本社と業務委託契約を結ぶ代理店で働いていた男性が、本社に不当に解雇されたとして救済申立を行ったところ、北海道労働委員会が男性を復職させるよう命じた事件が昨年ありました。
事件の概要
北海道労働委員会が公表した資料によると、事件の概要は、組合の結成を嫌悪した会社が、活動の中心人物であった男性を排除するために失職に追い込んだというものです。
事件の争点
事件の争点は、男性が雇用契約を結んでいたのは代理店であり、直接雇用契約の存在しない本社が使用者に該当するかというものでした。
これは、労働法の保護を受けるためには「使用者」と「労働者」の関係になければならず、雇用主である代理店ではない本社が労働法における「使用者」に該当するかが問題となったものです。
事件の経過
北海道労働委員会は、直接雇用契約の存在しない本社と代理店の関係について、代理店を本社の組織上の一部門とみなしうる実態があるとし、代理店に属する男性も実質的に本社の指揮命令下にあること等から、会社を「使用者」と認めました。
その結果、北海道労働委員会は男性についての復職命令を出しました。
判断の理由
北海道労働委員会が会社を「使用者」と認めた理由は、下記の事由の総合判断によるものです。
- 本来、代理店は本社から独立した事業体として自己の責任と判断で営業活動を行うことが予定されているはずです。
しかし本件の業務委託契約は、代理店に対する本社の拘束が強い、立ち入り検査の行き過ぎた運用がなされていました。 - 代理店主は、本社の指示を忠実に実行することが主要な業務とされ、本社と代理店と代理店従業員は実質的に一体の組織を形成し、一般的な範囲を超える厳しい指揮命令がなされていました。
- 本社が代理店主の昇格・降格・人事異動を行うことは考えられないはずが、本社が査定・人事異動を行っていました。
- 代理店従業員の実質的な採否の最終的な権限は本社が有していました。
- 解雇などの形式的な決定は代理店主が行っていましたが、背景には本社の意向が存在し、本社の方針を重視さぜるを得ない実態がありました。
最後に
労働委員会による復職命令が出されると、会社は従業員を直ちに復職させ、復帰までの賃金を支払うこととなってしまいます。
これは、大企業から中小企業までどんな企業にも起こりうる事態です。解雇の問題は、発生させないことが重要です。
解雇が問題となりそうな事件については、必ず弁護士までご相談をいただければと思います。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。