介護事業所と人事労務トラブルについて

いよいよ有給取得の義務化が今春から始まりました。
その影響もあってか、最近は働き方改革への対応に頭を抱える社長や担当者の方からのご相談が増えています。

また、年度を跨ぐにあたって、採用や退職、労働条件の変更などが生じる会社様も多いため、それに伴うトラブルのご相談も増えております。

実は人事労務の問題といっても、業種によって働き方や待遇、人材の供給バランスなどが全く異なるため、千差万別です。今後このブログでは、様々な業種ごとの人事労務トラブル対応についてお話させていただきたいと思います。

今回は、最近弊所でもご依頼が増えている介護事業所様向けにお話したいと思います。

1.介護事業所は人事労務トラブルが多い?

「介護」といえば、世間一般からしても、人手不足の業界のイメージがあるかと思います。実際、お客様のお話を聞いても、人手不足の問題が一番深刻な問題のように感じます。

人手不足の業界は、人材の流動性が高く、比較的人事労務トラブルが生じやすい傾向にあります。

また、私は、毎年厚生労働省が公表している精神障害に関する労災の統計をチェックしているのですが、うつ病といった精神障害に関する労災の申請や認定が多い業界として、最近でも介護関連業界があげられています。

このような事情からすると、介護事業所は他の業種と比べて人事労務トラブルが生じやすいといえるのかもしれません。

2.介護事業所が陥るかもしれない人手不足の負のスパイラルとは?

人手不足の問題が非常に厄介なのは、一度問題が生じると、どんどん人事労務トラブルの悪循環を引き起こす点です。

上記の図は、私がセミナー等で人手不足問題のおそろしさをご紹介するときにお示しするものです。

この図が示すように、人材の流出が原因で社内の人手が不足すると、通常はより仕事も忙しくなり、一人当たりの負担も増します。

そうすると、その分働く人のストレスも増え、人間関係のトラブルも起きがちです。

このような状況では、採用も無理をしてしまいやすいので、会社と従業員のミスマッチの可能性も高まります。

このような状態だと、残念ながら、他のトラブルも雪だるま式に増えていくことが想像に難くないと思います…。

3.介護事業所と働き方改革対応の必要性

上記の図をご覧いただくとわかるのですが、上記悪循環の元をたどると、様々な労務対策の不十分が影響していることが多いように思われます(私見です。)。

例えば、この度の有給取得義務化に関していえば、同業他社が今後対応していく中で後れを取ってしまうと、ニュースなどで制度を知っている従業員からみれば不満が溜まりますし、有給が取れている同業他社と比べて待遇が見劣りしてしまうかもしれません。

昔と比べて、同業他社の待遇の差がインターネット等で簡単に比較できる時代だからです。

そのような状態が悪化すると、有給をきちんと取得できることをアピールしている同業他社に人材が流出するおそれがあります。

先日私が娘と2人で某ファミリーレストランに行った際、アルバイト求人用のポスターに有給をきちんと取得できる職場であることが大々的にアピールされていました。

今後はこのような作戦を取っている大企業との人材獲得競争になるのかもしれません。

同様に、同一労働・同一賃金といった問題も、介護業界の今後の人材獲得競争に影響を与えていく気がします。

以上みてきたとおり、上記のような悪循環を止めるためには、まず昨今の働き方改革にきちんと対応していくことが必要だと感じています。

厚生労働省でも、対応に苦慮する事業所向けのわかりやすい資料がありますし、もしそれらを見てもどうしたらよいかわからないのであれば、社会保険労務士や弁護士などの専門家にまずは相談してみるのが良いと思います。

以上

文責:弁護士 三井伸容