最終更新日:2026年6月16日

Q. 今期は業績が良いので、年度の途中で取締役の報酬を増額しようと考えています。取締役だけで自由に変更しても問題ないのでしょうか?
A. 取締役報酬の決定や変更には、株主総会の決議などの厳格な手続が必要です。また、年度の途中で安易に増額すると、税務上、会社の経費(損金)として認められないリスクがあるため、注意が必要です。
取締役報酬決定の手続
会社法では、取締役報酬の決定については、取締役が自分自身の報酬を自由に決めることによる「お手盛り」を防ぎ、株主の利益を保護するために、株主総会の決議が必要とされています。
取締役が自分の報酬を自分で決めると、恣意的に高額な報酬を設定してしまう恐れがあるからです。そのため、取締役の報酬を増額しようとするときは、株主総会における決議が原則として必要です。

取締役の報酬を税務上の「経費(損金)」にするための要件
取締役報酬を会社の損金として計上するためには、法人税法上のルール(以下の3つのいずれか)に該当させる必要があります。
(1) 定期同額給与 (毎月決まった額を支払う等)
支給時期が1か月以下で、その事業年度の各月の支給額が同額である給与です。最も基本的な形態であり、年度の途中で理由なく増減させることは原則認められません。
(2) 事前確定届出給与 (取締役への賞与等)
あらかじめ「いつ、いくら支払うか」を決め、事前に税務署へ届け出る制度です。届け出た内容と1円でも異なると、あるいは1日でもずれてしまうと、全額が損金として認められないという厳しい運用がなされます。
(3) 業績連動給与 (主に上場企業向け)
会社の利益などの指標に連動して報酬額が決まる仕組みですが、算定方法の開示など厳格な要件があるため、主に上場企業で活用されています。
取締役の報酬を変更できるタイミングと「3か月ルール」
取締役の報酬金額を変更して損金算入できるのは、原則として「事業年度開始の日から3か月以内」に限られます。
例えば、3月決算法人の場合、6月までに開催される定時株主総会で報酬額を改定するのが一般的です。この期間を過ぎてから、業績が良くなったからといって報酬を増額しても、その増額分は原則として損金として算入できません。これは、利益が出た分だけ報酬を増やして税金を減らすという「利益操作」を防ぐためです。
ただし、以下の場合は例外的に期中の変更が認められることがあります。
業績悪化改定事由
著しい業績悪化により、減額せざるを得ない客観的な事情がある場合
臨時改定事由
代表取締役への就任や平取締役への降格など、職務内容に重大な変更があった場合
注意点
会社法や税務上の手続きを怠ると、損金算入が否定されることがあります。
また、税務調査において、適正な手続で報酬が決まったことを証明する最も重要な証拠が株主総会の議事録です。議事録がないと、決議があったことを説明・立証できず、損金算入を否認されるおそれがあります。
また、会社法上手続きを適正に行っていても、取締役の報酬が、会社の収益や同業他社の水準と比べて「高すぎる」と判断された部分は損金算入が否認される可能性があります。
部長などの職務を兼ねる従業員兼務取締役の場合、従業員分と取締役分の賞与の区別を不明確にして支払うと、取締役分の賞与部分について損金不算入となるリスクがあります。
まとめ
取締役報酬の決定や変更は、会社法と税法の双方を遵守しなければなりません。適切な時期に株主総会を開催し、必ず議事録を作成・保管することが必要です。
判断に迷う場合や、特殊な事情で期中に報酬を変更したい場合は、後から「損金算入が認められなかった」という事態を避けるためにも、事前に税理士や弁護士などの専門家へ相談されることをおすすめいたします。





