ある日突然労働基準監督署から調査が!その時企業様はどうすれば?

よつば総合法律事務所の弁護士の松本です。
当事務所は、本記事作成の時点で、千葉県内の企業様を中心に、350社を超える企業様と顧問契約を締結させていただいており、日々企業様から様々なご相談をいただいております。

その中で、企業様から、「会社に労働基準監督署の調査が入りました!」というような労働基準監督署の関連するご相談を受ける機会が多くあります。

本日は、そもそも労働基準監督署がどのような役割を担っており、具体的にどのよう活動をしているのか、実際に調査が入った場合どのように対応すべきなのかについてお話しさせていただきます。

もし、この記事をお読みになっている企業様が、既に労働基準監督署からの調査があった(あるいは調査が入る予定が近日中にある)という場合は、弁護士などの専門家に今後の対応について一度ご相談いただくことをお勧めいたします。

1. 労働基準監督署とは?

労働基準監督署は、厚生労働省の機関の一つであり、全国に321署存在しています。そして、労働基準監督署の内部組織は、基本的には①方面(監督課)②安全衛生課③労災課④業務課(労働基準監督署全体の庶務・経理事務などを行う課)の4つに分かれています。

簡単に言いますと、労働基準監督署の役割は、管轄内の企業に対して労働基準法を遵守させることです。
企業と労働者の立場は本来対等であるべきですが、労働者を雇用する企業側の方が労働者よりも立場は強いことが多いです。労働基準監督署は、立場の弱い労働者が企業と対等になるための機関の一つと言えます。

2. 方面(監督課)は何をするところなの?

監督課は、労働基準法などの関係法令に関する各種の届け出の受付、相談対応、監督指導などを行っています。

例えば、労働者から労働基準法に違反する疑いがあるとの申告が労働基準監督署にあった場合に、実際に事業場を訪問し、事業場への立ち入り調査や事情聴取などを行い、法違反が認められた場合には、その違法状態を正すために是正勧告や改善指導などを行います。

また、度重なる指導にもかかわらず、企業側の法違反の状態が正されない場合等、重大・悪質な事案については、刑事事件として立件することもあります。

3. 安全衛生課は何をするところなの?

安全衛生課は、労働安全衛生法などの法令に基づいて、働く人の安全と健康を確保するための措置が講じられるように、例えば、クレーンなどの機械の検査や、事業場などに立ち入り職場での労働者の健康診断の実施状況などの確認を行っています。

4. 労災課は何をするところなの?

労災課は、労働者災害補償保険法に基づき、仕事に関する負傷などに対して、被災者や遺族の請求により、関係者からの聞き取り・現地調査・医学的意見の収集などの必要な調査を行った上で、労災保険給付を行っています。

5. 監督指導の状況

令和4年7月29日付で、厚生労働省は令和3年度の長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめ、これを公表しています。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象として実施されています。

令和3年4月から令和4年3月までの監督指導は、32,025事業場に対して実施されました。
そのうち、違法な時間外労働があったものとして是正勧告書が交付された事業場が10,986事業場あり、34%の事業場で違法な時間外労働が存在していました。

この10,986事業場のうち、月80時間を超えるものは、4,158事業場、月100時間を超えるものは2,643事業場、月150時間を超えるものは562事業場、月200時間を超えるものは121事業場でした。

6.まとめ

労働基準監督署の是正勧告は法的な強制力がない行政指導であるため、労働基準監督署から是正勧告を受けたとしても特に対応を行わない企業様もありますが、これを是正しない場合は、労働基準法に違反する状態がずっと継続することとなってしまい、最悪の場合は逮捕されることもあります。

そのため、労働基準監督署から調査が入った場合には、まずは一度弁護士などの専門家にご相談いただき、その上で慎重に対応されることをお勧めいたします。

7.当事務所でサポートできること

当事務所では、これまで、労働基準監督署が関与する案件を多く取り扱ってきました。そのため、以下のように、ご相談・方針の検討、実際の労働基準監督署対応、再発防止策の検討まで、幅広くサポートを行うことが可能です。

  • 労働基準監督署の調査事項の検証、方針の検討
  • 事実関係の調査、証拠収集(サポートを含む)
  • 労働基準監督署への同行
  • 労働基準監督署への報告文書の作成(サポートを含む)
  • 再発防止策の検討、アドバイス(社内規程の整備含む)

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文責:弁護士 松本達也

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。