令和元年10月1日から消費税が、8%から10%に増税されました。
消費税転嫁対策特別措置法は、今般の消費税の引上げに当たって、消費税の転嫁拒否等行為を禁止しています。中小事業者が消費税を価格へ転嫁しやすい環境を整備するため、消費税転嫁対策特別措置法に基づき消費税の転嫁拒否等の行為に対して、政府による監視・取締りが行われています。
今回のブログでは、増税に伴いうっかり会社がやってしまいそうな問題について、簡単にご紹介いたします。
1.規制対象となる消費税の転嫁拒否等の行為
特定事業者(売手)から受ける商品又は役務(サービス)の供給について、特定事業者(買手)が売手に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行う場合が規制対象となります。
消費税の転嫁拒否等の行為を行うと、公正取引委員会、主務大臣、中小企業庁長官等による調査が行われ、転嫁拒否による不利益の回復など仏様な指導が行われます。
また、重大な転嫁拒否等の行為を行った場合には、公正取引委員会による勧告が行われ、事業者名等が公表されてしまいます。
2.禁止されている消費税の転嫁拒否等の行為は、次の5類型があります
- 買い叩き
買手は、合理的な理由なく、通常支払われる対価に比べて対価の額を低く定めることにより、消費税の転嫁を拒否してはいけません。
例えば、消費税の引上げ前に、税込価格1万円(税抜価格9,259円)で取引していたものを、引上げ後も税込価格1万円(税抜価格9,091円)とする行為です。消費税率が引き上げられたら、その分対価を引き上げなければ違反となりますので、注意してください。 - 減額
買手は、合理的な理由なく、消費税率引上げ分の全部又は一部を、事後的に減じて支払うことにより、消費税の転嫁を拒否してはいけません。
例えば、取引代金を1ヶ月ごとに支払うこととしている場合に、1ヶ月より短い単位(納入の都度など)で消費税額の計算を行い、計算上生じた端数を処理して支払った結果、1ヶ月に納入された商品の税抜価格を合計して消費税を計算した場合より1円以上減じるときも、減額として違反となります。 - 商品購入、役務利用、利益提供の要請
買手は、消費税の転嫁を受け入れる代わりに、買手の指定する商品を購入させたり、役務(サービス)を利用させたり、また、経済上の利益を提供させる行為を行ってはいけません。
例えば、以下のような、特別な値札を無償で付けて納入することを要請した事例は、違反事例となります。Ex)大規模小売事業者(買手)は、衣料品の納入業者(売手)に対し、買手が費用負担することなく、消費税率引上げの際に値札変更が簡単にできる特別な値札(※シールをはがすと新税率での値札となるような値札等)をつけて納入することを要請した。 - 本体価格での交渉の拒否
買手は、価格交渉を行う際、売手から本体価格(税抜価格)での交渉の申出を受けた場合には、その申出を拒否してはいけません。
したがって、買手が、「税抜価格の見積書を持ってきても、うちは、税込価格の見積書しか受け取らないよ。」と言って、税抜の本体価格での商談を拒否することは違反となります。 - 報復行為
買手は、売手が消費税の転嫁拒否等の行為があるとして公正取引委員会等にその事実を知らせたことを理由として、取引数量を減じたり、取引を停止したり、不利益な取扱いを行ってはいけません。
3.その他、軽減税率制度の導入に伴う注意点
令和元年10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられると同時に、軽減税率制度が導入されます。軽減税率制度の導入に伴い、消費税転嫁対策特別措置法上は、例えば、次のような行為が問題となります。
小売業者(買手)が、飲食料品の販売に際し使用される包装材料や容器の納入業者(売手)に対し、これらの包装材料等には標準税率(10%)が適用されるにもかかわらず、自社が販売する飲食料品が軽減税率(8%)の対象品目であることを理由として、消費税率引上げ分を上乗せせず、消費税率引上げ前の対価と同額に据え置く行為は、買い叩きとして違反行為になります。
4.おわりに
消費税の増税に伴い、企業間の取引にも大きな影響が生じることとなります。
今回紹介させていただいたような消費税の転嫁拒否等の行為は、消費税転嫁対策特別措置法により規制対象となっておりますので、うっかり行ってしまわないよう今一度ご確認ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。