業種
お困りの問題
担当弁護士

最終更新日:2021年1月14日

事案の経緯

ご相談者様は運送業を営まれる会社の方でした。会社の規模の拡大を目的として他の運送業を営む会社のM&Aを検討されていました。

ご相談者様がM&Aを行うかどうかを検討するために、法律面のデューデリジェンス(以下、「DD」)の実施を弊所にご相談されました。

DDの実施

DDを行う際は、M&Aを行う対象会社の方から膨大な資料を頂いた上で、その資料の検討を行うことになります。

今回は、対象会社が運送業を営んていたことから、長時間労働が行われており、それに伴って残業代が未払いの状態になっている部分が多くある可能性が高く、タイムカードや日報、タコメーターのチャート紙等の労働時間が分かる資料を精査した上で、対象会社の担当者の方から従業員の働き方や労働時間、残業代の取り扱い等を重点的に伺いました。

その上で弊所の方で計算を行った結果、全従業員合わせて1億円程度の未払残業代が発生する可能性があることがわかりました(対象会社は従業員がそれなりに多い会社でしたので、金額も高額になりました。)。

ご相談者様にそのことを報告したところ、金額が高額であったことから最終的には対象会社についてはM&Aを行うことを断念しました。

弁護士からのアドバイス

M&Aを行った後に残業代のような決算書には出てこない簿外債務が出てくるということはありえます。

そうなってしまうと、実際に買い取った会社の価値は思っていたよりも低かったということになりかねません。業種によっては長時間労働が行われており、それに伴って高額な未払残業代が発生していることも往々にしてあります。

残業代を支払わないようにするために固定残業代や管理監督者制度等の制度を採用している会社も多く見かけられますが、実際には適切な要件を満たしておらずそれらの制度が無効になり、その結果やはり高額な残業代が発生するということもよくあることです。

事前にDDを実施して今回問題となった残業代の様な簿外債務が発見できれば、M&Aを行うこと自体を取りやめる決断をしたり、M&Aを行う際の対価について交渉をするカードとして用いたりすることもできるようになります。

M&Aに失敗しないためにも、事前に法的な観点から対象会社の内部をチェックすることが大切になってくると考えられます。

監修者:弁護士 加藤貴紀

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