誹謗中傷 投稿を削除するための基準

目次

  1. はじめに
  2. 投稿を削除するための法的根拠
  3. 投稿を削除するための基準
  4. 弁護士の感想

1. はじめに

最近はSNSの広がりによって、誰もが簡単に自分の意見を広く世間に発信できるようになりました。昔は、自分の意見を世間に広げるためには、大変な苦労が必要だったことからすると、今の世の中はインターネットを通じて簡単に意見を発信できる時代ということになりますね。

それに伴って、特定の企業や特定の人物を誹謗中傷するような投稿も目立ちます。インターネット上での誹謗中傷は、誰もが簡単に閲覧でき、削除しない限り投稿が残り続けるという意味では被害は甚大といえます。

そこで、今回は投稿削除の法的根拠と削除するための基準を説明していきたいと思います。


2. 投稿を削除するための法的根拠

誹謗中傷の投稿を削除するための法的根拠としては、不法行為構成と人格権侵害(判例上認められています。北方ジャーナル事件)という構成が考えられます。

(名誉毀損における原状回復)

民法第723条 他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

【人格権侵害差止請求】

最高裁大法廷昭和61年6月11日北方ジャーナル事件・上告審

「実体法上の差止請求権の存否について考えるのに、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法七一〇条)又は名誉回復のための処分(同法七二三条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからである。

3. 投稿を削除するための基準

過去の裁判例などを踏まえると、以下の①②③の3つの基準を満たせば、裁判でも投稿を削除できる可能性が十分にあります。

【事実摘示型の名誉毀損】

  • ① 特定の企業もしくは人物の社会的評価を低下させるような投稿の存在
  • ② 違法性阻却事由の不存在

    以下のいずれかに該当すれば、違法性阻却事由は存在しないといえる。

    • ア 公共の利害に関する事実ではないこと
    • イ 公益を図る目的がないこと
    • ウ 摘示された事実がその重要な部分について真実でないこと(反真実)
  • ③投稿がインターネット上で公開され続けていること(保存の必要性)

【意見論評型の名誉毀損】

  • ① 特定の企業もしくは人物の社会的評価を低下させるような投稿の存在
  • ② 違法性阻却事由の不存在

    以下のいずれかに該当すれば、違法性阻却事由は存在しないといえる。

    • ア 公共の利害に関する事実ではないこと
    • イ 公益を図る目的がないこと
    • ウ 摘示された事実がその重要な部分について真実でないこと(反真実)
    • エ 表現が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱していること
  • ③投稿がインターネット上で公開され続けていること(保存の必要性)

【最高裁判所第1小法廷判決昭和41年6月23日判決】

名誉毀損の違法性阻却事由について

「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である。

【最高裁第三小法廷平成9年9月9日〔ロス疑惑訴訟夕刊フジ事件・上告審〕】

事実摘示型の名誉毀損と意見論評型の名誉毀損の判断枠組みについて

「新聞記事による名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものである。」

事実を摘示しての名誉毀損にあたっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、右行為には違法性がなく、仮に右事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される」

ある真実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである」

意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、事実を摘示しての名誉毀損における場合と対比すると、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である。」

「右のように、事実を摘示しての名誉毀損と意見ないし論評による名誉毀損とでは、不法行為責任の成否に関する要件が異なるため、問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評の表明であるかを区別することが必要となる。」

【名最高裁第一小法廷平成16年7月15日判決】

事実摘示が意見論評かの判断基準

「問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評の表明であるかによって、名誉毀損に係る不法行為責任の成否に関する要件が異なるため、当該表現がいずれの範ちゅうに属するかを判別することが必要となるが、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である」「証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するというべきである。」

4. 弁護士の感想

ここまで過去の判例等を引用しつつ、投稿削除の基準を説明してきました。大きな判断枠組みとして、事実摘示型と意見論評型がありますが、事実なのか意見論評なのか曖昧なケースも多いです。

判例では、証拠等をもってその存否を証明できれば、事実摘示型で、そうでない場合は意見論評型と整理していますが、実際はかなり曖昧な基準で、裁判官の心証によってどちらのタイプに整理すべきなのかの判断が変わることも十分あり得ます。

誹謗中傷の投稿を削除して、さらに炎上するケースもありえるので、どのような方針で進めるのが適切なのかは弁護士と相談して決めるのがよいと思います。

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以上

文責:弁護士 辻悠祐

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。