最終更新日:2026年7月2日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐

商品やサービスを宣伝するとき、広告で品質や効果をどこまでうたってよいか、キャンペーンで配るプレゼントをいくらまで用意してよいか、迷う場面は少なくありません。

その判断のよりどころとなるのが、「景品表示法」いわゆる景表法(けいひょうほう)です。景表法は、消費者に誤解を与える広告や、過大なおまけで消費者の購買判断をゆがめる行為を規制する法律です。

厄介なのは、悪意がなくても景表法違反になるという点です。うっかり書いた表現、業界の慣行に沿ったつもりの表示でも、結果として消費者を誤認させていれば違反となりえます。

この記事では、広告やキャンペーンを企画する企業担当者の方に向けて、景表法の基本ルールと、違反を防ぐための実務上の注意点を解説します。

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1. 景品表示法とは?まず押さえるべき基本

景表法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。

ここでは、この法律の目的と全体像、そして違反した場合に企業が背負うリスクの大きさを順に確認していきます。

1.1 景品表示法の目的

景表法の目的は、一般の消費者が安心して商品やサービスを選べる環境を守ることにあります。

事業者と消費者のあいだには、情報量に大きな差があります。企業は商品やサービスについて細かい知識を持っていますが、消費者はそうではありません。

この情報差を利用して、商品を実物よりよく見せたり、過大な「おまけ(景品)」で購入をうながしたりすれば、消費者は適切な判断ができなくなります。

景表法は、こうした不公正な誘い込みを禁じることで、消費者の合理的な選択を守り、企業同士の健全な競争を確保する役割を担っています。

1.2 規制される2つの領域(表示・景品)

景表法が対象とする領域は、次の2つに分かれます。

  1. 表示の規制
  2. 景品類の規制

①表示の規制は、広告や商品パッケージなど、商品をどう「見せるか」のルールです。実際よりよく見せる表現、お得感を装う表現は、禁止される場合があります。

②景品類の規制は、購入者や来店者にどのような「おまけ」を渡せるかのルールです。おまけを全員にプレゼントする場合や抽選で渡す場合など、渡し方ごとにおまけの最高額や総額の上限が定められています。

1.3 違反した場合のペナルティ

景表法を所管しているのは消費者庁であり、違反の調査・処分も原則として消費者庁が中心となって行います。

景表法に違反したとき、または違反のおそれがあるときに事業者が受ける可能性のあるペナルティは、主に次の4つです。

  1. 行政指導
  2. 措置命令
  3. 課徴金納付命令
  4. 直罰による罰金

1.3.1 ① 行政指導

行政指導とは、違反行為の程度が軽い場合や、違反のおそれがある段階で、消費者庁や都道府県から事業者に対して、改善するよう促す行為です。

具体的には、警告、改善指示、是正措置の提示などが行われます。

行政指導は法的拘束力を持たず、報道発表もされないため、企業の信用への直接的な影響は限定的です。

ただし、指導に従わずに違反を続けると、後述の措置命令や課徴金納付命令に進む可能性があります。

1.3.2 ② 措置命令

措置命令とは、違反行為の差止め、再発防止策の実施、違反事実の一般消費者への周知などを求める行政命令(行政機関が法律にもとづいて出す命令)です。

新聞紙面や自社サイトでの違反事実の公表が義務づけられることもあり、企業の信用にも大きな影響が出る可能性があります。

また、措置命令に従わない場合、行為者には2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科される可能性があります。

つまり、措置命令は行政機関から出される命令ですが、無視すると刑事罰につながる重大な処分です。

1.3.3 ③ 課徴金納付命令

課徴金納付命令とは、不当な表示で得た売上の3%を国に納めるよう求めるものです。

対象期間は最大3年で、課徴金が150万円未満(売上5000万円未満)となる場合は対象外とされています。

また、2024年10月の改正では、加算ルールが新設されました。過去10年以内に課徴金納付命令などを受けたことがある事業者には、課徴金が1.5倍(売上の4.5%)に引き上げられます。

一方、減額ルールもあります。調査開始前に違反を自主申告すれば課徴金は半額に、購入者に対し購入額の3%以上を返金する措置をとれば、実際に消費者に返金した金額が課徴金から控除されます。

1.3.4 ④ 直罰による罰金

2024年10月の改正で新設された制度で、故意による不当表示に対し、行政手続を経ずに直接100万円以下の罰金を科すしくみです。「直罰規定」と呼ばれます。

従来は、行政指導や措置命令を経たうえで、命令に従わない場合に初めて刑事罰の対象となっていました。

しかし、今回の改正により、故意による不当表示については、これらの行政手続を経ずに、ただちに罰金を科せるようになりました。

なお、措置命令や課徴金納付命令を回避するための仕組みとして、「確約手続」という制度も2024年10月から導入されています。

これは、違反のおそれがある事業者が自主的に是正計画を作成し、消費者庁の認定を受ければ、措置命令や課徴金納付命令を受けずに済むという仕組みです。

ただし、過去10年以内に景表法違反で処分を受けている場合や、根拠がないことを認識しながら虚偽の広告を行うなど悪質なケースでは、確約手続は使えません。

2. 広告表示の注意点(優良誤認・有利誤認)

広告表示の場面でとくに問題になりやすいのが、次の2つの不当表示です。

  1. 優良誤認表示
  2. 有利誤認表示

優良誤認は商品の「中身」、有利誤認は「価格や条件」に関わる誤認です。

ここでは、それぞれの判断基準と対策を整理します。

2.1 優良誤認とは

優良誤認とは、商品の品質や性能、原材料などについて、実物より著しく優れているように見せる表示をいいます。ライバル商品より特別に優れていると、根拠なく宣伝することも含まれます。

たとえば、次のような表示が該当します。

  • 「国産牛」と表示しながら、実際にはオーストラリア産だった
  • 「医師の98%が推奨」と書いたが、調査の実態がない
  • ダイエット食品で「飲むだけで必ず痩せる」とうたう
  • 「業界初の技術」と表示するが、他社でもすでに使われている技術だった

健康食品や化粧品、美容、ダイエット関連の商品は、優良誤認の処分例がとくに多い分野です。

2.2 有利誤認とは

有利誤認とは、実際にはそれほど有利ではないのに、価格や取引条件がとてもお得であるかのように見せる表示のことです。ほかの商品やサービスよりも大幅に安い、特別な条件で購入できるなどと誤解させる表示が該当します。

代表的なのが二重価格表示と呼ばれるもので、「通常価格○○円のところ、今だけ半額」のように元値と販売価格を並べて見せる手法です。元値の根拠があいまいだったり、過去にその価格で売っていた実績がなかったりすると、有利誤認にあたるおそれがあります。

他にも、次のような例が問題視されます。

  • 「今だけ送料無料」と大きく書きながら、もとから送料無料だった
  • 「期間限定」とうたうが、1年中同じ価格で売っている
  • 「初回限定50%オフ」と表示するのに、実際はいつでも同じ価格で提供している
  • 「先着100名」とアナウンスしたが、実際は人数を管理しておらず、後から購入した人にも適用している
  • 実際の市価が600円程度の商品であるにもかかわらず、「1000円の品を500円で提供」「市価の半額」などと表示し、他社よりも特に安いかのように宣伝している

価格や割引、キャンペーンなどの表示は、消費者の購入判断に大きく影響します。そのため、少しでも魅力的に見せようとして表現が行きすぎると、実際よりも有利な条件であるかのように誤認させ、有利誤認にあたるおそれがあります。

2.3 よくあるNG表現

ここでは、優良誤認・有利誤認のうち、実務でよく使ってしまいがちなNG表現を紹介します。

2.3.1 ① 根拠が不明な「No.1」表記

「業界No.1」「日本一」「満足度No.1」など、最上級を打ち出す表現には、客観的な調査の裏づけが必要です。調査の母数が極端に少なかったり、対象者の選び方が偏っていたりすると、根拠として不十分とみなされます。

たとえば、自社の顧客だけにアンケートを取って「お客様満足度No.1」と表示しても、競合との比較になっていないため根拠としては弱く、優良誤認と評価されるおそれがあります。

2.3.2 ② 実績のない「通常価格」との比較

「通常価格○○円のところ、今だけ半額」のような二重価格表示は、消費者の購買意欲を高める強力な手法です。しかし、比較対象として並べた「通常価格」に実際の販売実績がなければ、有利誤認に該当します。

過去にその価格で売ったことがない、あるいは販売期間が極端に短い場合は、根拠のない比較となり違反となりえます。

2.3.3 ③ 加工・選別されたビフォーアフター写真

ダイエット商品や美容商品、リフォーム工事などで使われるビフォーアフター写真も、実態と異なれば優良誤認になります。

具体的には、写真の加工で効果を誇張するケース、平均的な事例ではなく極端な成功例だけを切り出すケースが該当します。「個人差があります」と注釈をつけていても、写真そのものが平均的な結果から大きくかけ離れていれば、不当表示と判断される可能性があります。

2.3.4 ④ 内容が伴わない「医師監修」表記

「医師監修」「専門家推奨」といった権威づけの表記は、消費者に安心感を与え、商品やサービスへの信頼を高める効果があります。

しかし、実際には十分な監修を受けていなかったり、推奨の事実を客観的に説明できなかったりする場合は、優良誤認にあたるおそれがあります。監修した医師の氏名や監修範囲が明示できない、形式的に名前を借りているだけ、というケースは違反となるリスクが高いといえます。

2.3.5 ⑤ 読めない「打消し表示」

打消し表示とは、広告で目立つように書かれた内容について、例外や注意点を補足する注釈のことです。たとえば、「※個人の感想です」「※効果には個人差があります」「※一部対象外商品があります」といった注釈が、打消し表示にあたります。

もっとも、打消し表示は、ただ記載すればよいものではなく、消費者が無理なく読める形で示す必要があります。

注釈の文字が小さすぎる、背景と文字の色が近くて読みにくい、画面の離れた場所に表示されている、といった場合は、消費者が注意点をきちんと確認できません。そのため、十分な打消し表示とはいえず、問題になるおそれがあります。

打消し表示は、強調した内容の近くに、消費者が無理なく読める大きさ・色・位置で示すことが重要です。

2.4 判断基準と対策

優良誤認・有利誤認にあたるかどうかは、表示を見た一般消費者が、商品やサービスの内容・価格・取引条件などについて、実際よりも「著しく優良」または「著しく有利」だと受け取るかどうかで判断されます。

具体的には、次の3つの要素が判断のポイントです。

① 判断する立場

判断するのは、その商品分野について一般的な知識を持つ平均的な消費者です。専門家でもなければ、まったく知識のない人でもありません。

ふつうに買い物をする消費者が、その表示をどう受け取るかが基準になります。そのため、業界では当たり前の表現であっても、一般消費者に誤解を与える表示であれば問題になるおそれがあります。

② 表示の見方

優良誤認・有利誤認にあたるかどうかは、キャッチコピーだけで決まるわけではありません。写真や本文、注釈、パッケージなどを含めた広告全体の印象が見られます。文字のサイズ・色・配置、強調表示と打消し表示の関係なども、すべて判断材料です。

たとえば、本文で大きく効果や安さを強調している一方で、注釈が小さく読みにくかったり、本文と矛盾していたりすると、消費者に誤解を与える表示とみられるおそれがあります。

③ 誤認の程度

優良誤認・有利誤認にあたるかどうかは、「著しく」優良または有利と誤認させるかで判断されます。そのため、多少の誇張表現や宣伝文句まで、すべて問題になるわけではありません。消費者の選択に大きく影響するような誤解を与えるかどうかが重要です。

たとえば、「世界一おいしい」のような主観的なキャッチフレーズは、ふつうの消費者がそのまま客観的な事実として受け取るとは限らないため、ただちに現実的な問題とまではならないこともありえます。

一方で、「飲むだけで必ず痩せる」のように、客観的な根拠が必要な内容を断定的に表示すると、消費者に大きな誤解を与えるものとして、優良誤認にあたるおそれがあります。

上記の判断基準を踏まえると、対策の柱は大きく2つあります。

第一に、品質や効果をうたう場合は、合理的な根拠資料を社内で揃えておくことです。

消費者庁から根拠資料の提出を求められた際に、期限内に提出できなかったり、提出した資料が不十分だったりすると、優良誤認表示とみなされることがあります。

第二に、価格の安さを売りにする広告では、比較対象として使う「通常価格」や「定価」に根拠があるかを確認することです。

過去にその価格で販売していた実績がないにもかかわらず、その価格を「通常価格」として表示すると、有利誤認と判断されるおそれがあります。

広告表示では、「事業者がどういうつもりで書いたか」ではなく、「消費者からどう見えるか」が重視されます。

そのため、表示を出す前に、根拠資料を確認し、広告全体の見え方をチェックしておくことが、結果として企業を守ることにつながります。

3. ステマ規制(ステルスマーケティング)の注意点

2023年10月から、ステルスマーケティング、いわゆるステマが景表法で正式に規制されるようになりました。

ステマとは、広告であることを伏せたまま、第三者の感想や口コミに見せかけて行う宣伝手法です。

3.1 ステマ規制とは

ステマ規制とは、事業者が出している広告であるにもかかわらず、消費者から見て広告だと判別できない表示を禁じるものです。

広告を中立な感想に見せかけると、消費者は判断を誤りやすくなります。そこで「広告は広告と明示せよ」というルールが法律で正面から定められました。

3.2 ステマに該当するケース

ステマに当たるかどうかは、次の2つの観点で判断されます。

  1. 事業者が投稿や口コミの内容に関与しているか
  2. 一般消費者から見て、広告・宣伝だとわかりにくいか

たとえば、企業が報酬を支払ってインフルエンサーに商品を紹介してもらう場合を考えてみましょう。

この場合、企業が商品の紹介を依頼し、報酬を支払っているため、①の「事業者の関与」が認められやすくなります。

さらに、投稿に「広告」「PR」などの表示がなく、一般消費者から見るとインフルエンサー本人の純粋な感想のように見える場合は、②の「広告・宣伝だとわかりにくい」という要素も満たしやすくなります。

そのため、本人の自由な感想のように書かれていても、事業者の関与があり、広告であることが消費者に伝わらない表示は、ステマにあたるおそれがあります。

3.3 違反になる具体例

具体的には、次のような例が問題になります。

  • 報酬を払って書かせた口コミに「PR」「広告」の表示がない
  • インフルエンサーが商品提供を受けて投稿しているのに、その事実を伏せている
  • 自社サイトの「お客様の声」が、実は社員や関係者によるものだった
  • アフィリエイトサイトで紹介させているが、商品提供者である自社の関与が読み手にわからない

これらは、いずれも事業者の関与があるにもかかわらず、消費者から見ると「事業者とは関係のない第三者の意見」のように見えやすいものです。そのため、広告・宣伝であることがわかりにくい表示として、ステマにあたるおそれがあります。

3.4 適法にするためのポイント

ステマに陥らないために重要なのは、消費者が「これは広告である」とひと目でわかるように表示することです。

そのためには、次のような工夫をすると効果的でしょう。

  • 投稿の冒頭で「PR」「広告」「プロモーション」と明示する
  • ハッシュタグの冒頭に「#PR」とつける
  • 文末の小さな文字ではなく、目立つ場所に表記する

反対に、タグの羅列の中に「#PR」を紛れ込ませたり、長文の末尾に小さく添えたりするだけでは、広告であることが十分に伝わらない可能性があります。

ステマ対策では、「事業者が表示したつもりか」ではなく、「消費者が広告だと認識できるか」を基準にチェックすることが大切です。

3.5 企業側の注意点

ステマ規制で責任を問われるのは、基本的に表示を依頼した事業者側です。依頼を受けたインフルエンサーやライターではなく、商品やサービスを提供する事業者が措置命令の対象になります。

そのため、「外部に任せていた」「ライターが独自に判断した」といった事情があっても、それだけで責任を免れられるとは限りません。

第三者に商品紹介や口コミ投稿を依頼する場合は、契約書や発注書のなかで、次のようなルールを明確にしておくことが重要です。

  • 「PR」「広告」などの表記を必須にする
  • 投稿前に事業者側が内容を確認する
  • PR表記の位置や表示方法を具体的に決めておく
  • 投稿後も、表示が適切に維持されているか確認する

口頭での申し合わせだけでは、投稿内容やPR表記について認識のずれが生じるおそれがあります。後からトラブルにならないよう、依頼時点でルールを文書化しておくことが大切です。

4. キャンペーンの注意点

キャンペーンで顧客にプレゼントやポイントを提供する場合、その内容によっては景品規制の対象となり、金額の上限規制を受けることになります。

ここでは、景品規制の対象となる条件と、紹介キャンペーンやキャッシュバック・ポイント還元における判断基準を解説します。

4.1 景品規制の対象になる条件

キャンペーンで提供するプレゼントや特典が、すべて景品規制の対象になるわけではありません。

景品規制の対象になるのは、提供する物品やサービスなどが、景品表示法上の「景品類」にあたる場合です。

景品類にあたるかどうかは、主に次の3つの要件で判断されます。

  1. 顧客を呼び込むための手段になっていること(顧客誘引性)
  2. 自社の商品・サービスの取引に付随していること(取引付随性)
  3. 物品・金銭・サービスなど、経済的な利益にあたること(経済上の利益)

この3つを満たすものは景品類として扱われ、後で述べる上限規制を受けます。

たとえば、商品を購入した人にプレゼントを渡すキャンペーンでは、そのプレゼントは通常、景品類にあたります。購入という取引に付随して、顧客に経済的な利益を提供しているためです。

一方で、商品を購入していなくても誰でも応募できるキャンペーンは、いわゆる「オープン懸賞」と呼ばれます。この場合、商品の取引と結びついていないため、取引付随性がなく、景品規制の対象外となります。

また、3つの要件をすべて満たす場合でも、「正常な商慣習に照らして値引やアフターサービスと認められるもの」や「商品に附属すると認められるもの」は、景品規制の対象外となります。

たとえば、商品購入時の包装紙、購入者向けの保証書、家電購入時の標準的な据付けサービスなどがこれにあたります。

4.2 紹介キャンペーンの判断基準

紹介キャンペーンで提供される特典も、①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益という3つの要件をすべて満たせば景品類に該当し、景品規制の対象となります。

たとえば、商品購入者が友人を紹介すると、紹介者と紹介された人の双方にギフト券が渡されるキャンペーンを考えてみましょう。

このケースを3つの要件に沿って見ると、次のようになります。

① 顧客誘引性

ギフト券は、紹介を促し、新規顧客を獲得するための手段として用意されています。紹介者には「紹介すれば特典がもらえる」という動機を与え、紹介された人には「特典がもらえるなら購入してみよう」というきっかけを与えるものです。

このように、紹介者と紹介された人の双方に働きかける仕組みであるため、顧客誘引性が認められやすいといえます。

② 取引付随性

取引付随性は、紹介キャンペーンで特に注意が必要なポイントです。

紹介された人については、商品の購入を条件としてギフト券が渡されるため、取引付随性が認められやすいです。

一方で、紹介者は自分が新たに商品を購入するわけではありません。そのため、紹介者に渡す特典については、キャンペーンの設計によって判断が分かれることがあります。

たとえば、過去に商品を購入した顧客だけが紹介者になれる制度や、購入者向けの会員ページ経由でしか紹介できない仕組みの場合は、紹介者自身の取引と関連するものとして、取引付随性が認められる可能性が高いでしょう。

③ 経済上の利益

ギフト券は、金銭と同じように利用できる価値を持つため、経済上の利益にあたります。この点は、通常、大きな問題になりにくいでしょう。

なお、ギフト券だけでなく、ポイント、クーポン、自社製品の無償提供なども経済上の利益に該当します。

このように3要件を満たす設計であれば、紹介者や紹介された人に渡されるギフト券は景品類として扱われ、景品規制の上限が問題になります。

紹介特典は高額になりやすいため、「友達紹介で○万円分プレゼント」のような企画を行うときは、商品の取引価額(購入価格など)との関係で、上限規制に抵触しないかを事前に確認することが重要です。

4.3 キャッシュバック・ポイントの注意点

キャッシュバックやポイント還元は、商品の購入者に対して提供されることが多いため、前述の3要件である①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益を満たしやすい類型です。

ただし、3要件を満たしても、「正常な商慣習に照らして値引きと認められる」ものは景品類から除外され、景品規制の対象外となります。

そのため、キャッシュバック・ポイント還元では、提供する特典が「値引きと評価されるか」が実務上の論点となります。

判断のポイントは、その特典が「その取引の代金そのものを減らすもの」なのか、それとも「取引の代金とは別に与えられる特典」なのかという視点です。

たとえば、次のようなものは、値引きと評価されやすいでしょう。

  • 商品の代金からその場で直接差し引く割引
  • 同じ取引について、後日、代金の一部を返金するキャッシュバック
  • 次回以降の自社商品の購入時に使える割引券やクーポン

一方で、次のようなものは、値引きではなく景品類と評価される可能性があります。

  • 自社以外でも使える金券や電子マネー、ギフト券、QUOカードなどを配る場合
  • 購入金額を超える金額を還元する場合
  • 値引きとは別に、プレゼントや特典を同じ企画内で提供する場合

キャッシュバックやポイント還元は、仕組みだけを見ると値引きに近く見えることがあります。

しかし、利用できる範囲や還元額、提供方法によっては、景品類として扱われる可能性があります。大規模なキャンペーンや高額な還元を行う場合は、企画の段階で景品規制に抵触しないか確認しておくことが重要です。

5. 景品(プレゼント)の上限ルール

景品類に該当するプレゼントや特典を提供する場合は、景品表示法にもとづく金額の上限に注意が必要です。

上限には、「景品1つあたりの最高額」と「景品全体の総額」の2種類があります。どの上限が適用されるかは、景品の提供方法によって異なります。

たとえば、購入者全員に渡すプレゼント、抽選で当選した人だけに渡す賞品、複数の店舗が共同で行う懸賞では、それぞれ違う上限が適用されます。

ここでは、代表的な3つのパターンである「総付景品」「一般懸賞」「共同懸賞」について、それぞれの上限を整理します。

5.1 景品の上限早見表(結論)

まずは、景品の種類ごとに適用される上限を一覧で確認しましょう。

景品の種類 取引価額 景品の最高額 景品の総額
総付景品 1000円未満 200円 制限なし
総付景品 1000円以上 取引価額の20% 制限なし
一般懸賞 5000円未満 取引価額の20倍 売上予定総額の2%
一般懸賞 5000円以上 10万円 売上予定総額の2%
共同懸賞 金額を問わない 30万円 売上予定総額の3%

次から、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

5.2 総付景品(全員プレゼント)の上限

総付景品(そうづけけいひん)は、購入者全員、来店者全員といった「条件を満たした人全員」に渡すプレゼントです。「先着○名」のような形式も総付景品に含まれます。

上限は次のとおりです。

  • 取引価額が1000円未満なら、景品は200円まで
  • 取引価額が1000円以上なら、景品は取引価額の20%まで

たとえば、500円の商品を買った人にプレゼントするなら最高200円まで、3000円の商品なら最高600円までとなります。

総付景品には景品全体の総額の制限がないため、配る人数が多くても問題ありません。

ただし、1人あたりに提供する景品の価額が上限を超えると、景品規制に抵触するおそれがあります。

5.3 一般懸賞(抽選)の上限

一般懸賞は、くじ引きや抽選、じゃんけん、クイズなど、偶然性や優劣によって当選者を決めて景品を渡す方法です。

上限は次のとおりです。

  • 取引価額が5000円未満なら、景品の最高額は取引価額の20倍まで
  • 取引価額が5000円以上なら、景品の最高額は10万円まで
  • 景品の総額は、売上予定総額の2%以下に収める

たとえば、3000円の商品を対象にした抽選なら、景品は最高6万円まで。1万円の商品が対象なら、最高10万円までとなります。

ただし、一般懸賞では、景品1つあたりの最高額だけでなく、景品全体の総額にも制限があります。そのため、企画を立てる段階で、対象商品の売上見込みを合理的に算定しておくことが重要です。

なお、結果として売上見込みを下回ったとしても、当初の見込みが合理的に算定されていれば、ただちに違反とはなりません。

5.4 共同懸賞(複数事業者参加型)の上限

共同懸賞は、商店街やショッピングモールなど、複数の事業者が一緒に行う懸賞です。

上限は次のとおりです。

  • 景品の最高額は、取引価額に関係なく30万円まで
  • 景品の総額は、売上予定総額の3%以下

共同懸賞は、一般懸賞よりも景品の最高額・総額の上限が高く設定されています。

ただし、実施できる時期と期間には制約があり、中元や歳末などの時期に年3回まで、かつ年間通算70日の範囲内に収める必要があります。

6. よくある違反パターン

ここからは、実務で実際に起きやすい違反のパターンを見ていきます。自社の広告・キャンペーンを点検するときの参考にしてください。

6.1 誇大広告

優良誤認の典型例が、効果や品質を実際以上に誇張した広告、いわゆる誇大広告です。

よくあるパターンは次のとおりです。

  • 「絶対に効く」「必ず痩せる」など、確実な効果を断言する
  • 「業界No.1」と表示するが、根拠となる調査をしていない
  • 「医師も推奨」と書くが、どの医師が、何を確認したのかが明らかでない
  • ビフォーアフター写真が加工されている、または極端な事例だけを使っている
  • 通販番組の「個人差があります」のテロップが小さすぎる

健康や美容、化粧品、ダイエットの分野は、効果をうたう表現が購入判断に大きく影響します。そのため、表現を強める一方で、客観的な根拠資料の準備が不十分なまま広告を出してしまうケースがあります。効果や品質を強調する場合は、広告を出す前に、その表示を裏づける資料があるかを確認しておくことが重要です。

6.2 過剰な景品

過剰な景品とは、景品規制で定められた上限を超える景品を提供してしまうケースです。

景品には、購入者全員に渡す総付景品、抽選などで当選者に渡す一般懸賞、複数の事業者が共同で行う共同懸賞があり、それぞれ景品の最高額や総額に上限があります。

これらの上限を超えると、景品規制に抵触するおそれがあります。たとえば、次のような企画は注意が必要です。

  1. 1000円の商品の購入者全員に、500円分のQUOカードを渡す
  2. 商店街が、年間を通じて20万円相当の旅行券が当たる抽選を続けている

①は、総付景品の上限(取引価額の20%=200円)を大きくオーバーしています。

②は、共同懸賞の条件(年3回・70日以内)を満たさないため、一般懸賞として扱われる可能性があります。その場合、景品の最高額は10万円までとなるため、20万円相当の旅行券は上限を超えるおそれがあります。

「お客様に喜んでほしい」という意図が、思いがけず違反につながる典型例といえます。

6.3 不適切なキャンペーン

キャンペーンの設計や運用そのものに問題があるパターンも見逃せません。よくあるのは次のような事例です。

  • 「期間限定」とうたいながら、実質的に1年中同じ条件で売っている
  • 「先着100名」と書いておきながら、実際は数を管理していない
  • 「もれなくプレゼント」と表示しつつ、購入額や対象者に条件がある
  • 「初回限定価格」を、何度も繰り返し提供している

「今だけ」「今買わないと損をする」とあおる演出は、それが事実と異なれば有利誤認にあたるおそれがあります。キャンペーンの企画書をつくる段階で、表記と運用が一致しているかを必ず確認しましょう。

7. 実務で使えるチェックリスト

ここでは、これまで解説した内容をもとに、広告・キャンペーン・景品の3つの観点から、実務で確認すべきポイントを整理します。

社内の確認フローや、外注先への発注時のチェックシートを作成するうえでの参考としてご活用ください。

7.1 広告チェック

広告を出す前に、次の点を確認しましょう。

  1. 一般消費者から見て、実物より過大に良く見える表現になっていないか
  2. 品質・性能・効果をうたう表現について、客観的な根拠資料が揃っているか
  3. 「No.1」「業界初」「最高品質」などの最上級表現について、調査データの裏づけがあるか
  4. No.1表示の調査が、実際にその商品やサービスを利用した人を対象に行われているか
  5. 比較対象の「通常価格」「定価」について、実際の販売実績があるか
  6. 注釈や打消し表示が、スマートフォンの画面でも読めるサイズになっているか
  7. 打消し表示が、強調表示と同じ視野に入る位置に置かれているか
  8. ビフォーアフター写真は、平均的な事例を選び、個人差を明示しているか
  9. アフィリエイターやインフルエンサーへの依頼内容を、事業者側が事前確認しているか
  10. 第三者への投稿依頼で、PR表記の義務を契約に盛り込んでいるか
  11. 自社サイトの「お客様の声」や口コミに、社員・関係者によるものが混ざっていないか

とくに④のNo.1表示の調査対象者は、社内チェックでも見落とされがちです。実際に商品を使っていない人を対象にした「印象だけのアンケート」を根拠にしてしまうと、たとえ集計結果がNo.1であっても、根拠としては不十分と評価されるおそれがあります。

また⑥の打消し表示については、スマートフォンの実機で、本文と注釈の両方が読めるかを必ず確認しましょう。

⑨〜⑪はステマ規制への対応として重要度が高い項目です。SNSや口コミを活用する企業ほど、契約段階での合意と社内のチェック体制が、事後のトラブルを大きく減らします。

7.2 キャンペーン設計チェック

キャンペーンを企画するときは、次の点をチェックしましょう。

  1. 「期間限定」「先着」などの条件が、実際の運用と一致しているか
  2. 「先着○名」「○個限定」といった表記が、企画段階で実現可能な数量に設定されているか
  3. 紹介キャンペーンの特典が、景品規制の上限を超えていないか
  4. キャッシュバックやポイント、割引券が、値引きと景品のどちらに該当するか整理されているか

とくに①と②は、表記と運用がずれていると有利誤認にあたるおそれがあります。企画書の段階で、運用部門と表記内容をすり合わせておきましょう。

7.3 景品設計チェック

プレゼント企画は、次の観点でチェックしましょう。

  1. 配るプレゼントが、総付景品、一般懸賞、共同懸賞のどれに当たるか
  2. 提供方法に応じた最高額の上限を守っているか
  3. 懸賞の場合、景品総額が売上予定総額の2%(共同懸賞なら3%)以内に収まっているか
  4. 景品の価額を、仕入れ価格ではなく市販価格で計算しているか
  5. 同じ取引について、複数のキャンペーンで景品が重なっていないか

④はとくに見落としやすい点です。景品の価額は、仕入れ価格ではなく、消費者が通常購入する場合の市場価格で評価します。仕入れが安くても、市販価格が高ければ上限を超えるリスクがあります。

8. まとめ

ここまで、景表法のしくみと、広告・キャンペーン・景品それぞれの注意点を見てきました。

景表法は、商品の見せ方からおまけの渡し方まで、企業のあらゆる販促活動に関わる法律です。

広告で品質や価格を実際よりよく見せれば、優良誤認・有利誤認にあたるおそれがあり、キャンペーンでプレゼントを配るなら、その内容によっては景品類として上限を守らなければなりません。

さらに、SNSや口コミを使うときは、広告であることを消費者に明示しないとステマ規制に触れることになります。

これらに違反すると、措置命令や課徴金納付命令といった行政処分の対象となるほか、刑事罰が科されるおそれもあります。さらに、違反の事実が公表されることで、企業の信用にも大きなダメージが及びます。

景表法は判断が難しい場面も多く、自社だけでは判断しきれないケースもあります。広告やキャンペーンの設計でお悩みの際は、よつば総合法律事務所までご相談ください。企業の実情に応じて、具体的な対応方針をご提案いたします。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐

大阪事務所所長。インターネット上の誹謗中傷の対策、口コミ削除、投稿者の特定、その他企業法務に注力しています。お困りの口コミなどがあればお気軽にご相談ください。大阪弁護士会所属(登録番号55669)。

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