業種 | その他サービス業 |
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お困りの問題 | 労働紛争・労使紛争, 解雇・退職, 人事・労務, 顧問 |
担当弁護士 | 三井 伸容 弁護士 |
最終更新日:2023年8月29日
ご相談に至る経緯
A社には、仕事の能力面で問題がある社員がいました。会社は社員に対して必要な指導や業務内容の変更をしてみましたが、一向に改善がみられません。
他の従業員からその社員の仕事ぶりへの不満を聞くことも増えてきました。
これ以上社内の空気が悪くなってしまうと、業務に支障が出ますし、他の退職者が出てくる可能性もあります。A社としてはやむなくその社員に退職してほしいと考えました。
しかし日本の法律では解雇が難しいと聞いたことがありました。そこで、どうしたらよいかわからず、顧問弁護士であるよつば総合法律事務所に相談しました。
解決までの流れ
A社は、弁護士に対して、その社員のこれまでの仕事ぶりを説明しました。弁護士からはその社員の仕事ぶりの問題点について、何か根拠資料があれば集めるように依頼されました。
A社は集めた資料を弁護士に共有し、A社と弁護士で今後の見通しを検討しました。
弁護士の法的な検討の結果、社員を解雇することは法律上リスクが高いという結論になりました。
リスクが高い解雇をした場合、長期間の紛争となり、対応に時間やコストがかかること、敗訴した場合には多額の金銭を支払うだけではなく、復職される可能性もあることなどを弁護士からA社に説明しました。
A社としてはむやみにリスクが高い対応はしたくありません。とはいえこのままでは他の社員も退職しかねないため、その社員にはなんとか退職してもらいたい状況でした。
そこで顧問弁護士から「退職勧奨」の提案をされました。「退職勧奨」とは、会社から社員に対して、自発的な退職や会社との合意での退職を勧める行為です。
社員が退職することに了承しなければ退職になりませんので、社員の意思に関わらず退職させる「解雇」とは違います。
弁護士とA社との間で打ち合わせをし、退職勧奨を行う際の注意事項、想定問答、退職に際して提案する条件などを協議しました。
事前に合意退職のための書類も弁護士が準備しました。
弁護士との事前うち合わせを踏まえてその社員とA社代表者で話し合いの場を設けました。
社員側も色々思うところはあったものの一定の金銭を会社から支払うことで合意退職することとなりました。
事前に準備していた合意書を社員とA社で締結し、無事解決となりました。
結果・成果
本件では解雇をするリスクを冒すことなく、また必要以上に社員との関係も悪くならずに双方納得の形で退職してもらうことができました。
退職に際して合意書を作成したことで、後日退職の話を蒸し返されるリスクを軽減することができました。
また合意内容を口外しないことなど、会社として守ってほしい約束事も盛り込むことができました。
担当弁護士のコメント
「やめさせたい従業員がいる」というご相談を受けることは非常に多いです。
もっとも、法律上無効な解雇をしてしまい、裁判で解雇が無効とされてしまうと、多額の賠償金を支払い、しかも対象の社員が復帰するという事態に至るリスクがあります。
実際ご相談を受けていて法的にリスクなく解雇できるようなケースにはほぼ遭遇しません。
例外的にあるとすると、犯罪行為が明白なケースくらいで、ほとんどのケースで解雇について上記のリスクを抱えることになります。
解雇ではないが社員に退職してもらう方法として、「退職勧奨」という方法があります。
退職勧奨とは、自主的な退職や合意による退職を勧め、必要に応じて説得する方法です。
解雇との違いは、あくまでも社員側が退職する意思を持って初めて退職してもらえる方法ということです(解雇は社員側の意思にかかわらず強制的に退職してもらう方法です。)。
「そんな良い方法があるのか」と安易に飛びついてしまいがちですが、強要すると違法行為になってしまうなど、法律上気を受けなければいけない事項が複数あります。
退職は社員の方の生活に関わる重大な問題であり、十分準備をしつつ、慎重にお話を進める必要があります。
会社として退職勧奨をすることに慣れていることはまずありませんので弁護士のサポートが必要です。
労使の関係が既に相当悪化している場合には、社員側も内心では退職したいと考えていることも珍しくありません。
にもかかわらず、労使間で話が感情的になってしまったり、条件面で不安があったりして退職に踏み切れないこともあります。
このようなケースで退職勧奨をする場合、まずは会社側が冷静になり、必要な準備をする必要があります。
退職を勧める理由、提示できる条件、必要な手続など説明すべき内容を事前に整理する必要があります。
特に社員側が気になる部分(退職金、失業手当、退職の時期・条件など)は当日説明できるようにしなければなりません。
きちんと事前に準備して話し合いに臨むと、具体的な条件ベースでの話になるため感情的な話にもなりづらく、予想以上にスムーズに退職の話がまとまることもあります。
解雇をするには法律上高いハードルもありますし、双方金銭面、時間面、感情面などでの負担が非常に大きくなります。
まずは話し合いで双方納得の上で退職してもらう途を探るべきだと思います。
よつば総合法律事務所では会社側の立場で従業員の退職に関するご相談を多く受けております。
お困りの方はよつば総合法律事務所にご相談ください。
注:事案の本質を損なわない範囲で一部事案内容を変更している場合があります。