こんにちは!! 弁護士の三井です。

弊所は様々な労働事件を取り扱っており、最近は労災事件などのご依頼も増えているのですが、やはり「退職時のトラブル」と「残業代請求」の2つの問題に関するご依頼が割合的に多いです。

今回はこの労働二大トラブルともいうべき問題について、ご注意頂きたい最近の傾向をお話しします。

1. 退職トラブルについて

以前は、会社が思い切って従業員を解雇し、その有効性を後から従業員に争われるトラブルが多かったのですが、安易に解雇することのリスクが周知されたためか、現在はそのようなトラブルも減少傾向にあります。最近増えてきていると思うのは以下のようなケースです。

  • (1)退職勧奨が絡むケース
  • (2)従業員から退職時の書類や対応の不備をつかれてトラブルになるケース

(1)退職勧奨が絡むケース

「退職勧奨」とは、従業員の退職を促す説得行為をいいます。あくまでもそれに応じて退職するかどうかは従業員側の判断ですので、解雇とは異なります。最近、私はこの退職勧奨に関する会社側のご相談を受けることが多く、そのお手伝い(具体的には、①退職勧奨の手順や注意事項の説明、②従業員の説得のための法的根拠の調査や③妥当な解決水準の検討、④退職時の手続のチェックなど)を行っております。

退職勧奨は、法的な注意事項も多いので適当にはできませんし、また当事者が妥当な解決水準を理解していないといつまで経っても解決できずにこじれてしまうことがあります。

もっとも、この点を弁護士や社労士などの専門家がサポートすることにより、ある程度スムーズに解決できるケースが多い印象です。退職勧奨での早期かつ円満な退職は、会社のみならず従業員側にとっても望ましい結果になることが多いです。

(2)退職時の不備をつかれるケース

私が経験したケースでは、合意での退職に従業員が納得していたにもかかわらず会社が従業員に書かせた書類に「解雇」と取られるような記載や不備があり、解雇無効を従業員に主張されたケース退職時のやりとりを口頭のみであいまいにしてしまい、解雇のつもりがないのに後から解雇だと主張されて労働審判になってしまったケースなどがあります。

最近は、正確性はともかく、ある程度の法律知識はインターネットで簡単に手に入りますので、退職時のやりとりに不備があると従業員もそこに気づくのかもしれません。私は従業員側からのご相談を受けることもありますが、最近はご相談に来る前にやりとりの録音や証拠集めを済ませたご相談者も増えており、会社側からすると注意が必要といえます。  上記2つの事案は、いずれもトラブル発生後や労働審判申立後に私が関与したものですが、他のケースでもよくあるとおり、早期の解決のため、会社が多少の解決金を支払うことを余儀なくされました。もちろん、対応のための時間的・金銭的コストもかかっています。

これらのケースでも、具体的な退職のやりとりの前に各種専門家が関与していれば、比較的少額の費用で、効率よく会社の上記コストを軽減できた可能性が十分あります。

2. 残業代トラブル

残業代については、労働条件の改善を求める世の中の流れや、一時期流行した「固定残業代」の有効性に否定的な裁判所の判断が続くなどしているため、会社側にとって非常に厳しい状況が続いています。大々的に広告を出すことで従業員側の残業代請求事件を積極的に受けている弁護士の増加も、それを後押ししている状況です。

残業代事件は、感情なども相まって、問題の社員との勝ち負けに集中しがちです。しかしながら、よりよい解決のためには、①他の従業員からの残業代請求の可能性、②トラブルの長期化や拡大化による本業への影響などを考慮した広い意味での「勝ち負け」を考えることが非常に重要です。

また、最近は「本当にこんなに働いているのか?」と疑問に思うような残業時間を主張する従業員が増えています。私が会社側で過去担当した事件でも、そのようなケースが間々あり、その都度、会社側の主張を裏付ける資料を何とか見つけ出しながら戦っています。そのような資料がなければ、仮に裁判になった場合に従業員側の主張が通りやすくなるでしょう。

従業員の実際の労働時間を正確に会社側が把握し、かつその根拠資料まで準備できるかで勝負が決まると思いますので、日頃から従業員の仕事の仕方について目を光らせておくことが重要です。

3. 最後に

労働トラブルを正しく解決するためには、今まで以上に日頃の備えと早めの専門家への相談が重要な時代になりました。弊所は、千葉県損害保険代理業協会京葉支部会員様及び会員様からのご紹介でのご相談につき、初回無料でお受けしておりますので、心配なときには是非お気軽にご相談ください。

(文責:弁護士 三井伸容)