残業代の時効が延長に!企業の対応策は?

1.はじめに

これまでも議論され、過去のブログでも取り上げましたが、残業代と消滅時効のお話です。

2月4日に、厚生労働省のHPにおいて、「第201回国会提出法律案」がアップされました。同法律案の中には、「労働基準法の一部を改正する法律案」も含まれております。

法律案の段階ですが、おそらくこの内容で法律が成立するものと思われます。

2.改正の概要

改正の概要は、下記の通りです。

今年の4月1日に施行される債権法改正に合わせた形での改正となります。

  1. 賃金請求権の消滅時効を5年間に延長する(これまでは2年だった)
  2. ただし、経過措置として、当分の間は3年間とする(すぐに5年になるわけではありません。具体的な時期は現状不明です。)
  3. 施行日は、今年の4月1日とする(遡って適用はされません)。

3.残業代の消滅時効期間が延びるとどうなるか?

単純計算で、時効が3年になれば現状の1.5倍、5年になれば現状の2.5倍の残業代が請求可能となります。

会社側で残業代の対応を行うことは多々ありますが、現状の2年でも、残業代の請求金額が1000万円を超えることも少なくありません。

これが3年になれば1500万円、5年になれば2500万円になります。会社の被るダメージは更に大きくなり、会社の存続にも大きく関わる問題といえます。

また、現状でも、労働者側で残業代を専門に扱っている法律事務所は多くありますが、こういった事務所が更に増えることが想定されます。

安価で(着手金0円で残業代を扱う事務所は、現状でも多くございます)、容易に弁護士にアクセスできる状況になるため、特に退職従業員から残業代を請求されるケースは、非常に多くなると思われます。

4.会社の対応策は?

働き方改革(長時間労働の規制)も併せ考えると、常態的に残業が発生している会社においては、残業自体を削減できるのが一番望ましいですが、社内規程(就業規則・賃金規程)の見直しだけでなく、場合によっては賃金体系そのものの見直しも必要となります。

固定残業代という形で、残業代を定額支給している会社も多くございますが、裁判上、固定残業代の有効性は慎重に判断される傾向にあり、「単に制度がある」状態は、非常に危険です。

5.おわりに

会社側の残業代案件を多く扱う中で、「制度さえしっかりと整っていれば」と思うことは非常に多いです。同じ給与を支払う場合でも、「問題のある賃金制度に基づき支給していた場合」と、「しっかりとした賃金制度の下で支給していた場合」とでは、結果が180度変わることもあります。

「働き方改革」に引き続き、特に中小企業にとって厳しい制度変更が続いています。一気にすべてを変更・解消することは難しいので、順番をつけて、一つずつ対応していくほかありません。

少しでも心配な企業様は、一度、知り合いの弁護士・社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

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文責:弁護士 村岡つばさ

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。