新型コロナウイルスの感染拡大については、まだまだ予断を許さない状況が続いています。
中小企業の方々におかれましては、事業に大きな影響を受け、従業員の賃金の扱いについて検討されることも多いかと思います。
今回は、新型コロナウイルスに関する労働問題の中でも、特に問題となりやすい従業員の賃金についてご説明いたします。
なお、令和2年9月16日、17日に、コロナ関連の労務トラブル対応に関する無料オンラインセミナーを開催いたします。
コロナ第2波及び長期化に備えて、雇用の継続や賃金支払い、労務管理等の対応策を法的観点を交えてお話します。また在宅ワーク導入時のルール作成、情報やセキュリティ等の運用方法もQ&Aと共に解説しますので、興味のある方は是非ご参加ください。
1. 従業員が通常通りに仕事ができる健康状態であるかどうか
雇用契約は、働いている人が仕事をして、雇い主が賃金を支払う契約になります。仕事をすることで賃金が手に入るわけです。
つまり、通常通りに仕事ができる健康状態でなければ、賃金を請求することはできません。
2. (健康状態に問題がない場合)休業は不可抗力によるものか
では、健康状態に問題がないにもかかわらず、自宅待機を命じられた従業員は賃金を請求できるでしょうか。健康状態に問題がないので、本来であれば賃金を請求することができます。
もっとも、自宅待機を命じる理由が不可抗力によるものであれば、賃金を請求できません。
現在の民法では、不可抗力により従業員が仕事ができない場合は、会社は賃金の支払いを拒むことができます。
反対に、不可抗力によるものではない理由で、会社の責めに帰すべき事由によって仕事ができない場合には、会社は賃金の支払いを拒むことは出来ません。
3. (健康状態に問題がある場合)健康に支障を生じた理由は業務関連かどうか
残念ながら現在において院内感染により医療従事者が新型コロナウイルスに感染している事例もあります。このような場合は、労災保険法に基づき休業補償を得ることになります。
この場合、会社の管理体制に問題がある等すれば、労災保険の休業補償以上の保障を会社が行わないといけない場合があります。
4. 休業補償は平均賃金の6割を支払えばよいのか
不可抗力ではない理由で従業員を休ませた場合、会社が従業員に、当該従業員の平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりませんが、民事上は話合い等で休業中の賃金を決めないといけません。
労基法26条は、「使用者の責めに帰すべき事由」により休業させる場合は、使用者は平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務を負うと定めています。
この「使用者の責に帰すべき事由」とは不可抗力を除いて、使用者側に起因する経営、管理上の障害も含まれます。そのため、少なくとも平均賃金の6割を支払えば労働基準法違反にはなりません。
平均賃金の6割を休業手当として支払えば、労基法違反にはなりませんが、民事上は賃金を10割請求される可能性があります。
もっとも、従業員と会社が合意、もしくは元々の雇用契約に基づけば民事上の問題はありませんので、就業規則・雇用契約書に休業の場合の休業手当を平均賃金の6割を支給すると定めていれば問題ありません。
5. 新型コロナウイルスに関して発生する労働問題
以上、新型コロナウイルスと従業員の賃金・休業手当について簡単に説明させていただきましたが、新型コロナウイルスに関して発生する労働問題は、解雇・雇止め、在宅ワークの導入、内定取り消し、副業の規制等々、その他いろいろございます。
新型コロナウイルス関連の労務トラブルの対応について不安がございましたら、ぜひセミナーにご参加ください。
本ブログの内容に関わらず、企業様の法律問題でお困りの際は、下記よりお問い合わせください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。