業種 | 建設業・建築関係 |
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お困りの問題 | その他企業の問題 |
担当弁護士 | 粟津 正博 弁護士 |
相談前
建設業を営む顧問会社様から「従業員の運転するトラックから積荷が落下し、後続車両にぶつかったと主張されているがどうしたらいいか」という相談をお受けしました。もっとも、当該従業員の認識では、特に落下したと考えられる積荷は無く(積荷の減少等は無く)、相手方の主張の真偽は不明であるとのことでした。
相手方からは、執拗に責任を取るよう求められている。任意保険には加入しているものの、落下している積荷がないのなら、保険会社としては対応できないと言われているとのことでした。
相談後
まずは、事故時の状況を確認するようにお願いしました。相手方はどのようなものが落下したと言っているのか、当該物が落下する可能性はないのか、(特に相手方の)ドライブレコーダーの有無といった点を、検討していただきました。
併せて、仮に賠償に応じる場合の金額の資料として、修理費の見積もりを相手方にとっていただくようお願いしていただきました。
そうしたところ、相手方も実際に落下した物を見ていないが総合的に判断すれば、積荷のくず、切れ端等が落下した可能性は否定できないという結論に至りました。そして、このような結論を保険会社に伝えたところ、保険会社が対応することになり、会社への請求は無くなりました。
担当弁護士からのコメント
使用者責任
民法上「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」(民歩715条第1項)とされています。これを「使用者責任」といい、交通事故の場合も例外ではありません。つまり、従業員が業務中に交通事故を起こした場合、会社が使用者責任として損害賠償責任を負う可能性が高いことになります。本件でも同責任に基づいて、会社への責任を追及されること自体は十分に考えられる類型でした。
不法行為責任
もっとも交通事故に基づく責任が発生するためには、違法な行為と損害の額を基本的に被害者の側で証明する必要があります。本件でも、実際にどのような物が落下し(違法な行為)、損害が発生したのか(修理費の見積もり)を確認していただいたことが解決につながりました。交通事故では責任の有無に関する議論だけが先行して大きくなりがちですが、冷静にまずは証拠と資料を集める、事故のメカニズムを明らかにするという対応が有用であることがあります。
無過失主張の場合保険は使えない
よくあるご相談として、任意保険に入っていても、自身が無過失を主張する場合には(賠償義務が生じないので)示談代行が使えない、保険会社が間に入ってくれないというものがあります。もっとも、本件のように、責任がある可能性があるという前提であれば保険会社がまずはその有無の調査を含めて代行してくれる可能性がありますので、しっかりと保険会社に検討結果を伝えることが必要です。
ドライブレコーダー
本件では、相手方の車両にドライブレコーダーはついておりませんでしたが、落下物が 映っていれば事故のメカニズム自体は問題の無い案件でした。本件に限らず、ドライブレコーダーは事故の機序を証明する手段として近年多く使われており、その効果も大きいことが多いです。当方のみならず、相手方に対してもドライブレコーダーの有無を確認することは当然とるべき対応だといえるでしょう。