未払残業代請求への対策をすべきタイミングとは?

ここ最近、従業員から未払残業代を請求されるケースが継続的に増え続けており、昨今の弁護士の増加や、働き方改革の流れもそれを加速させているように思います。

未払残業代請求への対策に関しては「うちはまだ何も問題起きてないし、ひとまず何もしなくても大丈夫でしょ」というお声を聞くことも珍しくありませんが、実際のところ、同業他社の事例などを聞き、「本当にこのままでよいのだろうか」と不安を感じている経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は、不安に思った「今」こそ、対策に着手すべきと考えます。

なぜそのようにいえるのか、詳細は以下をご覧ください(対象は中小企業の皆様を想定しています。)。

1.トラブルが起きてからでは遅い?

トラブル対策というのは、何となく後ろ向きな印象もあり、正直あまり考えていて楽しい話ではないように思います。これまでトラブルがなかったのであれば「後でいいか」という気持ちになってしまうのもわかります。

しかしながら、未払残業代トラブルは、事後的な対応が大きなリスクとなります。

なぜなら、一人の従業員との間で未払残業代に関するトラブルになったとしても、その問題はその従業員だけに留まらないからです。

多くの場合、同様の勤務形態、働き方をしている従業員全員について、同じようなリスクを抱えていることになります。従業員が多数いればいるほど、その分大きなリスクを抱えていることになりますので、従業員が少ないうちにきちんと対策を取っておくべきといえます。

また、一部の従業員から未払残業代の請求がなされている場合、他の従業員が会社の対応を注視していることも珍しくありません。

会社として本来すべき法的な反論があるにもかかわらず言われたままに支払ってしまい、他の従業員による請求を誘発してしまうこともあります。

他にも、残業代の請求に対して不誠実な対応を取ったことで、「会社vs従業員」という全体を巻き込んだ紛争に発展するおそれもあります。

昨今の人手不足(かつ転職が比較的容易)の時代では、よりこのリスクが増しており、従業員が次々と退職してその後に残業代を請求されているケースもあります。

2.世間の動向をみても、今すぐ対応しないとまずい?

既にご存知かもしれませんが、この度の働き方改革関連法案で、中小企業は来年4月から残業時間の上限規制を受けることになります。労働時間の状況の把握については既に本年4月から義務となっております。

今後労働時間をきちんと把握しないと、残業代請求のリスクにとどまらず、過労死についての責任を問われるリスクや、刑事・行政上の責任を問われるリスクも増すことになります。

また、2023年4月1日以降、中小企業の猶予措置が撤廃されて、60時間超の割増率が50%に上がります。加えて、まだ議論中ではありますが、残業代の時効が現行の2年より延長される可能性が高いといわれています。

そうすると、今と同じ残業時間でも、今後割増率が変わったり、請求ができる期間が長くなることで、支払う残業代が高額化するおそれがあります。

なお、一定の労働時間数に対応した定額(固定)残業代を導入している企業様も多いかと思いますが、残業時間の上限規制に伴い、長時間の残業を想定した定額残業代制度の違法性が問われうるリスクが増しておりますので、その点の注意が必要です。

3.取り急ぎ、どのような対応をすべきか?

まずは現段階での「個人」毎、「部署」毎、「時期」毎の各残業時間を正確に把握し、上限規制への対応が可能かどうか見極める必要があるでしょう。難しい場合には、残業を減らすための対策を早く講じなければなりません。

合わせて、労働時間の管理や把握が正確にできているのか(特に自己申告制)も見直す必要があると思います。

労働時間の適正な把握や管理がなかなか難しいのであれば、改正法の施行前に適正な仕組み・ルール作りや、社外からのシステム導入を検討する必要があるでしょう。

いかがでしょうか。対策をするか悩まれているということは、心のどこかで従業員の残業について不安な部分があるということかと思います。

早く検討するに越したことありませんので、どうしたらよいかわからないということであれば、そのご不安な気持ちを社会保険労務士や弁護士などの専門家にお話してみることから始めてみてください。

以上

文責:弁護士 三井伸容