずかな注意さえすれば、事故の発生を予見できた場合をいい、ほとんど故意に近い状態を指します。

したがって、相手に重大な過失が認められない限りはこちらのビルに発生した損害は自費で修繕しなければならないこととなります。

3.火事によって被害を発生させてしまった場合

では火事を発生させてしまったのが、こちら側であった場合は、どうなるでしょうか。

この場合は、重過失がない限り、相手に対する賠償の責任は負わないということになります。

しかし、重過失の認定が出れば賠償の責任を負うことに加えて、火災によって自身に発生した損害は自身で補填しなければならないことになります。

加えて、仮に火災を発生させたビルが賃貸物件であった場合は、借主に対して原状回復という形で損害の賠償をしなければなりません。

4.対策

以上のような失火責任法のルールを知ると、火災保険に加入する必要性がお分かりになるかと思います。

損害保険の賠償の範囲によっては、失火による損害のすべてをカバーできない保険もあります。

この機会に会社として加入している保険について一度ご確認いただければ幸いです。

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文責:弁護士 松本 達也

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。