複数の女子学生にセクハラ発言を行ったとして、停職6か月の懲戒処分を受けた大学院の男性教授が、処分が重すぎるため不当として無効確認等を求めた控訴審判決で、広島高裁が教授の請求を棄却する判断を行ったとの報道がありました。
1.報道によると
報道によると、鳥取地裁における第1審では、わいせつな発言等は認定されず、学生にアカデミックハラスメント行ったとして、「停職期間は3か月程度に留めるべきで、6カ月は重すぎ、懲戒権の濫用にあたる」として大学側の処分を無効としました。
しかし控訴審である広島高裁は、セクハラの事実を認定し、教育上の地位や人間関係の優位性を背景に複数の学生にセクハラ発言を繰り返したのは悪質であり、処分が社会通念上相当性を欠くとは言えないと判断。一審の鳥取地裁の判決を取り消し、教授の請求を棄却しました。
2.セクハラに対する懲戒処分
では、本件裁判ではどのようなことが争われたのでしょうか。懲戒処分がどのような処分であるか、確認をしていきたいと思います。
そもそも懲戒処分とは、従業員と企業秩序違反行為に対する制裁罰と考えられています。そのため、就業規則に明記し、労働契約として明確にしておく必要があります。
そのうえで、労働契約法15条が「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めているので、処分の内容に客観的合理的な理由があり、社会通念上相当でなければならないとされています。
社会通念上相当か否かは、企業秩序違反行為(セクハラ)の内容、頻度、期間、被害者との関係、被害者の数、反省の度合い、過去の行い、処分の内容(けん責、戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇等)等を総合考慮して判断されます。
そのため、本件の第1審である鳥取地裁においては、セクハラの事実自体が認定されなかったことから6か月の停職処分は重すぎるとされました。控訴審である広島高裁においては、セクハラの事実が認定され、諸事情を総合考慮の上、処分が社会通念上相当性を欠くとは言えないとされました。
3.懲戒処分を行うにあたっては
企業内で発生した問題行為について、再発防止やセクハラのない落ち着いた職場環境の形成のため重大な不利益を伴う懲戒処分を行う場合、このような裁判で争われることもあり得ます。処分の内容に不安がある経営者の方は、お気軽に弁護士までご相談をいただければと思います。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。