業種 | 建設業・建築関係 |
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お困りの問題 | 株主間紛争, 顧問 |
担当弁護士 | 大澤 一郎 弁護士 |
相談前
建設業を営むA社は過去において株式の売買について明確な書面のやりとりを残していませんでした。このたび、株式の譲渡をすることになったために、弁護士に書類の作成を相談しました。
相談後
今回の株式譲渡については、法律上の手続きを適切に踏んで行うことにしました。取締役会設置会社でしたので、株式譲渡契約書の作成、取締役会への譲渡承認請求に関する書類の作成、取締役会の開催及び取締役会議事録を作成して対応しました。また、過去の株式の譲渡の経緯について争いはありませんでしたが、権利関係を確定する趣旨で新たに株主名簿を作成し、公証役場での確定日付を念のため取得しました。
担当弁護士からのコメント
- 会社法においては譲渡制限株式について、取締役会があるときは取締役会、取締役会がないときは株主総会が承認機関となります。ただし、定款に特別の定めがある場合にはこの限りではありません。取締役会・株主総会決議のない譲渡であったとしても当事者間での株式の売買契約の効力は有効と考えられていますが、より確実に行うためには譲渡承認請求及び取締役会(または株主総会)の決議を経た方がよいでしょう。
- 株主名簿とは会社が作成をする株主を把握するために作成される名簿のことです。株主名簿は作成の義務がありますが、作成をしていない会社があることも事実です。そのような場合、現在及び過去の株式が誰の所有であったかどうかが争いになってしまうこともあります。そのため、株主名簿を作成していない会社の場合には、早急に株主名簿を作成することが望ましいです。また、書類の作成日に争いが生じることを避けるため、公証役場で確定日付(当該日付に当該書面が存在していたことの証明)を取得する方法も選択肢の1つでしょう。
- 株式の譲渡は、特に無償でなされた場合などは後で譲渡の事実の有無が争いとなることがあります。また、帳簿上の処理のみで行い、実際の金銭の移動が伴っていないような場合も後日譲渡の事実の有無が争いとなることがあります。そのため、株式譲渡契約書を作成するとともに、金銭の移動を伴う場合には、金銭が移動したことの証拠を適切に残しておく必要があります。
- 株主総会、取締役会は議事録を作成するだけではなく、実際に株主総会・取締役会を開催する必要が当然あります。議事録のみの作成では、後日の裁判の際に争いとなると株主総会・取締役会をしたことを主張・立証できません。