インターネット上の誹謗・中傷投稿を削除する方法について

SNSの普及に伴い、最近では企業の評判や口コミをまとめたサイトなどがよく見られるようになりました。

このようなサイトに、退職した元従業員などから、企業の悪口や虚偽の悪評が投稿されてしまうと、企業の採用活動や営業に大きな影響が出てしまいます。

今回の企業法務ブログでは、インターネット上の誹謗中傷投稿を削除する方法について、簡単にご説明いたします。

1. フォーム等による請求 サイト管理者に対する削除依頼

評判や口コミをまとめたサイトには、サイト管理者への削除要請やお問い合わせのフォームが存在している場合があります。

このようなフォームから削除を要請すると、1日から数日で対応なされることが多いです(何らの回答がない場合もあります。)。

フォームからのメッセージを管理者が確認しているサイトであれば、削除してもらえる可能性が高いですが、投稿した人を特定する情報の開示(発信者情報の開示)請求については、応じてくれないことが多いです。

この方法が適しているケースとしては、①フォームからの依頼で、適切に対処されることが判明しているサイトに対する削除要請、②早急に削除したい場合、などです。

もっとも、投稿した人が誰か特定したいという場合には、投稿を先に削除してしまうと、投稿者を特定することが出来なくなってしまうので、スクリーンショットなどで当該投稿について証拠化したのちに、フォーム等から削除要請をするとよいでしょう。

2. プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求

インターネット上の違法・有害情報に対しては、被害者救済と表現の自由という重要な権利・利益のバランスに配慮しつつ、プロバイダにおける円滑な対応が促進されるような環境整備がなされています。

プロバイダ制限責任法のガイドラインに則って、投稿の削除をプロバイダに要請することが出来ます。

書式はプロバイダ責任制限法関連情報Webサイトに掲載されています。こちらの方法も、フォームによる削除要請と同様、任意の削除を求めるものになります。

手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」の作成・送付
  2. 請求を受けたサイト管理者等は、発信者に意見照会を行う
  3. 意見照会を受けた発信者は、サイト管理者等に回答を行う
  4. 回答を受けたサイト管理者等は、削除の決定又は不決定の通知する

ガイドラインによる請求の場合、回答までに1か月前後かかるサイトが多いです(1週間程度で回答がなされるサイトもあります)。

この方法でも、削除に関しては対応されることもありますが、発信者情報開示については慎重です。

この方法が適しているケースとしては、①個人情報の記載や差別的表現など記載内容自体から権利侵害が明らかな場合、②発信者情報開示は求めない場合、などです。

3. 法的手段による削除 投稿記事の削除を求める仮処分の申立て

サイトのフォームや、プロバイダ責任制限法に則った請求でも削除ができない場合には、裁判手続きを利用して、投稿を削除していくことになります。

手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 仮処分命令申立書の作成・提出
  2. 双方審尋期日、担保決定、供託
    ※担保金額の目安としては、30~50万円程度
  3. 仮処分命令の発令
  4. 削除(サイト管理者等は仮処分命令の送達を受けた場合、任意に削除するのが一般的です)

裁判所の決定が出るまでに2週間程度期間を要します。裁判所の決定を取得できれば、投稿の削除はもちろん、投稿した発信者を特定する情報の開示も速やかに対応されます。

この方法が適しているケースとしては、①権利侵害の判断において記載内容の真実性が問題になる場合、②確実に対処したい場合、などです。


インターネット上の投稿は、誰でもアクセスでき、誰でも拡散することができるため、大きな影響が生じてしまう可能性が高いです。

企業に対して誹謗中傷する投稿がなされた場合には、素早く削除し、場合によっては投稿者に対して損害賠償請求等の対応をしていく必要があります。

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文責:弁護士 大友竜亮

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。