令和3年6月7日、残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)を策定した旨の国土交通省からの発表がありました。
そして、具体的な残置物の処理等に関するモデル契約条項例についても国土交通省より発表されています。
モデル条項を利用すれば契約書を作成することはできますが、不動産オーナー様、不動産管理会社様の立場から、モデル契約条項の活用場面・注意点を解説します。
1. 活用場面はどのような状況があるか?
相続人が複数いる場合、そのうちの親しい相続人1人と契約する場合が典型的な場面です。
本来、相続人が複数いる場合には、物品の処分は全相続人の同意が必要であるのが原則ですが、契約をしておけば1人の相続人の同意で賃貸借契約の解除や物品の処分が可能にあります。
2. 貸主・不動産管理会社が受任者として業務を行うことができるか?
国土交通省が発表した残置物の処理等に関するモデル契約条項の解説では、
「解除関係事務委任契約については、賃貸人を受任者とすることは避けるべきである」
「賃貸人から委託を受けて物件を管理している管理業者が受任者となることについては、直ちに無効であるとはいえないものの、賃貸人の利益を優先することなく、委任者である賃借人(の相続人)の利益のために誠実に対応する必要がある。」
とされています。
貸主・不動産管理会社が受任者として業務を行うことができるかどうかについては今後の実務の運用及び裁判例の推移にもよります。
もっとも、現時点ではトラブル発生のリスクが高いので避けた方が無難でしょう。
3. 搬出はできるが処分方法をめぐるトラブルの可能性は残っています!
残置物関係事務委託契約をしていた場合、残置物について建物から出すことは可能です。しかし、処分方法や処分価格について相続人と認識が一致しない場合、トラブルになる可能性があります。
例えば、1万円で処分した物品について実際には50万円の価値があった場合、差額について相続人が損害賠償請求を行う可能性があります。
特約を設けて損害賠償請求の金額や範囲などを限定した方がよいかもしれません。
4. 費用の請求をめぐるトラブルの可能性は残っています!
例えば、物品の処分費用として30万円の費用が発生した場合、相続人が支払に応じないという可能性があります。
事前に費用をお預かりしておくなどの方法もあるかもしれませんが、処分費用に関して100%トラブルを避けることは難しいかもしれません。
5. まとめ
- 残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)を国土交通省が策定
- 契約当事者は借主の相続人のうちの1人が理想
- 契約をしても費用をめぐるトラブル発生の可能性は残存
国土交通省の参考URL
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