先日、複数の大手芸能事務所に労働基準監督署が是正勧告を行っていたことが報道されました。
“是正勧告とは”や“是正勧告に従わなかった場合どうなるか”といった点については、「大手芸能事務所に対する是正勧告1」で書いた通りです。
今回は、各大手芸能事務所に行われた是正勧告の内容について確認してみたいと思います。
1.芸能事務所Aに対して
報道によると、芸能事務所Aに対しては、2013年の段階で労使協定(三六協定)を届け出ず、従業員に残業をさせたとして是正勧告が行われたとのことです。さらに、昨年は、月に1日も休まず働いていた従業員がいた等として是正勧告が行われたとのことです。
三六協定とは、会社が三六協定を締結して労働基準監督署長へ届け出た場合、会社は1日8時間・1週40時間の基準を超える労働をさせても、労働基準法違反の責任を問われないこととなる協定です。
会社員の方はよく聞く言葉かもしれません。三六協定は労働基準監督署長へ届出が行われなければなりません。本件では、この届出が行われていなかったようです。
また、労働基準法では、会社は従業員を毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。月に1日も休まず働いていたということであれば、労働基準法違反となります。
2.芸能事務所Bについて
報道によると、芸能事務所Bに対しては、2012年の段階で月100時間を超える残業があったとして是正勧告が行われたとのことです。さらに、昨年は、就業規則の変更を変更したのに労働基準監督署長に届け出ていなかったことや、休日勤務の割増賃金を充分払っていなかったとして是正勧告が行われたとのことです。
月100時間の残業については、前述の三六協定が関係しています。芸能事務所Bは月50時間までの残業を認める三六協定を締結していたとのことです。よって、三六協定の上限を超えてしまったため労働基準法違反となります。
就業規則の変更については、労働契約法が規定する条件を満たす場合に会社は就業規則の変更を行うことが可能です。そして、常時10人以上の労働者を使用している場合、就業規則を変更すると労働基準監督署長へ届け出る必要があります。よって、労働基準監督署長に届けて出ていなかったことが、労働基準法違反となります。
休日勤務の割増賃金を払っていなかったことについては、法が定める割増賃金を払っていなかったということ自体が労働基準法違反です。
3.芸能事務所Cについて
報道によると、芸能事務所Cに対しては、2014年の段階で月の労働時間が400から500時間に及んだとして是正勧告が行われたとのことです。さらに、昨年は残業時間が三六協定で定めた上限時間を超えていたとして是正勧告が行われたとのことです。
月の労働時間が400から500時間に達したということは、正確な残業時間は報道からは不明ですが、残業時間が当然に三六協定で定めた上限時間を超えていたということとなります。よって、前述の三六協定が関係してきます。2014年、昨年共に三六協定の上限を超えてしまったため労働基準法違反となります。
4.まとめ
どのような事実が労働基準法違反になるか法律は複雑です。そのため、事前の予防法務としての正しい労務管理を行うことが何より大切です。
不安に思う経営者の方は、一度弁護士にご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。