最終更新日:2026年6月19日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和

Q. 最近、当社では、人手不足を解消するため派遣社員の受け入れを検討しています。派遣社員を受け入れる際、法律上どのような点に注意すればよいのでしょうか?

A. 派遣社員の受け入れにあたっては、労働者派遣法により様々なルールが定められています。事前面接の禁止や派遣期間の制限、同一労働同一賃金への対応、そして受け入れ後の現場での運用体制など、派遣先企業として守るべき法的義務について正しく理解し、適切に運用していくことが重要です。


1. 事前に派遣社員を特定する行為の禁止

派遣先企業が派遣社員を受け入れる際、事前に履歴書の提出を求めたり、面接を行うこと、若年者に限定するなどの指示をすることなど、派遣社員を特定することを目的とする行為は、原則として禁止されています。派遣社員を雇用しているのはあくまで派遣元 (人材派遣会社)であり、派遣先と派遣社員との間には直接の雇用関係がないためです。

なお、業務に必要なスキルが備わっているかどうかの事前の確認は、個人を特定しない形で行う必要があります。

2. 派遣期間の制限 (3年ルール)

労働者派遣法では、派遣社員の正社員や無期雇用への切り替えを促進し雇用の安定を図る等のために、派遣期間について 「事業所単位」と「個人単位」の2つの制限 (いわゆる3年ルール)が設けられています。

(1) 事業所単位の制限

同一の事業所で派遣社員を受け入れることができる期間は原則3年までです。3年を超えて継続して派遣を受け入れる場合には、過半数労働組合等への意見聴取など所定の手続きを事前に行う必要があります。

(2) 個人単位の制限

同一の派遣社員を、派遣先の同一の組織単位 (課やグループなど) で受け入れることができる期間は原則3年が上限とされています。3年を超えて同じ人に就業し続けてもらうためには、派遣先での直接雇用への転換や、別の組織単位(他の部署)への異動などの措置が必要になります。

3. 同一労働同一賃金への対応と双方の義務

派遣社員と正社員との間の不合理な待遇差を解消するため、「同一労働同一賃金」のルールが適用されます。

派遣先企業は、労働者派遣契約を締結する前に、派遣元に対して自社の比較対象労働者(正社員等)の業務内容や待遇に関する情報等を提供する義務があります。

情報提供が行われた後、派遣元企業は、派遣先の待遇に合わせる方式等により、派遣社員の適正な待遇を確保する義務を負います。また、派遣先企業は、派遣元が派遣社員の適正な賃金や教育訓練を確保できるよう、派遣料金の交渉において十分な配慮をする必要があります。

なお、実務上は、派遣元企業が派遣社員の待遇を決定する仕組みには「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つがありますが、現在は多くの派遣元が後者の「労使協定方式」を採用しています。労使協定方式の場合にはその内容に従う必要があります。

4. 受け入れ後の体制づくりと現場での徹底

派遣社員は自社の従業員ではないとはいえ、日々の指揮命令を行うのは派遣先です。そのため、派遣社員を受け入れた後も、派遣先には多くの責任が生じます。例えば、以下のような義務です。

  1. ① 派遣先責任者の選任
  2. ② 労働時間の適正な把握
  3. ③ 安全衛生の確保
  4. ④ ハラスメント対応

また、苦情窓口や事故発生時の連絡ルートをあらかじめ派遣元と共有しておくことが極めて重要です。

そして、派遣先企業は、現場の担当者に対して、「指揮命令できる範囲を逸脱しないこと」 「契約外業務を頼まないこと」 「問題発生時は当事者間だけで解決せず、直ちに派遣元へ共有すること」を徹底させる必要があります。

さらに、契約更新の前には、前述の期間制限 (3年ルール)への抵触がないか、正社員の待遇情報に変更がないかを見直す必要もあります。

5. その他の重要な禁止事項

建設業務、警備業務、病院等における医療関連業務など、法律で労働者派遣が禁止されている業務に従事させることはできません。

また、自社で直接雇用をしていて退職した元従業員を、離職から1年以内に派遣社員として受け入れることは原則としてできません。

6. まとめ

派遣社員の受け入れは、企業にとって有効な人材確保の手段ですが、厳格な法令を遵守する必要があります。違反した場合、労働局からの指導や勧告、企業名の公表、場合によっては罰則等のリスクもあります。

思わぬトラブルを避けるためにも、ルールの明確化や適切な現場の管理体制が求められます。運用に不安がある場合は、専門家である弁護士に相談することも有用です。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和

副代表弁護士・税理士。税務と法律の双方の観点から会社経営全体の解決を目指します。企業勤務の経験もあることから、直面している問題・課題に対して、一番よい解決方法を一緒に考えます。千葉県弁護士会所属(登録番号44648)。

関連記事