1. そもそもパワハラ防止法とは
パワハラ防止法とは、改正労働施策総合推進法の通称のことです。
労働施策総合推進法自体も、正式な名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」とかなり長くて、正式名称を覚えるのは大変です。
この労働施策総合推進法に、パワーハラスメントを防止するための規定が大幅に追加されました。
2. パワハラ防止法の構造
パワハラ防止法には、雇用主がパワハラを防止するための措置が義務付けられています。構造が少し複雑なので、以下で説明します。
労働施策総合推進法 第三十条の二
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
↓具体的には
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)に内容が記載されています。
以上のように、法律だけ見ても何をすればよいのかよくわかりません。具体的な内容は、厚生労働省告示に記載されているわけです。
3. 気になる、パワハラ防止法の内容
色々あるのですが、企業様にとって重要な点としては、雇用主に以下の措置が義務付けられました。
① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
例)職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
例)相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
③ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④ そのほか併せて講ずべき措置
例)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
内容の概略については、厚生労働省リーフレットが分かりやすいです。
4. パワハラ防止法に違反した場合はどうなるのか
パワハラ防止法に違反したとしても、罰則は定められていません。
しかし、企業様に措置義務が講じられていることに変わりはなく、勧告を受けた事業者様が従わなかったときは公表することができるという措置が法律で定められています。
(助言、指導及び勧告並びに公表)
第三十三条
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。
2厚生労働大臣は、第三十条の二第一項及び第二項(第三十条の五第二項及び第三十条の六第二項において準用する場合を含む。第三十五条及び第三十六条第一項において同じ。)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
5. 気になる施行時期は?
2020年6月1日から施行されており、中小企業様に義務付けられるのは、2022年4月1日からとなります(それまでは努力義務とされています)。
6. 最後に
ハラスメントの問題は、現在社会全体の大きな関心事項であり、企業様にとってもハラスメント対策は重要な課題です。自社だけでハラスメントの対策や対応をすることは難しいと思います。ハラスメント対策で悩まれた際はぜひ専門家にご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。