目次
1. デンソーなどに再発防止を求める措置命令
消費者庁は先日、「車内を除菌できる」と謳う自動車用クレベリンには科学的な根拠がないとして、デンソーなど10社が景品表示法に違反していたと発表しました。
消費者庁はこれら10社に対して再発防止を求める措置命令を出しました。
デンソーなどはウェブサイトなどで、車両用クレベリンを使って車の中に二酸化塩素ガスを充満させることで、除菌効果などが3カ月間続くと表示していました。
この表示が景品表示法違反の優良誤認表示に当たるとされたのです。
2. 優良誤認表示とは?
景品表示法が規制している優良誤認表示とは、「商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示」のことです。
つまり、実際よりとても良く見せる広告などを言います。
たとえば、次のようなものが有料誤認表示にあたります。
- 国産有名ブランド牛でない牛肉を、国産有名ブランド牛であるかのように表示すること
- コピー用紙の古紙配合率が50%しかないのに、古紙100%であるかのように表示すること
今回のケースでは、車両用クレベリンを使って車の中に二酸化塩素ガスを充満させることで、除菌効果などが3カ月間続くと表示していましたが、実際にはそのような効果があることを示す合理的な根拠がありませんでした。
3. 裏付けとなる資料の提出
内閣総理大臣は、事業者がした表示が優良誤認表示かどうかを判断するため必要があるときは、その事業者に対して、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。
今回のケースでも、内閣総理大臣は対象になる10社に資料を求めました。
それを受けて措置命令の対象となった10社からは資料が提出されましたが、その資料を確認した結果として合理的な根拠はなかったと判断されたということです。
4. 措置命令の内容
内閣総理大臣は、優良誤認表示があるときは、その事業者に対し、優良誤認表示となる行為の差止めもしくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます。この命令を措置命令と呼びます。
措置命令は、違反行為がすでになくなっている場合でもすることができます。
今回のケースの措置内容は以下の通りです。
- 対象となる表示が、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものであることを一般消費者に周知徹底すること。
- 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
- 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、対象となる表示と同じような表示を行わないこと。
5. 課徴金支払い命令の可能性
優良誤認表示等の景品表示法違反の行為を行った事業者に対しては、内閣総理大臣は課徴金の支払を命じることになります。
例外として、以下の場合には課徴金の支払いは命じられません。
- 事業者が、優良誤認表示等であることを知らず、知らないことについて相当の注意を怠っていないとき
- 法律・政令に従って計算した課徴金の金額が150万円未満であるとき
今回のケースでは課徴金の支払い命令は現時点では出ていません。
ただ、車内用でないクレベリンについては、2023年に過去最高額となる6億円の課徴金の納付が大幸薬品に対して命じられた経緯があります。
それを踏まえると、今回も課徴金納付の例外となる可能性は低く、課徴金の納付命令が出される確率が高いでしょう。
6. 広告の表現に要注意
景表法は優良誤認表示の他にも、「有利誤認表示」や「その他誤認されるおそれのある表示」を規制しています。
広告の規制は意外と細かくなっています。事業者の皆様は広告を出す際は表現の検討を慎重に行ってください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。