第1 退職勧奨

解雇という最終手段を取らずに、会社が個々の従業員に対して、退職を促し(退職勧奨)、従業員と退職について合意することが考えられます。解雇ではない以上、労基法上の解雇規制や解雇権濫用法理(労契法16条)の規制を受けません。人員整理目的であっても、整理解雇の4要素を満たす必要はありません(ダイフク事件 大阪地判平成12・9・8労判798号44頁)。

ただし、退職勧奨も無制限に行うことができるわけではありません。従業員の任意の意思を尊重する態様で行うことを必要とします。説得の回数、手段、方法、態様等について、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨行為は、退職の意思表示が事後的に無効とされたり、取消されるおそれが生じますし、不法行為として従業員に対する損害賠償責任が生ずるおそれもあります。

また、退職金の優遇や、解決金、再就職先の支援等の退職条件を用意することで、従業員に合意を促すことも考えられます。

第2 有期雇用契約の更新拒絶(雇止め)

有期雇用契約であれば、本来は期間満了により雇用契約は当然に終了します。解雇権濫用法理が適用される余地はありません。有期雇用契約を締結すれば、解雇の問題は生じないのでしょうか。

判例は、一定の場合に解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めが許されないと判断された場合、従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係が継続するとしました。そして現在は、労働契約法改正により、以下の雇止めの法理が法定されました。

  1. 有期契約労働者が契約更新の申し込みをした場合、又は、期間満了後遅滞なく有期労働契約の申し込みをした場合
  2. 過去に反復して更新されたものであって、雇止めをすることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められること(1号)又は有期労働契約の契約期間満了時に、当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められること(2号)
  3. 使用者が当該申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすと規定されています(労働契約法19条)。

これらは、仕事の内容が臨時的補助的かそれとも基幹的か、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理状況、雇用継続を期待させる言動や制度の有無、雇用継続の期待の相当性などから判断することとなります。よって、各要件に該当するか、慎重に判断する必要があります。