新型コロナウイルスと整理解雇

新型コロナウイルスの影響で売上が減少し、人員整理を検討せざるを得ないという企業様が増えております。

そこで今回のブログでは、人員整理の方法としての整理解雇を行う上での注意点についてお話しさせていただきます。

※以下の情報は令和2年6月17日現在の情報のため、内容に変更の可能性があります。

1. 整理解雇とは

整理解雇とは、主として経営上の理由に基づく解雇のことをいい、普通解雇の一つです。通常、会社が労働者を解雇するためには、解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる必要があります(労働契約法16条)。

整理解雇の場合は、懲戒解雇などとは異なり労働者に落ち度がなく、使用者側の事情に基づいて行われます。

そこで、整理解雇については、裁判上通常の解雇よりも厳格に解雇の有効性について判断される傾向があり、具体的には、4つの要素(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務を尽くしたこと、③解雇される者の選定基準及び選定の妥当性、④事前に解雇される者へ説明を尽くしていること)を踏まえて整理解雇の有効性が判断されます。

2. 整理解雇の4要素とは

(1)人員削減の必要性

人員削減の必要性は、使用者による人員削減措置について企業の合理的な運営上やむを得ない必要性が認められるかという判断要素です。

使用者が倒産必至の状況であることまでは必要とはされていませんが、使用者が新規採用を行いつつも、従業員を整理解雇するような事案においては、人員削減の必要性がないとされるケースが多いです。

(2) 解雇回避努力義務を尽くしたこと

使用者は解雇を避けるために最善の努力を尽くす必要があると考えられており、解雇に先立ち、配転、出向、一時帰休、希望退職者の募集、賃金・賞与・役員報酬の減額等を検討・実行し、それでも解雇せざるを得ないという場合でなければ、整理解雇は認められません。

また、解雇回避努力の一つとして、雇用調整助成金の利用の検討も必要になります。これは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた会社が、労働者に対して一時的に休業等を行い、労働者の雇用を維持した場合に、休業手当等の一部を助成する制度です。

(3) 解雇される者の選定基準及び選定の妥当性

使用者が整理解雇をする必要があるとしても、被解雇者の人選については、恣意的なものではなく、客観的かつ合理的な基準を設定し、その基準を公正に適用することが必要です。

基準を全く設定することなく実施された整理解雇は、裁判例上無効とされているケースもあります。

(4) 事前に解雇される者へ説明を尽くしていること

使用者は労働者に対し、整理解雇の必要性やその内容につき、事前に十分な説明を行う必要があります(労働組合がある場合には、当該組合との間で協議を行う必要があります)。

(4)以外の整理解雇の各要素が肯定された場合であっても、使用者が十分な説明を怠れば、解雇は無効となる可能性があります。

3. 最後に

整理解雇を検討している場合には、事前準備の段階から弁護士が関与することが望ましいです。整理解雇ではなくまずは退職勧奨を行うべきであった事案も実際には多く見られます。

整理解雇を検討されている企業様は、整理解雇を実施する前に是非とも一度ご相談ください。

文責:弁護士 松本達也

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。