最終更新日:2026年9月7日
共有不動産では、共有者間で話がまとまらず、売却や活用が進まないことがあります。そういった場合には、共有状態の解消を目指すことになります。
共有状態の解消方法はいくつか考えられますが、どの方法が適するかは、他の共有者との協議が可能か、誰かが取得する資金力があるか、土地を分筆できるかなどによって異なります。
本記事では、不動産会社や仲介担当者の方向けに、共有不動産の解消方法や法的手続きについてわかりやすく解説します。
1. 不動産の共有状態で生じる問題と解消の必要性
1.1 共有不動産の売却・管理に関する基本ルール
「共有」とは、1つの物を複数の人が共同で所有している状態をいいます。
たとえば、土地をAとBが2分の1ずつ所有している場合、土地を物理的に半分ずつ所有しているわけではありません。AとBがそれぞれ土地全体について2分の1の「共有持分」を持っていることになります。
共有不動産については、どのような行為をするかによって、他の共有者の同意が必要かどうかが変わります。
| 行為 | 基本的なルール |
|---|---|
| 保存行為(現状を維持する行為) | 各共有者が単独で行うことができる |
| 管理行為(性質を変更しない範囲での利用・改良行為) | 原則として共有持分の価格の過半数で決める |
| 形状・効用の著しい変更を伴わない変更 | 共有持分の価格の過半数で決める |
| 上記以外の変更 | 原則として共有者全員の同意が必要 |
屋根の修繕といった「保存行為」は、各共有者が単独で行うことができます。一方で、賃料の変更といった「管理行為」は、共有持分の価格の過半数で決めることになります。また、建物を取り壊して建て替えるといった「変更」は、共有者全員の同意が必要です。
そして、各共有者は、自分自身の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく売却することができます。
1.2 共有状態を放置するリスク
共有状態を長期間放置すると、権利関係がさらに複雑になる可能性があります。
特に問題になるのが相続です。共有者の1人が死亡し、さらにその相続人が死亡するといった「数次相続」によって共有者の人数が膨らんでいきます。
共有者が増えるほど、意見をまとめることは難しくなります。連絡が取れない人や遠方に居住する人が生じることもあります。
そのため、売却や単独所有を予定しているのであれば、共有者が少なく権利関係が明確なうちに共有状態の解消を検討することが重要です。

2. 裁判所を使わずに共有状態を解消・整理する方法
裁判所を使わずに共有状態を解消・整理する方法には、主に以下の方法があります。
| 方法 | 他の共有者の同意 | 共有状態が解消するか | |
|---|---|---|---|
| 2.1 | 共有者間で持分を売買する | 売買する共有者間の同意が必要 | ○ 1人に持分を集約すれば解消 |
| 2.2 | 自分の共有持分を第三者に売却する | 不要 | × 新たな共有者に入れ替わるだけ |
| 2.3 | 共有者全員で不動産全体を売却する | 全員の同意が必要 | ○ 売却により解消 |
| 2.4 | 土地を分筆して現物を分ける | 全員の同意が必要 | ○ 各土地を単独所有にすれば解消 |
| 2.5 | 共有持分を放棄する | 放棄自体には不要 | △ 残る共有者の人数による |
2.1 共有者間で持分を売買する
最も分かりやすい方法が、共有者間で共有持分を売買する方法です。
たとえば、AとBが2分の1ずつ共有している不動産について、AがBの共有持分を買い取れば、Aの単独所有となります。
共有者の中に「不動産を残したい人」と「現金化したい人」がいる場合には、利用しやすい方法です。
2.2 自分の共有持分を第三者に売却する
共有者は、自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意を得ずに第三者へ売却できます。
ただし、この方法では、不動産そのものの共有状態が解消されるわけではありません。売主の代わりに、持分を購入した第三者が新たな共有者となります。
また、共有持分だけでは不動産全体を自由に利用・処分できないため、不動産全体の価格に持分割合を掛けた金額で売却できるとは限らず、売却価格は安くなる傾向にあります。
2.3 共有者全員で不動産全体を売却する
共有者全員が売却に同意しているのであれば、不動産全体を第三者へ売却し、売却代金を共有者間で分配できます。
不動産全体を通常の市場で売却できるため、共有持分だけを売却する場合と比べて買主を探しやすく、価格も下がりにくいというメリットがあります。
もっとも、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。
2.4 土地を分筆して現物を分ける
共有している土地を分筆し、それぞれを共有者の単独所有にする方法です。
ただし、接道状況、土地の形状、用途地域などの法令上の規制によって、分筆後の土地の価値が大きく異なることがあるため、土地家屋調査士などとも連携しながら進める必要があります。
なお、土地を「分筆登記」しただけでは、それぞれの土地は引き続き共有状態です。共有状態を解消するためには、共有物分割を原因とする所有権移転登記を行う必要があります。
2.5 共有持分を放棄する
共有者は、自分の共有持分を放棄することもできます。
共有者の1人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条 )。他の共有者への売却とは異なり、放棄した共有者は代金を受け取れません。
持分の放棄自体には、他の共有者の承諾は必要ありません。もっとも、登記上の名義を消すためには別途、所有権移転登記が必要となります。その登記について他の共有者の協力が得られない場合には、登記手続きを求める訴訟が必要となることがあります。
また、他の共有者に経済的利益が移転することになるため、税務上の問題が生じる可能性もあります。
そのため、他の共有者に断りなく放棄をすると、後からトラブルになる可能性があります。

3. 共有物分割請求による共有関係の解消
3.1 共有物分割請求とは
共有状態を解消するため、各共有者は他の共有者に対して共有物の分割を求めることができます。原則として、各共有者はいつでも分割を請求できます(民法256条 )。
まずは共有者間で、持分の買取り、不動産全体の売却、現物分割などについて協議することが一般的です。協議がまとまらない場合や、共有者の一部が協議に応じず「協議をすることができない場合」には、裁判所に共有物の分割を請求できます(民法258条 )。
3.2 共有物分割調停・訴訟の手続きと流れ
裁判所を使った共有物分割の手続きには、共有物分割調停と共有物分割訴訟があります。
共有物分割調停は、裁判所を通した話し合いの手続きです。共有者全員が、申立人か相手方のどちらかとして参加する必要があります。
調停では、裁判官や調停委員が当事者双方の意見を確認しながら、持分の買取りや不動産全体の売却などについて合意できないかを調整します。合意が成立すれば、その内容に従って共有状態を解消できます。
調停で話がまとまらなければ、次は共有物分割訴訟を提起します。
共有物分割訴訟でも、原則として共有者全員を当事者として手続きを進めます。不動産の評価額や取得を希望する共有者の資力、利用状況などが争点となることがあり、必要に応じて不動産鑑定が行われることもあります。
訴訟の途中で話し合いがまとまれば和解することもできます。和解が成立しなければ、最終的に裁判所が共有物の分割方法を判断します。
なお、共有物分割については、訴訟を提起する前に必ず調停を行わなければならないわけではありません。相手方が明確に話し合いを拒否している場合などには、最初から訴訟を提起することもできます。
3.3 裁判所による共有物の分割方法
共有物分割訴訟では、裁判所が不動産の性質や利用状況、各共有者の希望などを踏まえて分割方法を決めます。
主な方法は、「現物分割」「価格賠償」「競売」の3つです。
3.3.1 現物分割
「現物分割」は、共有物そのものを物理的に分ける方法です。土地であれば、土地を分筆して各共有者の単独所有とするのが一般的な方法です。
また、複数の共有不動産がある場合には、それらをまとめて分割の対象とし、たとえば「甲土地はA、乙土地はB」というように、それぞれの不動産を各共有者の単独所有とする方法もあります。このような方法を「一括分割」といいます。
さらに、取得する現物の価格に過不足が生じる場合には、調整のために、持分の価格以上の現物を取得する共有者に超過分の対価を支払わせるといった方法がとられることもあります。
3.3.2 価格賠償
「価格賠償」は、特定の共有者に不動産を取得させ、その共有者から他の共有者に対して持分の価格に相当する金銭を支払わせる方法です。
価格賠償による分割が認められるかについては以下の事情が考慮されます(最高裁判所平成8年10月31日判決)。
- 不動産の利用状況や各共有者の希望などから特定の共有者に不動産を取得させることが相当か
- 不動産の価格が適正に評価されているか
- 取得する共有者に賠償金の支払能力があるか
たとえば、共有者の1人がその不動産に居住しており、今後も取得を希望していて資力もある場合などには、価格賠償が適した分割方法となることがあります。
3.3.3 競売
「競売」は、現物分割や価格賠償による分割ができない場合などに、不動産を競売して、その売却代金を分配する方法です。
競売になると、通常の不動産売却と比べて低い価格でしか売れない可能性があります。そのため、訴訟になった場合でも、競売になる前に共有者間で売却や持分買取りについて和解できないかを検討することがあります。
4. 共有者の所在・判断能力・相続が問題となる場合の対応
4.1 共有者の所在が分からない場合
共有者の所在が分からない場合には、必要に応じて弁護士等に相談しながら、住民票や戸籍の附票などの公的資料を確認し、所在を調査します。
それでも所在が判明しない場合でも、共有物分割訴訟を提起し、公示送達(裁判所の掲示板に書類を掲示することで、相手に書類が届いたとみなす手続き)という手続きを利用することで、訴訟を進められることがあります。
また、一定の要件を満たす場合には、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得することができます(民法262条の2 )。
この場合、所在等不明共有者の持分の時価に相当する金銭を供託(預けること)する必要があります。
さらに、不動産全体を第三者に売却したい場合には、裁判所の決定によって、所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡する権限を取得できる制度もあります(民法262条の3 )。ただし、この制度を利用して不動産全体を売却するには、所在等不明共有者以外の共有者全員が自分の持分を譲渡することが必要です。
なお、所在等不明共有者の持分が遺産共有に属する場合には、相続開始から10年を経過しなければこれらの制度を利用できないなどの制限があります。
4.2 判断能力が十分でない共有者がいる場合
共有者の中に、認知症などによって判断能力が低下している人がいる場合には注意が必要です。
不動産の売却などの法律行為をした時点で本人に意思能力がなかった場合、その法律行為は無効となります(民法3条の2 )。
そのため、本人の判断能力の程度によっては、成年後見制度の利用を検討することになります。すでに成年後見人が選任されている場合は、原則として、その成年後見人と共有物の分割について協議することが可能です。なお、成年後見人が本人の居住用不動産を処分(売却など)する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
一方で、まだ成年後見人が付いていない場合、後見開始の申立てができる者は、本人、配偶者、四親等内の親族など法律で定められた者に限られていて、他の共有者であるというだけでは申立てをすることはできません。
もっとも、本人が意思能力を欠く常況にある場合には、一定の要件のもと、共有物分割訴訟を提起し、訴訟手続のための特別代理人(本人の代わりに手続きを行う代理人)の選任を申し立てて手続きを進める方法もあります。
できるだけ早い段階で、本人の判断能力や成年後見制度の利用状況を確認する必要があります。
4.3 相続登記が未了・相続関係が複雑になっている場合
4.3.1 相続登記が未了の場合は遺産分割で解決
過去に所有者が死亡したものの、相続登記が未了のままとなっている不動産もあります。
登記名義上の共有者がすでに死亡している場合には、相続登記の有無にかかわらず、必要に応じて戸籍等を確認し、相続関係や現在の権利者を整理する必要があります。
相続開始から長期間が経過していると、共有者の相続人もすでに死亡し、「数次相続」が発生していることもあります。このような場合には、相続人が多数となり、権利関係の整理に時間を要することがあります。
また、相続財産についてまだ遺産分割が行われていない場合、その財産は相続人間で「遺産共有」の状態となります。
遺産共有は通常の共有とは取り扱いが異なり、原則として、共有物分割ではなく相続人間の遺産分割によって解消します。
4.3.2 共有物分割と遺産分割が併存する場合
通常の共有持分と遺産共有持分が併存するケースもあります。
たとえば、AとBが土地を共有している状態でBが死亡し、Bの持分について相続人間の遺産分割が終わっていない場合です。
この場合、先にBの持分について遺産分割を行ったうえで共有物分割を行うことができます。また逆に、先にAの通常共有持分とBの相続人らが有する遺産共有持分との共有関係を共有物分割によって解消し、その後、Bの相続人間で遺産分割を行う方法もあります。
つまり、自分が相続に関係のない共有者であり、早期に共有関係を解消したい場合には、遺産分割の成立を待たずに共有物分割請求を行うことができるということです。
なお、相続開始から10年を経過した場合には、一定の要件のもと、遺産共有関係についても共有物分割訴訟の中であわせて解消できる場合があります(民法258条の2第2項 )。
まず現在の相続人や権利関係を整理し、相続登記や遺産分割の状況を確認したうえで、共有状態の解消方法を検討することが重要です。
5. よくあるご質問
5.1 自分の共有持分だけを第三者へ売却できますか?
自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意なく第三者へ売却できます。
ただし、買主は共有持分を買ってもその不動産を自由に処分できるわけではありません。そのため、不動産全体の価格に持分割合を掛けた金額で売却できるとは限りません。
また、売却後は第三者が新たな共有者となるため、不動産そのものの共有状態は解消されません。
5.2 共有者の1人が住み続け、売却に応じない場合はどうすればよいですか?
共有者の1人が売却に反対している場合、不動産全体をそのまま第三者へ売却することはできません。
まずは、その共有者による他の共有者の持分の買取りや、不動産全体の売却について協議します。合意できない場合には、共有物分割請求を検討します。
なお、居住している人自身が共有持分を有している場合、他の共有者が求めたからといって一方的に退去させることができるわけではありません。一方で、他の共有者は、持分割合に応じた賃料相当額を請求できる可能性はあります。
どのような請求が可能か判断するためには、個別の事情を確認する必要があります。
5.3 共有者の1人と連絡が取れない場合でも共有状態を解消できますか?
共有者の1人と連絡が取れない場合でも、共有状態を解消できる場合があります。
まず共有者の所在を調査し、それでも所在が判明しない場合には、公示送達を利用した共有物分割訴訟や、所在等不明共有者の持分取得制度などを検討します。
また、共有不動産全体を第三者へ売却することを目的として、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を裁判所から取得する制度を利用できる場合もあります。
5.4 共有物分割訴訟にはどのくらいの費用・期間がかかりますか?
共有物分割訴訟にかかる費用や期間は、不動産の価額、共有者の人数、争点、鑑定の要否などによって異なるため、一概にはいえません。
費用としては、裁判所に納める申立手数料や郵便料のほか、弁護士に依頼する場合の弁護士費用などがあります。不動産の評価が争点となる場合には、鑑定に関する費用が生じることもあります。
期間についても、共有者間の対立状況や争点によって大きく変わるため、具体的な見通しは個別に確認する必要があります。
5.5 共有解消に伴う税金で注意すべき点はありますか?
共有状態を解消する方法によって、税金の取扱いも異なります。
たとえば、共有持分や不動産全体を売却して利益が生じた場合には、譲渡所得に対する課税が問題となります。
一方、共有している一つの土地を、持分に応じて現物分割した場合には、所得税上、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。ただし、持分割合と異なる分割をした場合や、複数の不動産を交換するような形で共有を解消した場合などには、課税されることがあります。
また、共有持分を無償で放棄した場合には、他の共有者が経済的利益を受けることになるため、贈与税等の問題が生じる可能性があります。
このほか、共有物分割に伴う登記については登録免許税が、不動産の取得態様によっては不動産取得税が問題となることもあります。
税務上の取扱いは、共有解消の方法や不動産の取得経緯、当事者が個人か法人かなどによっても異なるため、実際に手続きを行う際は税理士等への確認が必要です。
6. まとめ|共有不動産は早い段階で権利関係を整理することが重要
共有不動産については、共有者全員の意見が一致していれば、持分の買取りや不動産全体の売却、土地の現物分割などによって共有状態を解消できます。
一方、共有者が売却に反対している場合には共有物分割請求を検討する必要があります。また、共有者の所在が分からない、判断能力に問題がある、相続登記がされていないといったケースでは、それぞれの場合に応じた手続きが必要となります。
不動産業者の方が共有不動産の売却や買取りについて相談を受けた際、通常の売却交渉だけでは解決が難しい場合には、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
共有関係や相続関係を整理したうえで、売却、持分買取り、共有物分割請求など、案件に応じた解決方法を検討することが重要です。







