最終更新日:2026年9月25日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 鎌田大将

身元保証書とは、企業が従業員を雇い入れる際に、第三者から提出を受ける書類です。

従業員が企業に損害を生じさせた場合に、その損害の賠償を本人だけでなく、身元保証人にも請求できるようにするためのものです。

本記事では、中小企業の経営者や責任者の方に向けて、身元保証書について押さえるべきポイント、円滑に提出をしてもらうための工夫、そして弁護士に相談すべきタイミングについて、わかりやすく解説します。

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1. 身元保証書とは

身元保証書とは、従業員が企業に損害を与えた場合に、その損害の賠償を本人だけでなく、身元保証人に対しても請求できるようにするための書類です。

1.1 身元保証書を作成する目的

身元保証書を作成しておけば、従業員による金銭の横領や機密情報の持ち出しといった トラブルが発生した際、本人だけでなく身元保証人に対しても損害の賠償を求めることができます。

また、身元保証書の作成を求めることを通じて、本人が従業員としての適格性を有することを事実上確認するという意味もあります。

1.2 身元保証書の提出を強制はできない

身元保証書を提出しないといけないという法律はないため、提出を強制することはできません。

そのため、就業規則によって身元保証書の提出を義務付け、提出がない場合には解雇または内定取り消しになると規定しておくことが1つの方法です。ただし、ただし、身元保証書の未提出だけを理由とした内定取り消しや解雇は、裁判で無効と判断されるリスクが高いです。

2. 身元保証書に記載する事項

身元保証書には、①身元保証をすること、②保証期間、③損害賠償の極度額、④身元保証人に対する通知の方法を記載します。

2.1 身元保証をすること

提出者が身元保証をする旨を記載します。また、その内容として身元保証人の責任がどのような場合に発生するかを記載します。

2.2 保証期間

身元保証に関する法律2条1項 により、身元保証の期間は作成日から5年を超えることはできないとされています。そのため、実務上の保証期間は5年とすることが多いです。

2.3 損害賠償の上限額(極度額)

身元保証書においては上限額(極度額)を設定することが必要です。極度額を定めない身元保証書は無効になってしまう(民法465条の2第2項 )ため、記載が不可欠です。

2.4 身元保証人に対する通知の方法

企業は一定の場合に、身元保証人に遅滞なく通知をする義務を負います(身元保証に関する法律3条 )。その際の通知の方法を明記しておく方法もあります。具体的には郵便やメールが考えられます。

3. 身元保証書のひな型

身元保証書のひな型は次のとおりです。

身元保証書

株式会社○○ 御中

身元保証人(以下、「甲」という)は、貴社がその業務のため雇用する従業員(以下、「乙」という)について、以下のとおり身元保証いたします。

(身元保証)

第1条 乙が貴社在職中または貴社退職後に、その雇用契約上の義務に違反し、または故意もしくは過失によって貴社に損害を被らせたときは、金○○○万円を限度として、甲は乙と連帯保証して、貴社に対し、その損害を賠償します。

(身元保証期間)

第2条 この身元保証期間は、本書の作成日から5年間とし、乙が貴社に在職中に身元保証の期間が終了するとき、または乙の異動、昇進、出向等に関して貴社から求められたときは、甲及び乙はすみやかに身元保証書を貴社に再提出いたします。

(通知)

第3条 本書に係る貴社の乙に対する通知は、本書末尾記載の住所宛の郵便にて行うようお願いいたします。

令和○年○月○日

甲(身元保証人)

住所

氏名印

勤務先

乙との関係

連絡先電話番号

乙(従業員)

住所

氏名印

4. 身元保証書の注意点

身元保証書に関しては、注意すべき点がいくつかあります。

4.1 身元保証人になれる人を決める

企業側は身元保証人になる人の条件について自由に設定することができます。身元保証を有効に機能させるためには、適切な条件の設定が欠かせません。

金銭の賠償を適切に行えるかを念頭に置き「経済的に独立した」との要件を加えたり、企業に最終判断権を留保すべく「会社が適当と認めた者」としたりすることが考えられます。

4.2 代筆でないかチェックする

代筆で作成した身元保証書には効果はありません。

保証人本人が捺印したことを確認するためには、実印で捺印してもらった上、保証人の印鑑証明書を添付してもらうと確実性が高まります。

4.3 更新手続きを適正に行う

身元保証書の自動更新は基本的に認められません。

そのため、身元保証の期間を5年とした場合には、身元保証書を作成してから5年が経つまでの間に、身元保証人と新たに契約を締結する必要があります。

4.4 身元保証人への通知を行う

身元保証に関する法律3条 により、企業は次の場合に、身元保証人に遅滞なく通知をする義務を負います。

  1. ① 本人に業務上、不適任または不誠実な事跡があって、そのため身元保証人に責任を生ずるおそれがあることを知ったとき
  2. ② 本人の任務が変更されたことにより、身元保証人の責任が重いものとなるとき
  3. ③ 本人の勤務地が変更されたことにより、本人に対する監督が困難になるとき

このような通知を怠った場合、従業員の行為により企業に損害が生じたとしても、身元保証人に賠償を求めることができない可能性があるため、注意が必要です。

4.5 身元保証人への請求は全額認められないケースが多い

身元保証に関する法律5条 は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるにあたっては、次の事情を考慮するとしています。

  1. ① 被用者の監督に関する使用者の過失の有無
  2. ② 身元保証人が身元保証をなすに至った事由
  3. ③ これをなすにあたって用いた注意の程度
  4. ④ 被用者の任務又は心情の変化
  5. ⑤ その他一切の事情

過去の裁判例では、身元保証人の責任が制限されたケースが多いです。そのため、従業員の行為によって企業に損害が生じたとしても、身元保証人に全額の損害賠償を請求できる可能性は低いです。

5. よくあるご質問

身元保証書に関してよくあるご質問について回答いたします。

5.1 身元保証書の提出を拒否された場合の対応は?

身元保証書の提出を強制することはできません。提出を拒否されてしまった場合には、内定前と内定後によって異なる対応をする必要があります。

5.1.1 内定前の場合の対応

内定前に身元保証書を求めて拒否された場合、内定を出さないという対応が考えられます。

5.1.2 内定後の場合の対応

内定後に身元保証書を求めて拒否された場合、それだけを理由に内定取り消しや解雇をすることは難しいです。就業規則において身元保証書の提出義務を明確に定め、従業員に対して、その理由を十分に説明しておく必要があります。

その上で、度重なる要請に応じず必要書類を提出しない場合には、従業員としての適格性の欠如や業務への支障を理由に内定取り消しや解雇を検討することになります。

ただし、内定取り消しや解雇の要件は厳しいため、安易に行うと無効になる可能性が高いでしょう。慎重な対応が求められるため、必要に応じて弁護士に相談しましょう。

5.2 期間が書いていない身元保証書の有効期限は?

期間が書いていない身元保証書の有効期限は3年です(身元保証に関する法律1条 )。ただし、最長期間は5年であることから、期間は5年と定めることが多いです。

5.3 5年を超える期間が書いてある身元保証書の有効期限は?

身元保証期間の最長期間は5年であり、5年を超える期間が書いてある身元保証書の有効期限は自動的に5年となります(身元保証に関する法律2条1項 )。

5.4 自動更新条項を入れても5年ごとの再作成は必要?

身元保証書については自動更新は認められないとした裁判例が多いです。

そのため、たとえ自動更新条項を入れたとしても、身元保証書の作成から5年が経つまでの間に再作成することが実務上は必要です。

5.5 上限額の記載のない身元保証書の効果は?

保証人の責任の上限額すなわち極度額を設定することが必要です。上限額の記載のない身元保証書は無効となります(民法465条の2第2項 )。

5.6 身元保証書が必要であることを伝える時期は?

内定後に伝えて提出を拒否された場合、内定取り消しや解雇のハードルは高いです。また、従業員とのトラブルが発生する確率が上がります。

そのため、身元保証書が必要であることは、内定前から伝えておくことが望ましいでしょう。

5.7 身元保証書と身元証明書の違いは?

身元保証書は、従業員が企業に損害を与えた場合に、その損害の賠償を本人だけでなく、身元保証人に対しても請求できるようにするための書類です。

一方、身元証明書は本籍地のある市区町村で発行されるものであり、破産の有無などを証明する書類です。

6. まとめ:悩んだら弁護士にまずは相談

社員を採用する際、身元保証書の提出を求めることは、企業が不測の損害を防ぐために重要です。

しかし、有効期間の制限や損害賠償の上限額(極度額)の設定など、法律に基づいた適正な作成と運用が不可欠です。万が一の際に保証人に責任を問えるよう、社内ルールを整備しておきましょう。

身元保証書の作成や運用方法、本人とのトラブル等でお悩みの場合は、まずは企業法務に強い弁護士にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 鎌田大将

企業法務全般を担い、リーガルチェックや労務問題、紛争予防・対応など幅広く対応します。皆様が安心してビジネスを展開できるよう、最善の解決策を追求します。千葉県弁護士会所属(登録番号67447)。

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