破産犯罪-債権者からみた破産手続の厳格なルール

目次

1. はじめに

よつば総合法律事務所の弁護士の堀内です。

取引先が突然破産することになり、売掛金や貸付金はどうなるのか困惑された方も少なくないはずです。

破産は身近な存在と言わざるを得ません。その一方で、破産手続は厳格なルールが定められており、懲役刑も含めた罰則が定められています。

債権者目線から留意すべき破産手続上の罰則を説明いたします。

2. 罰則の種類

破産法上、規定のある罰則は次の①から⑪です。

  • ① 詐欺破産罪(破産法265条)
  • ② 特定の債権者に対する担保の供与等の罪(破産法266条)
  • ③ 破産管財人等の特別背任罪(破産法267条)
  • ④ 説明及び検査の拒絶等の罪(破産法268条)
  • ⑤ 重要財産開示拒絶等の罪(破産法269条)
  • ⑥ 業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪(破産法270条)
  • ⑦ 審尋における説明拒絶等の罪(破産法271条)
  • ⑧ 破産管財人等に対する職務妨害の罪(破産法272条)
  • ⑨ 収賄罪(破産法273条)
  • ⑩ 贈賄罪(破産法274条)
  • ⑪ 破産者等に対する面会強請等の罪(破産法275条)

それぞれの罰則の趣旨は、

  • 破産債権者の財産上の利益の保護(①②)
  • 破産手続の適正な遂行(③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩)
  • 破産者の経済的再生(⑪)

とされています。

3. 債権者として留意すべき罰則

このように、罰則の中には、債権者を保護する趣旨のものが規定されていますが、債権者として留意しなければならないものもあります。

刑法上、処罰の対象となっている業務妨害罪、収賄罪、贈賄罪について、破産手続上⑧⑨⑩として特別に罰則が設けられています。

これら以外に債権者が特に留意すべき罰則として、②⑪が挙げられます。

② 特定の債権者に対する担保の供与等の罪

第二百六十六条 債務者(相続財産の破産にあっては相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人又は遺言執行者を、信託財産の破産にあっては受託者等を含む。以下この条において同じ。)が、破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし、破産手続開始の決定が確定したときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

対象となる行為の典型例は、支払期限到来前の弁済です。

債務者(破産者)を対象として規定されている罰則ですが、債権者も留意すべきです。

破産手続は債権者間の平等・公平を原理・原則としています。この条文の対象行為は債権者の平等・公平を害する程度が重いために罰則が科されていますが、破産手続ではこのほかにも広く抜け駆け的な弁済が制限されています。

裁判所に選任された破産管財人は、このような行為に対し、財産や金銭の返還を求める権限(否認権)を有しています。

法的に認められていない限り、先んじて回収を図っても意味がないことになります。

⑪ 破産者等に対する面会強請等の罪

第二百七十五条 破産者(個人である破産者に限り、相続財産の破産にあっては、相続人。以下この条において同じ。)又はその親族その他の者に破産債権(免責手続の終了後にあっては、免責されたものに限る。以下この条において同じ。)を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

債権者が破産者のもとに押しかけ、胸倉を掴むような事態は決してドラマだけではありません。

破産されてしまった場合、債権者として重苦しい思いをすることは当然ですが、面会を強請するなどの実力によって、破産者やその関係者から弁済や保証を求める行為に及んではなりません。

4. 破産債権の届出

破産手続は、破産管財人が破産者の財産を確保し現金に換え、債権者に法律の規定に基づいて分配する手続です。

債権者は原則として破産手続でしか債権を回収することができません。

破産手続に則って破産債権の届出(破産債権届出書の提出)をおこない、配当を受けられるようにする必要があります。

5. 連鎖倒産防止のために

ただし、実際には、破産債権の届出をおこなったとしても配当すらおこなわれないことも多いです。連鎖倒産のような事態は避けなければなりません。

資金繰りのための主な制度として、

経営サポートの主な制度として、

  • 中小企業庁の「中小企業活性化協議会」(中小企業の収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援に向けた取組として、助言や再生計画作成等の支援)

などがあります。このような各種制度のご利用も併せてご検討ください。

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監修者:弁護士 堀内良

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。