改正会社法のポイントを説明します

こんにちは。

令和元年12月4日の参院本会議で改正会社法が可決され、成立しました。

同法は、一部を除いて2021年6月までに施行されることになっています。重要な改正がいくつも含まれておりますので、今回はその改正会社法について、ピックアップしてご説明させていただきます。

1.上場企業の社外取締役の設置義務

改正会社法では、以下の4つの要件を満たす上場企業に関して、社外取締役の設置を義務付けました。

  1. 監査役会設置会社であること
  2. 株式の譲渡制限がないこと
  3. 資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の大会社であること
  4. 有価証券報告書の提出義務があること

そもそも取締役会の機能には、業務執行の決定及び取締役の職務執行の監督が含まれております。今回の社外取締役設置義務化は、会社の意思決定機能の強化に加え、社外の第三者が経営陣を監督することによって不正行為を抑止することを期待されて行われました。

2.株主総会の資料のウェブサイト上での提出

現在の会社法では、株主の個別の同意を得ない限りウェブサイトで資料を提供することができず、原則書面で提出する必要があったのですが、改正会社法では、定款で定めることにより、株主総会の資料をウェブサイトで株主に提供することができるようになりました。

ポイントは以下のとおりです。

  1. 電子提供措置をとる旨を定款で定める
  2. 株主総会の日の3週間前までに、会社のウェブサイトに情報を掲載
  3. 株主総会の日の2週間前までに、ウェブサイトのアドレス等を記載した招集通知を送付
  4. 株主が書面交付を請求してきた場合には、株主総会の日の2週間前までに書面を提供する

3.株主提案権の制限

改正会社法では、株主が提案することができる議案の数を10までとする上限が新たに設けられました。

近年では、2012年の野村ホールディングスの株主総会において、「社名を野菜ホールディングスに変更する」等合計100件の株主提案が行われたことがありました。

そのように株主提案権を濫用されて株主総会の議事進行が滞ってしまうこと等を防止することを目的として、今回の改正会社法では、株主が提案することができる議案の数に制限が設けられました。

4.取締役の報酬に関する規律の見直し

通常、取締役の報酬は、取締役会又は代表取締役が決めていることが多いですが、改正会社法では、上場会社等において、取締役会での報酬の決定方針を定め、その概要等を開示することを定めています。

5.会社補償に関する規律の整備

会社の役員が株主代表訴訟などで訴えられた時、会社が弁護士費用や賠償金を補償するために必要な手続き規定が新たに設けられました。

また、それに合わせて取締役が負担する賠償金などを補填する会社役員賠償責任保険(D&O保険)に関する規定も設けられました。

これらは、それまで会社と役員の間の利益が相反することになることもあって直接的な規定がありませんでしたが、改正会社法で新たに規定ができました。

6.最後に

今回ご紹介したのは改正会社法の一部で、その他にも改正された点はいくつもあります。ご不明な点がありましたら弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

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文責:弁護士 加藤貴紀

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

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