最終更新日:2026年7月21日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 加藤貴紀

近年、SNSは企業の情報発信に欠かせないツールになりました。一方で、不適切な投稿が一気に拡散する「炎上」が起きると、長年積み上げた信用が一夜にして崩れることもありえます。

炎上はどの企業にでも起こり得ますが、事前のルール整備と従業員教育、そして万が一の初動対応の備えがあれば、被害を最小限に抑えることが可能です。

この記事では、企業が知っておくべきSNS炎上の事例、原因、初動対応、削除や発信者特定の方法、そして再発防止策までをわかりやすく解説します。

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1. SNS炎上とは?企業が知るべき基礎知識

SNS炎上は、企業の経営を揺るがす重大なリスクの1つです。まずは、その全体像を整理しましょう。

1.1 SNS炎上の定義と種類

SNS炎上とは、インターネット上の投稿に対して批判や非難が殺到し、収拾がつかない状態に陥る現象をいいます。

X(旧Twitter)やInstagram、TikTok、Facebook、LINE、YouTube、Googleマップの口コミなど、いまや炎上の発火点はあらゆるプラットフォームに広がっています。投稿の形も、文字や画像、動画、ライブ配信、位置情報と多様です。

企業に関わる炎上は、誰の発信から始まるかによって大きく2つに分かれます。

  1. 企業の公式アカウントからの発信
  2. 従業員個人のアカウントからの発信

どちらの経路であっても、いったん拡散が始まれば、投稿者の所属する企業名と結びつけられます。企業の管理が及ばないところで投稿された内容でも、結局は会社のリスクとして跳ね返ってくるのです。

1.2 なぜ企業の炎上は拡大するのか

企業の炎上が大きく広がりやすい理由は、大きく3つに整理できます。

1つ目は、所属企業の特定が容易な点です。プロフィールや過去の投稿、制服や店内の映り込み、さらには本人の交友関係から、勤務先は短時間で割り出されます。「個人特定班」と呼ばれるネットユーザーの動きは、想像以上に速く、執拗です。

2つ目は、批判の対象が「会社の姿勢」に向けられる点です。投稿の内容そのものより、「会社はどう責任を取るのか」「再発防止策は」と矛先が変わり、企業の対応が新たな関心事になります。論点が増えるほど、炎上は長引きます。

3つ目は、関係者が多く、被害が連鎖しやすい点です。取引先や株主、顧客、求職者、従業員といった、炎上の影響を受けるステークホルダーが幅広いため、不買運動や取引停止、株価下落、内定辞退といった形で、二次的・三次的な広がりが生まれます。

2. SNS炎上事例(企業・従業員)

SNS炎上は、現在も多くの企業で発生しています。代表的な4つの類型を、具体的な事例とともに見ていきましょう。

2.1 従業員による不適切投稿(バイトテロ)

店舗の厨房やバックヤードで撮影された悪ふざけ動画が、SNSで急速に拡散するケースです。飲食店やコンビニ、アパレル、映画館など、業種を問わず発生しています。

企業が倒産にまで至ったのは、2013年8月の「多摩大学生バイトテロ事件」です。東京都多摩市のそば屋の厨房でアルバイトが不衛生な行為をして、その画像をTwitter(現X)に投稿し、炎上しました。その後、そば屋は閉店を余儀なくされました。

2.2 情報漏洩・内部告発型の炎上

会社の機密情報や取引先情報、未発表の新商品情報、人事情報などを、従業員が不用意に投稿してしまうケースです。

代表的な事例が、2026年4月に発覚した「西日本シティ銀行BeReal投稿事件」です。同行下関支店の行員が、SNSアプリ「BeReal」を使って執務室内を撮影・投稿したところ、画像が他のSNSへ転載され、Xで急速に拡散されました。映り込んでいたホワイトボードには、業績目標の数値や顧客の氏名が記載されており、PC画面やデスク上の書類も写り込んでいました。

同行は4月30日に公式発表で謝罪し、対象顧客への個別謝罪を行うとしています。

BeRealは、1日1回届く通知から2分以内に撮影・投稿することを促す若年層向けSNSです。「あらかじめ撮影した写真を選べない」「通知が来た瞬間の状況をそのまま共有する」という設計のため、業務中に深く考えないまま投稿してしまうリスクがあります。

2.3 企業公式アカウントの炎上

企業を代表する公式アカウントでありながら、運用担当者個人の感情やパーソナルな言葉遣いがにじむ投稿をしてしまい、炎上の起点となるケースです。

象徴的な事例が、2024年12月に発生した「タビオ 靴下屋公式X炎上事件」です。「破れないストッキングは技術的に作れるが、買わせるためにあえて作っていない」という旨のXユーザーの投稿に対し、靴下屋の公式アカウントが「何回も言うけど、『破れないストッキング』は都市伝説、陰謀論の領域です。作れるんなら作ってます」「そんな繊維でストッキングとか靴下作ったら、指飛ぶで?」など、口調を強めた反論を複数回投稿しました。

これに対し「高圧的」「企業の公式アカウントとして失礼」といった批判が殺到しました。

タビオは3日後の12月16日、代表取締役名義で「ガイドラインに反して、不適切な表現が含まれた投稿をしていることが確認されました」と謝罪し、ソーシャルメディアガイドラインの遵守と社員教育の強化を表明する事態となりました。

2.4 顧客・取引先への不適切発言

従業員がSNS上で、特定の顧客や取引先に対し、容姿や人格を侮辱したり、配慮を欠いた発言をしたりして炎上に至るケースです。

代表的な事例が、2011年5月の「アディダスジャパン社員による契約選手中傷事件」です。同社「パフォーマンスセンター銀座店」に勤務する女性社員が、来店した自社契約選手とその同行女性(後に妻と判明)の容姿について、個人のTwitter(現X)アカウントで誹謗中傷する内容を投稿しました。

投稿が掲示板に転載されて拡散し、社員の個人情報まで特定される炎上に発展しました。

同社は翌日「お詫びとご報告」を公表し、「スポーツブランドとしてあるまじき事であり、この事態を厳粛に受け止め、このようなことが繰り返されないよう、社を挙げて再発防止を徹底してまいります」と発表しました。契約選手と所属チームへの個別謝罪、社員への厳正処分、ソーシャルメディアガイドラインの見直しを発表する事態となりました。

3. 従業員のSNS利用に潜むリスク

今や従業員のSNS利用は、個人の問題では片づけられないものになりつつあります。会社が直面する代表的なリスクは、大きく3つあります。

3.1 情報漏洩リスク

従業員のSNS投稿により、会社が保有する顧客の個人情報や、社内の機密情報・取引先情報が外部に流出してしまうリスクです。

オフィスの机の上に置かれた書類、商談に向かう途中で撮った写真の背景、社員食堂での会話の動画など、何気ない投稿のすみに、機密情報や顧客のプライバシーが映り込んでいることは、決して珍しくありません。

いったん流出した情報は、回収がほぼ不可能です。取引先からの信頼を失うだけでなく、事案の内容によっては、個人情報保護委員会への報告や本人通知、行政上の指導・命令、損害賠償請求などの問題に発展するおそれもあります。

3.2 企業の信用毀損リスク

従業員の不適切な投稿により、会社のブランドイメージや社会的評価が低下し、売上や取引、採用活動にまで悪影響が及ぶリスクです。

不適切な投稿が拡散すると、不買運動や取引停止、株価下落といった形で経営に直接の打撃を与えます。

採用面の影響も大きく、応募者数の減少や内定辞退の増加につながりかねません。在籍する従業員の士気が下がれば、優秀な人材から順に転職を検討し始めるでしょう。

一度ついたネガティブなイメージは、検索結果に長く残り、回復には数年単位の努力が必要になります。

3.3 法的責任(使用者責任など)

従業員のSNS投稿によって第三者に損害が生じた場合に、投稿した本人だけでなく、雇用主である会社も法的な賠償責任を問われるリスクです。

従業員が業務に関連してSNSで他人に損害を与えた場合、会社は使用者責任(民法715条 )を問われることがあります。

使用者責任とは、従業員が会社の業務を行う中で他人に損害を与えたときに、その従業員を雇用している会社も、被害者に対して賠償責任を負うという制度です。実際に行為を行ったのは従業員ですが、業務として人を使う以上、会社にも一定の責任を負ってもらうのが公平だ、という考え方に基づきます。

特に公式アカウントでの投稿は業務の一環とみなされやすく、会社が使用者責任を問われる可能性が高くなります。

プライベートのアカウントであっても、情報管理の不備などを理由に会社自身の責任(民法709条 など)が問われることも理論上はあるため、法的な争いに発展するリスクは常に存在します。

4. SNS炎上が起きる原因

SNS炎上が起きる背景には、投稿者本人の自覚の低さと、それを受け入れる企業の管理体制の不足という2つの側面があります。

4.1 従業員側の原因(リテラシー)

最大の要因は、従業員がSNSの特殊性を十分に理解していないことです。

多くの従業員は、SNSの投稿を「仲間うちの会話の延長」のように捉えています。鍵付きアカウントだから大丈夫、フォロワーは友達ばかりだから問題ないといった感覚が、思いがけない流出を招きます。スクリーンショットされて拡散されれば、鍵もフォロワー設定も意味を持ちません。

何を書けば他人の権利を侵害するのか、どこからが業務上の秘密にあたるのか、どの表現がハラスメントにあたるのか。こうした判断基準は、教えなければ身につきません。SNSリテラシーが不足していること自体が、炎上リスクを高める原因になります。

4.2 企業側の原因(教育・ルール不足)

企業側の原因は、ルールと教育の不足に集約されます。

①明文化されたSNSガイドラインがない、②研修の機会がない、③公式アカウントを担当者1人に任せきりにしている、④個人端末で公式アカウントの操作ができる、⑤緊急時の流れが決まっていない、というような積み重ねが、SNSでの誤投稿や不適切投稿を誘発します。

「うちは小さい会社だから関係ない」と考える経営者ほど、いざ炎上が起きたときに準備不足が露呈します。むしろ、組織が小さいほど1件の炎上が経営に与える打撃は大きいと考えるべきです。事前の整備を後回しにしないことが、結果として最大のコスト削減につながります。

5. SNS炎上時の初動対応

炎上が起きたあとの最初の数時間から24時間が、収束までの期間と被害規模を大きく左右するため、初動には素早さが求められます。しかし、事実確認や対応方針が固まらないまま社外への発信を急ぐと、かえって被害が広がります。

「社内では迅速に、社外への発信は冷静に」という使い分けが初動の鉄則です。

5.1 やってはいけないNG対応

炎上が起きたあとの対応で、被害を拡大させてしまう典型的なNG対応があります。それぞれが「なぜまずいのか」を理解しておくことで、緊急時の判断ミスを防げます。

① 事実確認をしないまま放置する

問題の投稿を確認した時点で、社内の誰がどう動くかが決まっていないと、その間にも拡散は続きます。

「とりあえず様子を見よう」という姿勢は、ユーザーには「会社は何もする気がない」と映り、批判を加速させる原因になります。

② 投稿を黙って削除し、隠蔽したと受け取られる

問題の投稿だけを密かに消すと、すでにスクリーンショットを取っているユーザーから「都合の悪い投稿を消した」「証拠隠滅だ」と非難されます。

削除自体は必要な場面もありますが、何も説明せずに消す行為は、火を消すどころか新たな火種を作りかねません。

③ 担当者の独断で言い訳のような釈明を出す

事実確認や経営層との合意を経ずに、現場担当者が独断で釈明を出すと、後から事実関係が違っていた、責任の所在が曖昧だった、トーンが不適切だった、といった「2回目の謝罪」を強いられる事態に陥ります。

④ 批判コメントに感情的に反応する

公式アカウントが批判コメントに対し、反論、皮肉、強い口調での返信を行うと、ユーザーから「企業の姿勢として失礼」「逆ギレだ」と批判が一気に広がります。感情的な応答は炎上の燃料になります。

場当たり的な対応は二次炎上を招きます。外部に発信する前に、社内で対応方針を固めることが先決です。

5.2 正しい対応フロー

NG対応を踏まえたうえで、初動から鎮火までの正しい流れを6つのステップに整理します。それぞれのステップで「何をするか」だけでなく「なぜ重要か」「どう実行するか」まで意識することで、二次炎上を避けながら信頼回復につなげられます。

5.2.1 ステップ1:事実関係の調査

最初に行うのは、徹底した事実確認です。誰が、いつ、どこで、何を投稿したのか、現時点でどこまで拡散しているのか、メディアが取り上げているか、関係者は誰かを、客観的な資料とともに把握します。

投稿者本人へのヒアリングを行う際は、高圧的な態度で自白を強要するのではなく、弁明の機会を十分に与えながら、客観的な事実確認に徹することが大切です。後の懲戒処分や訴訟で、調査の手続きが適正だったかが問われる場面があるためです。

5.2.2 ステップ2:社内体制の構築

事実関係の把握と並行して、対応の指揮系統を一本化します。広報、法務、人事、経営層が情報を共有し、誰が窓口になるか、どの段階で経営層の判断を仰ぐかを明確にします。問い合わせやメディア対応の窓口を一本化しておかないと、部門ごとに発信内容がぶれて、二次炎上の引き金になります。

電話やメールが殺到して通常業務が麻痺するケースもあるため、外部の弁護士などを窓口として活用することも有効です。

5.2.3 ステップ3:第一報の発信

事実関係の調査に時間がかかる場合でも、沈黙は禁物です。沈黙は「無視」「説明責任を果たさない」と受け止められ、批判を加速させます。調査の途中であっても、「現在、事実関係を厳正に調査中です。判明次第、速やかにご報告します」といった第一報を出すことで、誠実に向き合っている姿勢を示せます。

投稿の一時削除や非公開化を行う場合も、無言で消すのではなく、「現在事実確認中であり、混乱を避けるため一時的に非公開にしています」などと経緯を説明する別の投稿を添えてください。

5.2.4 ステップ4:公式見解の発表

事実関係が固まったら、公式見解を発表します。謝罪文では、何が起きたのか、なぜ起きたのか、会社としてどう受け止めているのかを明確に伝えることが大切です。

そのうえで、「管理体制に不備があった」「確認が不十分だった」など、会社としての責任を正面から受け止める姿勢を示します。さらに、「ダブルチェック体制を導入する」「全社員研修を実施する」など、具体的な再発防止策まで示すことで、誠実に対応していることが伝わります。

一方で、次のような表現は避けるべきです。

① 「不快な思いをさせて申し訳ない」型の謝罪

何が問題だったのかという事実への謝罪を避け、受け手の主観の問題にすり替える表現と受け取られます。

② 言い訳や弁解から入る

「誤解を招く表現だった」「意図と異なる」という切り出しは、自己保身と映り、反感を買います。

③ 部分的な謝罪

問題の本質を避けて些末な点だけ謝罪すると、「問題を矮小化している」と批判されます。

5.2.5 ステップ5:削除請求・社内処分

公式見解の発表と並行して、必要であれば投稿の削除請求 発信者情報開示請求 を進めます。SNS運営会社への通報、応じない場合の仮処分申立てといった手続きは、専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼するのが現実的です。

社内処分は、就業規則に基づき、問題の投稿をした従業員に弁明の機会を与えたうえで慎重に判断します。世間の感情に流されて性急に重い処分を下すと、後に処分無効と争われるリスクがあります。

5.2.6 ステップ6:再発防止策の実行と公表

公式見解の発表は、ゴールではなくスタートです。発表した再発防止策を実際に実行し、進捗を社内外に伝え続けることが、世論の沈静化と信頼回復を分ける分岐点になります。

SNSガイドラインの見直し、研修の強化、モニタリング体制の整備を着実に進め、一定期間後に「対応の経過と現在の取組み」を改めて開示する企業姿勢が、長期的なブランド回復につながります。

6. 投稿削除・発信者特定の方法

炎上を起こす側にいた企業が、一転して被害を受ける側に回ることもあります。企業の公式SNSや従業員のSNSが原因で炎上が起きた結果、事件が拡散して批判が殺到する過程で、第三者からの誹謗中傷が二次的に発生することは少なくありません。

事実無根の悪評、根拠のない低評価口コミに加えて、関係する従業員個人が特定され、SNSで実名や顔写真をさらされる、自宅住所や家族構成まで投稿されるといった悪質な投稿が、炎上の余波として連鎖的に発生します。

投稿が、名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害に該当する場合は、SNS事業者への削除依頼や、発信者情報開示請求といった法的な手続きで対処する必要があります。ここでは、それぞれの概要を解説します。

6.1 削除依頼の方法(SNS・口コミサイト)

第三者の投稿が名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害に該当する場合、SNS事業者やプロバイダに対して、投稿の削除(送信防止措置)を依頼できます。

削除依頼には、各SNSの通報フォームを使う方法、送信防止措置依頼書を事業者に送付する方法、裁判所に仮処分を申し立てる方法があります。

情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)の施行により、大規模プラットフォーム事業者には、削除申出窓口の整備や判断結果の通知など、削除対応の迅速化・透明化に関する義務が課されるようになりました。

具体的な手続きの流れや各SNSへの対応方法については、よつば総合法律事務所の解説ページもあわせてご覧ください。

6.2 発信者情報開示請求の流れ

匿名で投稿した第三者を特定したいときは、発信者情報開示請求の手続きを使います。

開示の対象になり得る情報には、投稿者の氏名や住所、メールアドレス、電話番号、IPアドレスなどがあります。ただし、実際にどの情報の開示を請求できる(あるいは開示を受けられる)かは、投稿先のサービスや事業者が保有しているログの内容によって異なります。

また、通信記録の保存期間には限りがあり、対応が遅れると特定が困難になります。具体的な手続きの流れについては、よつば総合法律事務所の解説ページをご覧ください。

7. SNS炎上を防ぐための企業対策

SNS炎上の多くは、平時からの備えで未然に防ぐことができます。発生してしまった場合の被害規模も、事前の対策の有無で大きく変わるものです。

7.1 SNSポリシー・ガイドラインの整備

最初に取り組むべきは、SNSポリシー・ガイドラインの策定です。これらは、企業がSNSを利用する際の基本方針や、従業員が守るべき具体的なルールを文書化したものです。

公式アカウントの運用ルールだけでなく、従業員の個人アカウント利用における注意点まで含めて定めておくと、炎上リスクの予防に役立ちます。

SNSポリシー・ガイドラインに盛り込むべき主な項目は、次のとおりです。

① 目的と適用範囲

何のためにルールを定めるのか、どの従業員(正社員・契約社員・アルバイト・派遣社員など)にまで適用されるのかを明確にします。

② 発信内容についての責任の所在

投稿者本人の責任と会社の管理責任を明確化し、グレーゾーンを残さないようにします。

③ 法令・社内規程の遵守

個人情報保護法や、著作権法、不正競争防止法など、SNS投稿に関連する法令と社内ルールの遵守を明記します。

④ 機密情報・個人情報の守秘義務

顧客情報や取引先情報、未発表の商品情報など、絶対に投稿してはならない情報の範囲を具体的に示します。

⑤ 業務時間中・店舗内での撮影と投稿のルール

オフィスや店舗での私的撮影の制限、ホワイトボードや書類の映り込みへの注意点を定めます。

⑥ 個人アカウント利用上の注意点

プロフィールに勤務先を明示する場合のリスク、誤解を招く発言の回避など、業務外の発信についても基本方針を示します。

⑦ 公式アカウントの運用責任者と承認フロー

誰が投稿内容を最終承認するか、ダブルチェックの体制をどう構築するかを定めます。

⑧ 炎上発生時の緊急連絡体制

トラブル発生時に誰へ・どう報告するか、社内のエスカレーションルートを明確にします。

⑨ 違反時の処分の基準

違反内容ごとに、注意・減給・出勤停止・懲戒解雇といった処分の目安を示しておきます。

推奨事項と禁止事項を明確に分けて書き込むと、違反が起きたときに懲戒処分の根拠としても使えます。「やってはいけないこと」だけでなく、「迷ったときの判断基準」まで盛り込むのがコツです。

7.2 社内研修・教育の実施

SNSポリシー・ガイドラインは、策定しただけでは機能しません。全従業員に内容を理解・実践してもらうため、定期的な研修と教育を実施することが欠かせません。

SNSの基本的な仕組み、過去の炎上事例から学ぶリスク、自社のSNSポリシー・ガイドラインに沿った具体的な投稿ルールを、繰り返し伝える仕組みを整えましょう。

研修対象には、正社員はもちろん、契約社員、派遣社員、アルバイト、業務委託先のスタッフまで含めるのが理想です。SNS炎上は、雇用形態に関係なく発生します。むしろアルバイトや短期スタッフの方が、所属意識が薄いぶんリスクが高いとも言えます。

研修の効果を高める工夫としては、次のような方法が有効です。

  1. 実際の炎上事例を題材に、原因と影響を具体的に共有する
  2. 「自分が同じ立場ならどう動くか」をディスカッション形式で考える
  3. 年1回以上、最新の事例を加えてアップデートする

7.3 モニタリング体制の構築

SNSポリシー・ガイドラインの整備と社内研修と並んで欠かせないのが、日常的なモニタリング体制です。事前のルールづくりや教育をどれだけ徹底しても、人為的なミスや想定外の批判が起こる可能性をゼロにはできません。特に公式アカウントにおいては、投稿前と投稿後の両方で、目を光らせる仕組みが必要です。

公式アカウントの運用は、担当者1人に任せず、投稿前の複数人チェックを基本にします。表現の偏りや誤情報、ジェンダーや人種への配慮不足を、複数の目を通すことで大きく減らせます。「忙しいから1人で」というのは、炎上を呼び込むリスク要因です。

自社や自社商品に関するSNS上の言及を、定期的にチェックする仕組みも欠かせません。「炎上の芽」を早期に発見できれば、本格的な拡散の前に手を打てます。

Yahoo!リアルタイム検索やSocial Insightといったモニタリングツールを活用する方法もあります。社内リソースが限られる場合は、専門事業者へのアウトソーシングも選択肢です。

8. よくある質問(FAQ)

ここでは、SNS炎上対策についてよくいただくご質問にお答えします。

8.1 従業員の投稿は会社の責任になる?

従業員の投稿によって会社の責任が発生する可能性があります。

業務に関連した投稿であれば、使用者責任(民法715条 )として会社が連帯して損害賠償を負う場面があります。プライベートな投稿でも、SNSポリシー・ガイドラインや教育の不備があれば、会社自身の不法行為責任(民法709条 )などが問題となることも理論上はあります。

「個人の投稿だから関係ない」とは、現代の労務管理では言い切れません。むしろ、会社が日頃からSNS対策に取り組んでいたかどうかが、責任判断の分かれ目になります。

8.2 炎上したら削除すれば解決する?

削除は必要ですが、それだけでは解決しません。

すでに拡散された情報は、スクリーンショットや転載によってネット上に残り続けます。また、無断で削除したことが「隠蔽」と受け取られると、批判が再燃して二次炎上につながります。

削除と並行して、迅速な事実調査、誠実な公表、再発防止策の提示をセットで行うことが必要です。「消す」ことより「向き合う姿勢を示す」ことの方が、信頼回復につながります。

8.3 匿名でも特定できる?

自社や従業員がSNS上で第三者から誹謗中傷やプライバシー侵害の被害を受けた場合、発信者情報開示請求の手続を使えば、匿名の投稿者でも特定できる可能性があります。

ただし、この手続きを利用するためには、投稿の内容が権利侵害にあたることが客観的にはっきりしていること、損害賠償請求などのために発信者情報を必要とする正当な理由があることなど、一定の条件を満たす必要があります。さらに、通信記録の保存期間も限られており、投稿から時間が経つほど特定の難易度は上がります。

そのため、被害を認識した時点ですぐに動くのが鉄則です。スクリーンショットやURL、投稿日時といった証拠を保全したうえで、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

9. まとめ|SNS炎上は事前対策と初動対応が鍵

SNS炎上は、企業の信用と売上を一夜で揺るがしかねない、現代の経営リスクです。事後の対応には限界があるため、平時から次の3点を徹底することが、企業を守る最善の策となります。

  1. SNSポリシー・ガイドラインの整備
  2. 全従業員への継続的な教育
  3. ダブルチェックとモニタリングの体制構築

そのうえで、万が一の事態に備え、迅速に初動対応できる社内フローと、弁護士などの信頼できる相談先を準備しておくことも欠かせません。準備があるかないかで、炎上時の被害の大きさや収束までの期間は大きく変わります。

よつば総合法律事務所では、SNSポリシー・ガイドラインの策定や従業員向け研修、炎上発生時の初動対応、削除請求、発信者情報開示請求まで、企業のSNSリスクを総合的にサポートしています。SNS対策にお悩みの企業の担当者の方は、お気軽にご相談ください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 加藤貴紀

名古屋事務所所長。中小企業法務全般やM&A、事業承継などのご相談も承っています。社長が本業に集中できるように徹底してサポートします。愛知県弁護士会所属(登録番号52907)。

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