当ブログの中にある、「経営者こそ遺言の作成を!」と題する記事にも記載されている通り、経営者様の事業承継対策の一つとして、遺言書作成を早期に検討することは非常に重要です。
また、昨年の国会において、民法中の相続に関する規定等を改正する法律案が可決され、成立しました。
これにより、遺言制度にも大きな変化が生じるようになり、遺言書を作成する敷居が下がることになりました。
そこで今回は、遺言書の作成に関する法律の改正ポイントについて、解説します。
1 自筆証書遺言の制度が変わります
現在の法律上、遺言の作成方法は、原則として下記の3つとなっています(民法967条本文)。
①自筆証書遺言
遺言者が、遺言の内容の全文を手書きで作成します(※他にも要件あります)。
②公正証書遺言
遺言者が、証人二人と公証人の前で、遺言の内容を話し、公証人が文章にまとめます(※他にも要件あります。)。
③秘密証書遺言
遺言者が遺言書を手書きで作成し、公証人が封印して保管します。(※他にも要件あります。)
秘密証書遺言は、実務上、使われることは少ないです。
上記3つの方法のうち、今回制度が変わるのは、①自筆証書遺言です。
2 改正点は2つあります
今回の民法改正により、遺言制度の改正点はいくつかありますが、自筆証書遺言の制度の改正で大きく変わった重要なポイントは、2つです。
①遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成できる
→2019年1月13日から、遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成できるようになりました。これまでの自筆証書遺言では、添付する財産目録も含めて全文を遺言者が自筆しなければなりませんでした。
そのため、遺産不動産の地番などを書き写す際に間違えたり、全文を自筆で書くため作業量が多かったりと、遺言書の作成に少なからず負担がありました。
自筆証書遺言には、このような難点があったところ、今回の改正では遺産の財産目録については、自筆で書かなくても良くなりました。
例えば、ワードで作成した目録や、不動産登記簿や通帳のコピーなど、自らの手書きによらない書面を目録として添付することができるようになりました。
※なお、遺言書本文については、手書きで作成する必要がありますので注意が必要です。
※また、他にも要件はありますので、作成される際には、専門家へ相談に行っていただくことをおすすめします。
②作成した遺言書を法務局で保管してもらえる
自筆証書遺言は、保管方法の定めがありませんので、遺言者がなくなっても遺言書が見つからなかったり、複数の遺言書が出てきたりするなどの問題がありました。
それが、2020年7月10日からは、法務局が自筆証書遺言を保管する制度ができます。
法務局は更に、以下の様な作業もしてくれるようになります。
- 遺言書が省令に定める様式にあっているか、確認してくれる
- 原本を保管するとともに、画像情報を法務局同士で共有してくれる
- 遺言書の内容や、遺言書を預かっている証明書などを提供してくれる
- 相続人のうちの誰かが遺言の内容を確認すると、他の相続人に知らせて、遺言書の存在を知らせてくれる
このように、これまでの自宅で保管するよりも、確実に遺言書を残すことができるようになります。
3 改正の開始時期について
2019年1月13日からは、財産目録に、パソコンやコピーが使えるようになります。
2020年7月10日からは、法務局による遺言書の補完制度が開始されます。
従前よりも、遺言書作成の敷居が下がってきました。事業承継の対策には時間がかかることもございますので、喫緊の課題ではなくとも、ご関心がございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。