訴訟について
1 制度
裁判所が、争いになっている権利について、証拠等に基づき判決を下す制度です。民事訴訟法に手続きが定められています。
2 手続概要
裁判所が、「法律上の争訟」、すなわち法律によって解決することができる権利をめぐる紛争を裁判により解決します。
裁判は、原告が訴状を裁判所に提出することにより開始されます。事件は、公開の法廷で審理されます。法廷では、当事者が作成した書類(訴状、答弁書、準備書面)等によって主張を述べ、証人尋問等の証拠調べも行われます。訴訟の終了は、裁判所による判決だけでなく、当事者による訴えの取下げや和解によることもあります。
また、訴訟による権利実現を保全するために、裁判所が一定の仮の措置をとる仮処分が申立てられることもあります。仮処分命令が認められるためには、「被保全権利の存在」と「保全の必要性」が必要となります。仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋期日を経て命じられることになります。
3 メリット
- 和解が出来ず判決に至った場合、裁判所により強制力を持つ判断がなされます。
4 デメリット
- 長期化の可能性があります。
- 金銭的負担、精神的負担が大きくなります。
- 和解が出来ず判決に至った場合、判決による硬直的な判断がなされることになります。
- 公開の法廷で手続きが進むこととなるため、非公開にしたい事実が公開されてしまうことがあります
労働訴訟をおこされたら
地位確認請求とは、従業員が雇い主より解雇された場合、解雇が無効で従業員の地位が存在することを確認し、給料の支払い等を求める訴えのことです。
(1)労働訴訟をおこされたら
原告と被告との間において主張(言い分)が相互になされ、それに伴い必要な書証の調べがなされ、その後証人尋問がなされます。
それと並行するか、証人尋問の後辺りに和解の話合いが裁判所を介してなされるのが一般です。会社の対応としては、勝てる十分な見込みがあるなら判決を求めるのがよいと思われますが、それ以外の場合は、和解に応じるかあくまで判決を求めるかのいずれかになります。
和解に応じるにしても、会社の信用が失墜しないような和解を工夫する必要があります。
なお、判決で会社側が敗訴すると、控訴しても被控訴人(元従業員)は強気になり、1審より会社に有利な和解をするのは難しくなりがちですから、勝訴の確信がない限り判決を求めるか否かについて慎重な判断が求められます。
労働訴訟の対応については、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
(2)労働訴訟の争点
労働訴訟において、解雇の方法によって下記のようなポイントが争点になりがちです。
懲戒解雇の場合
懲戒処分が有効となるには、
- ①就業規則に懲戒処分の規定が存在すること
- ②懲戒事由に該当すること
- ③懲戒処分が社会通念上相当
であることが必要です。これらが主として争われます。
普通解雇の場合
使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金の支払いをしなければなりません。これがなされているかが争点となる場合があります。また、解雇は社会通念上相当でなければなりませんので、それが問題となります。
整理解雇の場合
整理解雇が有効となるには、①人員削減の必要性、②整理解雇を選択することの必要性、③被解雇者選択の妥当性、④手続きの妥当性(従業員への十分な説明がなされたかなど)が検討要素となります。