最終更新日:2026年9月28日
土地を購入した後、建物の建築工事や造成工事を始めてから、地中からコンクリート片やガラ、旧建物の基礎、浄化槽などが見つかることがあります。
埋設物の種類や量によっては、撤去に多額の費用がかかり、工事の遅延や設計変更につながることもあります。
このような場合、買主は売主に対し、撤去や代金減額、損害賠償、契約解除などを求められる可能性があります。ただし、地中埋設物が見つかったからといって、必ず売主が責任を負うわけではありません。
本記事では、地中埋設物が契約不適合となる判断基準、買主が取り得る手段、免責特約や現状有姿売買の扱い、発見直後の対応について解説します。
1. 土地の埋設物トラブルで問題になる契約不適合責任
1.1 土地の「埋設物」とは
地中埋設物とは、土地の地中に存在する廃棄物や構造物、障害物などをいいます。代表例としては、次のようなものがあります。
- コンクリートガラ、アスファルト片、レンガ、瓦
- 旧建物の基礎、杭、土間コンクリート、鉄骨
- 木くず、プラスチック、金属片などの廃棄物
- 浄化槽、井戸、排水管、水道管
- 大きな庭石や岩
地表からは確認できず、引渡し後の掘削工事で初めて発見されるケースも少なくありません。
もっとも、地中に何らかの物が存在するだけで直ちに法的な問題になるわけではありません。重要なのは、その埋設物によって、売買契約で予定されていた土地の利用に支障が生じるかどうかです。
1.2 契約不適合責任とは
民法では、売買の目的物が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」場合、買主は売主に対して一定の責任を追及できます。これを契約不適合責任といいます。
土地の売買の場合も、単に土地に欠陥があるかではなく、当事者がどのような土地を売買することを合意していたか、土地の状態がその合意内容に適合しているかどうかが重要になります。
たとえば、戸建住宅や事業用建物の建築、宅地造成などを目的として購入した土地に、その利用を妨げる大量のコンクリートガラが埋まっていた場合には、契約不適合となる可能性があります。
一方、契約時に埋設物の存在が具体的に説明され、買主もそれを了承して購入していた場合には、その存在自体を契約不適合と評価することは困難です。
1.3 埋設物が「契約不適合」とみなされる判断基準
地中埋設物が契約不適合に当たるかどうかは、主に次の事情を踏まえて判断します。
- 土地を購入した目的
- 売買契約書、重要事項説明書、物件状況報告書などの記載
- 埋設物の種類、量、大きさ、深さ
- 建築や造成工事への影響
- 撤去の必要性と費用
- 土地の従前の利用状況
- 売主・買主が契約時に認識していた事情
- 産業廃棄物その他の廃棄物
裁判例でも、土地上に建物を建築する際に支障となる質・量の異物が存在し、通常予想される地盤整備の程度を超える特別な除去工事が必要となる場合には、土地の瑕疵(欠落)になり得るとの考え方が示されています(大阪高等裁判所平成25年7月12日判決)。
このように、地中埋設物が契約不適合に当たるかは、埋設物の有無だけでなく、契約内容や埋設物の種類・量、予定していた土地利用への影響などを踏まえて判断する必要があります。
また、買主としては、「住宅を建築する」「事業用建物を建築する」など、予定している土地の利用目的を契約締結前に売主へ伝え、できれば売買契約書や特約などにも明記しておくことが望ましいでしょう。
利用目的が契約上明確になっていれば、埋設物がその利用を妨げる場合に、契約不適合に当たるかを判断する際の重要な事情となります。

2. 買主が売主に対して請求できる4つの追及方法
契約不適合が認められる場合、買主が取り得る主な手段は次の4つです。
| 手段 | 主な内容 |
|---|---|
| 追完請求 | 売主に埋設物の撤去などを求める |
| 代金減額請求 | 不適合の程度に応じて売買代金を減額する |
| 損害賠償請求 | 撤去費用や工事遅延による損害などを請求する |
| 契約解除 | 一定の場合に売買契約そのものを解除する |
それぞれ要件が異なるため、事案に応じた選択が必要です。
2.1 追完請求|売主に埋設物の撤去を求める
買主は、引き渡された土地が契約内容に適合しない場合、売主に対して履行の追完(契約内容通りの完全な状態にすること)を請求できます(民法562条 )。追完請求は、原則として売主の故意・過失を必要としません。
地中埋設物の事案では、売主の負担で埋設物を撤去し、契約で予定された用途に利用できる状態にするよう求めることになります。
2.2 代金減額請求
埋設物によって土地が契約内容に適合しない場合、買主は売買代金の減額を請求できることがあります(民法563条 )。代金減額請求は、原則として売主の故意・過失を必要としません。
原則として、まず売主に相当の期間を定めて追完を求め、それでも対応しない場合に、不適合の程度に応じた代金減額を請求します。ただし、撤去が不可能な場合や、売主が明確に追完を拒絶している場合などには、催告(事前に要求すること)をせずに請求できることもあります。
なお、減額額が当然に撤去費用と同額になるわけではありません。不適合によって土地の価値がどの程度低下しているかなどを踏まえて判断されます。
2.3 損害賠償請求|撤去費用や工事遅延損害を請求する
契約不適合によって損害が生じた場合、買主は売主に損害賠償を請求できる可能性があります(民法564条 、415条 )。
対象となり得る費用には、たとえば次のようなものがあります。
- 埋設物の調査費用
- 掘削、撤去、運搬、処分費用
- 地盤改良や追加工事の費用
- 設計変更費用
- 工事遅延に伴う追加費用
ただし、発生した費用がすべて賠償対象になるわけではありません。契約不適合との因果関係や、費用の必要性・相当性が問題になります。また、営業損失などの特別な損害については、売主がその事情を予見し、または予見すべきであったかどうかも重要です。
買主が売主に連絡せずに埋設物を撤去し、後から撤去費用を損害として請求した場合には、撤去の必要性や範囲、費用の相当性などが争われることがあります。そのため、緊急の場合を除き、撤去前に売主へ通知し、現地確認や対応の機会を設けることが望ましいでしょう。
さらに、損害賠償は、契約や取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰すことができない事情(売主に落ち度がないと言える事情)による場合には認められません。これに対し、追完請求や代金減額請求は、原則として売主の故意・過失を必要としません。
2.4 契約解除|重大な埋設物がある場合
地中埋設物の問題が重大な場合には、売買契約を解除できる可能性があります(民法564条 、541条 、542条 )。
原則として、売主に相当の期間を定めて履行を求め、それでも対応がなされない場合に解除を検討します。ただし、撤去が不可能な場合や、売主が履行を明確に拒絶している場合などには、催告をせずにすぐに解除できることもあります。
なお、契約不適合が軽微な場合には解除できません。少量のガラがあり、比較的容易に撤去できる程度であれば、契約全体の解除までは認められにくいでしょう。
反対に、大量の産業廃棄物や大規模な旧建物基礎が存在し、予定していた建物を建築できないなど、契約目的に重大な支障がある場合には、解除が認められる可能性が高まります。
3. 売主の責任を左右する特約・当事者・期間制限
3.1 「契約不適合責任を負わない」とする免責特約がある場合
民法上の契約不適合責任は、原則として当事者間の特約で修正できます。
そのため、「売主は契約不適合責任を負わない」「地中埋設物について責任を負わない」といった免責特約があれば、買主からの責任追及が制限されることがあります。
ただし、免責特約があっても常に有効とは限りません。売主が知りながら告げなかった事実については免責されず、売主が宅建業者である場合や、事業者と消費者との契約では、宅建業法や消費者契約法による制限も問題になります。
3.2 「現状有姿(現況有姿)」と書かれている場合
不動産売買契約では、「現状有姿で引き渡す」と定められていることがあります。
しかし、この記載だけで売主の契約不適合責任がすべて免除されるとは限りません。一般に、現状有姿の条項は「現在の状態のまま引き渡すこと」を定めたものと理解され、契約不適合責任そのものを免除するには、より明確な特約が必要と考えられます。
もっとも、契約時に埋設物の存在を具体的に説明され、買主が了承していた場合には、その状態が契約内容となるため、後から契約不適合を主張することは難しくなります。
3.3 売主が埋設物を知りながら告げなかった場合
売買契約に免責特約があったとしても、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、売主は契約不適合責任を免れることができません(民法572条 )。
たとえば、過去の解体工事で大量のコンクリートガラが埋められたことを売主が知っていたにもかかわらず説明しなかった場合です。
また、重要な事実を認識しながら説明しなかった場合には、契約不適合責任とは別に、説明義務違反に基づく損害賠償責任などが問題になることもあります。
3.4 売主が宅建業者・買主が消費者の場合
売主が宅地建物取引業者で、自ら売主として宅地を販売する場合には、宅建業法40条 による特約の制限があります。
買主が宅建業者ではない場合、売主である宅建業者は、原則として民法より買主に不利となる特約を定めることができません。
契約不適合について売主へ通知する期間を、引渡しの日から2年以上とする特約は認められていますが、「契約不適合責任を一切負わない」とするような特約は原則として無効です。
なお、この規制は買主が一般消費者の場合に限らず、宅建業者ではない法人にも適用されます。宅建業者同士の売買には適用されません。
また、売主が事業者、買主が消費者である場合には、消費者契約法により、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項などが無効となる場合があります。
3.5 売主への責任追及の期限
地中埋設物を発見した場合、責任追及の期限には注意が必要です。
種類または品質に関する契約不適合について、買主が不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知しなければ、原則として追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除ができなくなります(民法566条 )。ただし、引渡し時に売主が契約不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合には、この制限は適用されません。
加えて、通常の消滅時効も適用されます。原則として、買主が不適合を知ったときから5年、または土地の引渡しから10年のいずれか早い時点で時効が完成します。
また、双方が商人である売買では、商法526条 により買主に検査・通知義務が課されます。直ちに発見できない種類・品質の不適合についても、6か月以内に発見した場合には直ちに売主へ通知する必要があります。不動産業者など事業者間の取引では、発見後の対応を特に急ぐ必要があります。ただし、売主が契約不適合を知っていた場合には、この商法上の制限は適用されません。

4. 埋設物が発見された直後の正しい初動対応
4.1 写真・動画・位置情報の記録と証拠保全
埋設物が見つかったら、撤去する前に証拠を残しましょう。
埋設物の種類、大きさ、数量、深さが分かる写真や動画を撮影し、土地全体のどの位置から出たのかも図面などに記録します。可能であれば、工事業者に発見したときの状況や埋設物の内容を記載した報告書を作成してもらうとよいでしょう。
撤去後には現物を確認できなくなるため、最初の証拠保全が重要です。
4.2 埋設物の範囲・撤去の必要性・工事への影響を確認
次に、埋設物がどの範囲に存在し、予定する建築や造成にどのような影響を与えるのかを確認します。
必要に応じて試掘などの追加調査を行い、撤去が必要な範囲、撤去後の埋戻しや地盤改良の必要性、工事日程への影響を整理します。
契約不適合に当たるかどうかや損害額を判断するためには、「何が埋まっているか」だけでなく、「土地利用にどの程度支障があるか」を把握することが重要です。
4.3 売主・仲介業者へ速やかに通知
埋設物を発見したら、売主と仲介業者へ速やかに連絡しましょう。発見した埋設物の種類、場所、おおよその範囲、工事への影響などを伝えます。
後から「通知を受けていない」「撤去前に確認する機会がなかった」と争われないよう、メールや書面など記録が残る方法で通知することをおすすめします。売主の立会いによる現地確認を求めることも有効です。
4.4 撤去費用の見積もりを取って弁護士へ相談
売主へ費用を請求する場合には、その金額が合理的であることを説明できるようにする必要があります。撤去工事、廃棄物処分、埋戻し、地盤改良などを項目ごとに分けた見積書を取得しましょう。金額が大きい場合には、複数の業者から見積もり(相見積もり)を取る方法もあります。
契約書に免責特約がある、工事を止められない、売主が責任を否定しているといった場合には、自己判断で撤去を進める前に弁護士へ相談することをおすすめします。
5. よくあるご質問(FAQ)
5.1 「現状有姿での引き渡し」と契約書にあったら、撤去費用はすべて自己負担ですか?
いいえ。「現状有姿での引き渡し」と記載されているだけで、当然に契約不適合責任がすべて免除されるわけではありません。
ただし、別途、地中埋設物を含む契約不適合責任を免除する明確な特約がある場合や、埋設物について事前に説明を受けて了承していた場合には、結論が変わります。
5.2 売主が宅建業者の場合、免責特約は有効ですか?
買主が宅建業者でない場合、宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買では、民法より買主に不利な契約不適合責任の特約は、宅建業法40条 により原則として認められません。
そのため、「売主は契約不適合責任を一切負わない」のような特約は原則として無効です。
5.3 売主が埋設物の存在を知らなかった場合でも責任を負いますか?
売主が埋設物の存在を知らなかったとしても、それだけで当然に責任を免れるわけではありません。
免責特約がなく、各請求の要件を満たす場合には、追完請求や代金減額請求、契約解除は、原則として売主の故意・過失がなくても認められ得ます。
一方、損害賠償については、売主の責めに帰すことができない事情による場合には認められません。
5.4 買主側が事前に地盤調査をしていなかった場合、過失を問われますか?
事前に地盤調査を行っていなかったことだけで、直ちに買主の過失となるわけではありません。また、一般的な地盤調査は地盤の強度などを確認するもので、すべての地中埋設物の有無を確認するものではありません。
もっとも、過去の土地利用などから埋設物の存在が具体的に疑われる事情があったのに、何ら確認をしなかった場合には、損害賠償の場面で買主側の事情が考慮される可能性があります。
6. まとめ:土地の埋設物トラブルで悩んだら早めに弁護士に相談
地中埋設物のトラブルでは、土地の利用目的、埋設物の種類や量、契約書の内容、免責特約、売主の認識、通知時期などによって結論が変わります。また、撤去を急ぐあまり証拠が失われたり、費用の相当性を争われたりすることもあります。
地中埋設物が見つかり、撤去費用や損害賠償の請求、契約解除を検討している場合には、早い段階で不動産トラブルに詳しい弁護士へご相談ください。





